著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
音楽学力は一生モノ!
武蔵野音楽大学音楽総合学科教授加藤 徹也
2018/7/13 掲載
 今回は加藤徹也先生に、新刊『中学校 新学習指導要領 音楽の授業づくり』について伺いました。

加藤 徹也かとう てつや

東京芸術大学作曲科卒業。放送大学大学院文化科学研究科修了。東京都立高校教員、文部科学省主任教科書調査官を経て現職。公益財団法人音楽鑑賞振興財団及び全日本音楽教育研究会の理事を務める。著書に『先生のための楽典入門』(スタイルノート社)がある。

―ズバリ、今回の学習指導要領の改訂で、中学校音楽科で一番注目していることは何でしょうか。

 中教審の答申を受けて、「第1 目標」と「第2 各学年の目標及び内容」の示し方が大きく変わりました。音楽科における「知識及び技能」と「思考力,判断力,表現力」の関係性を改めて問い直し、整理する必要があります。生徒の視点から授業を再構築することによって、新たな発想に基づく授業が生み出されていくことに期待を寄せています。

―本書は、授業づくりのキーワードを、具体的な指導を紹介しながら解説しているのが特徴ですね。本書の活用の仕方をぜひ教えてください。

 本書では、学習指導要領の解説にとどまらず、実践的な観点に基づく著者の考えを示しています。授業において「音や音楽から実感する」ことを重視している点を参考にしていただいた上で、学校や生徒の実態に対応し、先生方各自の個性や考え方を発揮する創意工夫に満ちた授業づくりにご活用いただければ幸いです。なお、必ずしも冒頭から読み進めていただく必要はありません。

―主体的・対話的で深い学びのある授業をつくるために、領域にかかわらず共通して意識すべきことは何でしょうか。

 その具現化に向けた授業づくりは勿論、常に心がけるべきですが、そのことに過度にとらわれてしまい、学習の本質を見失うことがないよう気をつけたいものです。大切なことは生徒の音楽的な育ち、音楽学力の獲得です。特に音楽科の場合、常に音や音楽に答えがあるわけですから、音楽に耳を傾けて曲想を感受し、表現を創意工夫したり、情景を思い浮かべて音楽を聴き味わうことが、挙げられている学びに近づく確実な一歩だと考えます。

―創作と鑑賞の授業は苦手意識をもたれることが多いですが、ぜひ授業づくりのためのアドバイスをお願いします。

 鑑賞では、書籍などからの楽曲の情報ではなく、音と音楽そのものが何より大切です。教師自身がその音楽を十分に聴き、音や音楽から学習内容を見出すことが大切です。創作では、活動が軌道に乗るまでに時間を要するものですが、向上が感じられた際には創作ならではの充実感を味わうことができます。条件の提示を十分に吟味するとともに、助言の技術を磨いていけるよう、積極的に取り組むことが大切です。

―最後に全国の音楽の先生方へ向け、ぜひメッセージをお願いいたします。

 音楽は経験による学びです。しかも人の感情に沁み入る音楽が学びの対象です。努力して覚えても忘れることの多い一般の学習に比して、感情に残る音楽学力は人の心に生涯息づく可能性があります。音楽を通じたコミュニケーションを深めつつ感動の共有が可能な音楽科の特性を生かした授業実践を広く発信して、教科としての存在感を明確にしていく大切なときだと考えます。

(構成:木村)
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