- はじめに
- T 絵画編
- /松村 進・松村 陽子
- よく見てかこう
- 1 線でかく(素描) 3〜6年
- ◆コラム人間がかけたら楽しいね
- 1 手をかく(一本線描法)
- 2 足をかく
- 3 顔をかく
- 4 全身像をかく(画面からはみだすように)
- 5 「スケッチノート」の活用(中・高学年向き)
- 2 生命あるものをかこう 全学年
- ◆コラム花のもつ魅力
- 1 画面構成の留意点
- 2 背景に,どんなものを入れるか
- 3 花のかき方(椿の花の絵を指導した時の記録)
- 3 パス・絵の具・筆の使い方 全学年
- 1 パスの使い方
- ◆コラム絵をかくことより大切なこと
- 2 水彩絵の具の使い方
- いろいろな絵をかこう
- 4 いろいろな絵をかこう 1〜4年
- 1 虫をかこう(虫となかよしの世界を) 1〜4年
- 2 魚をかこう(魚となかよしの世界を) 全学年
- 3 鯉のぼりにのって大空へ(ダイナミックにかくには) 1〜4年
- 4 いろんな鬼がいるよ(いろんな鬼をかこう) 1〜4年
- 5 しゃぼん玉でかこう(楽しい技法で) 1〜4年
- 6 よく観てかこう(自分の手をよく観察するために) 1〜4年
- 7 変身!アイマスク(目,まゆの観察から) 1〜4年
- 8 かき氷とみつ豆(おいしそう!食べたいなー!) 1〜4年
- 9 虹のたけのこ(ぐんぐんのびるたけのこを) 1〜5年
- 10 はさみを使って切り貼り絵 3〜4年
- 11 文字絵をかこう(自分の名前をかっこよく変身させよう) 3〜5年
- 12 デザイン画をかこう 4〜6年
- 13 スクラッチ技法でかこう(ゴシゴシ塗って,かりかり削って,楽しいな!) 全学年
- 14 新,モチモチの木(「光る木」想像力をいっぱいに) 全学年
- 15 芋ほりをしたよ 全学年
- 16 貼り絵いろいろ(集中,根気,喜び) 全学年
- 17 絵手紙をかこう(牛乳パックを利用して) 全学年
- 18 大凧をあげたよ(かっこいい凧をかきたいな) 全学年
- 19 ゴーヤをかこう(誰でも簡単に迫力ある絵がかける) 4〜6年
- 20 えっ!こんなものも絵になるの? 全学年
- 21 虫の目になってかこう 全学年
- 22 メルヘンの世界をかこう 4〜6年
- 23 建物をかこう(遠近法を使って) 5〜6年
- U 版画・切り絵編
- /松村 進・松村 陽子
- 紙版画
- 1 紙版画をしよう 1〜3年
- 1 いろいろな虫の世界 1〜2年
- 2 楽しい海の世界を紙版画で表そう 1〜3年
- 3 ニワトリと遊ぶ 1〜3年
- 一版多色刷り版画
- 2 一版多色刷り版画をしよう 3〜5年
- 1 生き物と遊ぶ絵を版画にしよう 3〜5年
- 2 動きのある自分や人の版画 3〜5年
- 3 読書感想画を版画に 3〜5年
- 木版画
- 3 木版画をしよう 4〜6年
- 1 何かをしている自分 4〜6年
- 2 麦わら帽子をかぶって遊ぶ自分 4〜6年
- 3 身近な生き物を木版画にしよう 4〜6年
- 4 地域の文化財を木版画にしよう 5〜6年
- 切り絵
- 4 切り絵をしよう 4〜6年
- 1 景色を切り絵にしよう 4〜6年
- 2 生き物を切り絵にしよう 4〜6年
- 3 植物を切り絵にしよう 4〜6年
- 部分ステンシル
- 5 部分ステンシルをしよう 2〜5年
- ◆コラムステンシル(stencil)とは
- 1 部分ステンシルで花をかこう
- ステンシル
- 6 ステンシルをしよう 6年
- 1 生き物をステンシルにしよう 6年
- 2 植物をステンシルにしよう 6年
- 3 地元の文化財をステンシルにしよう 6年
- 4 仏像をステンシルにしよう 6年
- V 基礎・基本と絵の指導のコツ
- /東山 明
- 1 基礎・基本とは,自由な表現とは
- 2 子どもの感性を育て,学級集団を高める
- 3 絵の指導の手だてとポイント
- 4 美術教育の今日的課題
はじめに
