著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
2つの「しかけ」×問題解決的学習による算数のアクティブ・ラーニング
愛知教育大学名誉教授志水 廣
2016/4/22 掲載
 今回は志水 廣先生に、新刊『2つの「しかけ」でうまくいく!算数授業のアクティブ・ラーニング』について伺いました。

志水 廣しみず ひろし

1952年、神戸市生まれ、大阪教育大学卒業。神戸市の公立小学校に勤務後、兵庫教育大学大学院修了(数学教育専攻)。筑波大学附属小学校教諭、愛知教育大学数学教育講座教授、同大学大学院教育実践研究科教授。2015年3月定年退職。同年4月より同大学院再雇用。同大学院特別教授。愛知教育大学名誉教授。各地の小学校で示範授業や指導講演をして活動中。授業力アップわくわくクラブ代表、志水塾代表。

―本書のタイトルにもある2つの「しかけ」とは一体どのようなものでしょうか?

 授業の中で基礎基本の理解のために教師がしかけるのが第1番目の「しかけ1」であり、授業の後半で本時の学習をさらに活用・探究させるのが第2番目の「しかけ2」です。注目してほしいのは「しかけ2」です。授業が予定調和で終わりそうなとき、どの子にも数理の目を開かせるような手立てが「しかけ2」です。2つの「しかけ」を教師が持つことにより、子どもは45分の最後まで問いを持続させて、学ぶことができます。「しかけ2」で開かれる数理の目が次時の算数の授業へと意欲を向上させます。
 別の表現で言えば、遅れがちな子どもも進んだ子どもも同じ授業の中で満足するような授業をつくることを目指しています。
 本書には、2つの「しかけ」の理論と実践例が豊富に掲載されています。単なる授業展開の予想ではなくて、実際に実践されて子どもの反応が良かった事例を集めています。 

―また2つの「しかけ」とともに「問題解決的な学習」も取り入れられていますが、「問題解決的な学習」を取り入れているのはどうしてですか?

 アクティブ・ラーニングは、子どもの学びの主体性、継続性、協働性が不可欠です。
 学び続けるためには、算数科で言えば教師からの「しかけ」によって、子どもが数理の面白さを理解し、活用し探究することです。そのためには、教師からの説明的な授業では子どもの主体性は生まれてきません。子ども自ら問いを発生し、解決に向けて行動する学習が求められます。それが問題解決的な学習なのです。
 第2章の実践例を見ていただければ子どもの発言のよさが分かります。協働と言っても、単に子どもだけで議論させても低レベルの話し合いだけに終わります。本書で紹介している2つの「しかけ」アクティブ・ラーニングの基盤となる算数の学び方の学力を保証するものです。

―本書の2章では、各学年の事例を授業の流れに沿った形で、先生の発問や子どもの反応、写真とともにビジュアルに紹介されています。この部分はどのように活用できるでしょうか?

 問題解決型の授業展開で1時間の授業モデルを紹介し、その中に新たに「しかけ1」「しかけ2」を明示しています。1時間の授業内容はとても濃いものですが、あえて細かい部分を削除して、授業の骨格に当たる部分と「しかけ」で明日にすぐに役立つ授業をイメージできます。

―本書には実践例で紹介された音声計算(声出し計算)ワークが収録されています。これはどのようなものなのでしょうか。

 音声計算とは、「計算カードをランダムに並べた一覧表を見て1分間、計算の答えを音声言語で唱えていくこと」です。計算を目で見て、頭の中で計算して、声に出して、耳で聞き取ると言った方法です。計算の自動化の能力を付けることをねらいとしています。
 緑丘小学校では多くの計算カードを開発していますが、本書にはその中の基礎・基本のカードを掲載しています。

―最後に全国で算数を教える先生方に、メッセージをお願いします!

 緑丘小学校の研究は、学力の二極化問題に正面から取り組んでできたものです。
 その答えが、問題解決的な授業、アクティブ・ラーニング、2つの「しかけ」の3要素で自ら学び、みんなと学ぶ協働性を育むものです。
 志水自身はこれまでに6,000人の授業を参観指導し、多くの学校と共同研究してきましたが、本書はこの時期ぜひご紹介したい!と思った研究です。この本で皆様がアクティブラーニングすることを願っております。

(構成:木山)
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