著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
わかりやすく教え、自信をもたせましょう!
山のふもとの創作館「ひだまり」松村 進
2016/4/27 掲載
 今回は、著者を代表して松村 進先生に、新刊『目指せ!図工の達人 基礎・基本をおさえた絵の指導 短時間指導編』について伺いました。

松村 進まつむら すすむ

神戸大学教育学部卒。小学校教諭として37年間勤務。その内、姫路市教育委員会指導主事(6年間)を含め33年間「人権教育」に携わる。2002年、姫路市立小学校長を最後に退職し、妻と、絵画工作陶芸教室「山のふもとの創作館『ひだまり』」を始める。
『目指せ!図工の達人 基礎・基本をおさえた絵の指導のコツ』『図工科ニューヒット教材集1 絵画・版画編』『図工科ニューヒット教材集2 平面造形編』『図工科ニューヒット教材集3 立体造形・工作編』『図工科ニューヒット教材集4 おもちゃ・飾り編』(以上、明治図書)など、著書多数。

―今回の書籍は、大好評をいただいた『目指せ!図工の達人 基礎・基本をおさえた絵の指導のコツ』の続編、ベストセラー『基礎・基本をおさえた絵の指導』シリーズの第3弾です。前著をテキストとして使っていただいているファンの先生方も多くいらっしゃる人気シリーズですが、今回の続編「短時間指導編」の特長について教えてください。

 学校現場はとても忙しい。そのうえ、子どもは長時間になると飽きてしまうので、できるだけ短時間で魅力的な絵を描くための方法を、経験をもとに記述するよう努力しました。
 例えば「鬼の絵」は、節分の前後に、絵本・お面・地域行事の写真などを見せて、墨汁で画面からはみ出すほど大きく描くと、迫力ある個性的な絵が短時間で仕上がります。

―絵を描く際、「人物」を描くことを苦手とする子どもは少なからずいるようです。特に手を描くのが難しいともいわれます。本書でも詳しく紹介されていますが、上達の秘訣は何でしょうか?

 簡単な部分から複雑なものへと、段階を追ってよく観て描く練習が大事かと思います。「手」は、爪→指→手のひら→腕の順に、指の長さや関節、しわの形などを観察して描きます。
 「顔」は、鼻の穴や開けた口ののどちんこなど、顔の中心から周りへと広げて描くと、意外性があり、また興味を持って、自然と大きくのびのびとした絵になります。

―風景画を描く際、下絵を描くだけでも大変ですが、彩色にはもっと時間がかかります。先生は本書の中で、パターン化した技法を覚えることで苦手感を薄めることを勧められていますが、いくつか例をご紹介ください。

 風景画は、描きたい所に行って自分の眼で下絵を描き彩色するものです。子どもは概念的に、空は空色、木の幹は茶色、葉っぱは緑などと彩色してしまいます。そのため、実物をよく観させることが大切です。また、古い建物(寺社)には緑を加えると古びた感じがでます。樹木の彩色は難しいので、明るい色から暗い色へと点々塗りする手法を指導します。

―「立体感」は、小学校の指導では高学年にならないとなかなか難しいといわれますが、本書では立体感あふれる絵が数多く紹介されています。教え方のポイントがあれば教えてください。

 立体感をだすには、少なくとも2通りの方法があります。
@ 遠近法でデッサンする……手前にあるものは大きく描き、遠くになるほど小さく描きます。
A 彩色の時、基盤になる色(例:葉なら緑+黄緑)、次に光が当たる部分に白や黄色を加えた色、そして影の部分に暗い色を塗り、ぼかしをかけます。

―本書では彫刻刀などの使い方も含め、版画指導についても紹介されています。版画は根気のいる作業で、子どもたちのやる気も重要になりますが、導入としておすすめの入り方があれば教えてください。

 最も大切なことは、けがをしないこと。刀の持ち方と使い方を指導します。また、刀を持つ反対の手を刀の前に出さないことです。
 小学校では、5本の刀のすべてが使えるように指導するのが基礎・基本であると考えます。やる気を出させるには「あなたの絵は彫り上がるとすばらしい作品になりますよ」と暗示したり、彫りの途中でほめたりします。

―最後に、読者の先生方へメッセージをお願いいたします。

 指導者は、子どもがどこで困り、つまずくかを事前に知っておき、そのための手立てをその都度指導することです。また、短時間で指導するためにも、指導者が前もってやってみることです。そうしたことを知るために、本書が少しでもみなさんのお役に立てれば幸いです。
 きめ細やかな指導を、子どもの個々の性格にあわせて指導したいものです。

(構成:西浦)
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