2002年に,2人とも永年の教職生活に別れを告げ自宅に落ち着きましたが,子ども達のにぎやかにはしゃぐ声や無邪気な顔が忘れられず,2人の共通の趣味である創作活動(絵画・工作・陶芸等)を生かして,小さな絵画教室を始めました。土,日曜日の2日間だけですが,我が家に子ども達が戻ってきました。
教室名は,歴史的にも由緒ある広峰山(兵庫県姫路市)の麓にあるので,「山のふもとの創作館」とし,お日様のように心が温まる場であるようにと『ひだまり』と名づけました。
また,地域に住まわれている版画家の岩田健三郎先生ご夫妻との交流の中で,ご夫妻の「川のほとりの美術館」の館内に「ひだまりコーナー」を設置していただき,この11年間,毎月子ども達の絵を入れ替えて展示させていただいております。訪れた人達の感想をご夫妻を通して聞くことができるのもうれしい限りです。
「絵は苦手でね……」
このような言葉を,よく大人の方から聞くことがあります。おそらく,子どもの頃に,絵をかいてほめられた経験が少なかったのではないかと思います。
私の大学時代のことです。美術の授業で,K教授が,私達学生を連れて山の中腹まで登り,「ここから見下ろす景色をデッサンしなさい」と言われました。どこからどうかいてよいのか見当がつかず困っていた私の様子を見て,教授は,「手前の大きな木からかいてみなさい」と,助言してくれました。それで,私なりに一生懸命かき上げました。ただ,自分ではうまくかけたとはとても思えませんでした。
1週間後,教授の授業の時に絵が返されました。ふと裏を見ると,私のかいた写生画の木の幹と枝葉の1部分が朱筆でかかれ,そばに「君のこの部分のかき方がよい」と書かれていました。以来,私は下手の横好きながらも絵をかくことを続けています。K教授は風景画の大家と言われている人だと後で知りました。50年も昔のことです。教職についてから今日まで指導の心構えとしております。子ども達には「苦手でね……」ではなく,「絵をかくこと?好きですよ」と言える大人になってもらいたいと願っています。
指導の喜び……図工教育は『人間教育』
私達は,元教師であって,芸術家ではありません。だから,画家の卵を育てようとしているのでもなく,展覧会で優秀な賞を取らせることを目的としてもいません。基礎・基本を教えることを通して,子ども達が自信と喜びをもてるようになることを願っています。
いろいろな子ども達がいます……。5分間も集中のできない子,そうした子でも,その子の絵でよいところをほめて,「次は,ここをこうするとよいね」と具体的にアドバイスを積み重ねていくと,しだいに集中力が持続するようになり,高学年になる頃には,2時間休みなしに取り組むようになっています。その成長する姿を見るのも私達の喜びです。
「ひだまり」を始めて11年。
この度,東山明先生から,「『ひだまり』の実践をまとめてみませんか」とのお話があり,拙い実践ではありますが,陽子が先般出版した『基礎・基本をおさえた絵の指導』(明治図書・2004)の第2弾として2人でまとめてみました。
先般の『基礎・基本をおさえた絵の指導』は,学校現場の実践もたくさん記述していますが,今回は,「ひだまり」教室の中の実践が主でありますので,かくものにちがいがあり,とくに花の絵が多くなっているかと思います。しかし,指導の基本や手だては同じです。花の絵のかき方は,他のどんな絵にも共通するものです。また,学校では,あまり扱われていないような教材ですが,学校でも活用していただける教材もたくさん取り入れています。学年に応じて授業の中で生かしてもらえれば幸いです。
なお,「ひだまり」では,他に紙工作,陶芸,手芸(革,毛糸・ひも類を使って)……等,いろいろなことをしていますが,すべてを記述するのは大変なので,今回も絵画・版画・切り絵にしぼってまとめています。
最後に,本書の出版にあたり,企画・協力並びに多くの有益な指導,助言をいただきました東山明先生と,編集,出版にご協力いただきました及川誠様はじめ明治図書出版の方々に厚く御礼申し上げます。
2014年3月 山のふもとの創作館「ひだまり」 /松村 陽子・松村 進
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