著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
教師が仕掛けるゆさぶりで「思考力」が身につく!
横浜市小学校国語教育研究会課題研究部部長岸田 薫
2012/3/1 掲載
 今回は横浜市小学校国語教育研究会を代表して、岸田薫先生に、新刊『小学校国語 6年間でみるみる「思考力」がつく!「読むこと」の授業プラン&ワークシート』について伺いました。

横浜市小学校国語教育研究会よこはまししょうがっこうこくごきょういくけんきゅうかい

会長 伊藤博夫。会員数 約500名。昭和22年発足。「文集よこはま」は平成23年度に第58号を発行した。課題研究部、学年研究部、研修部、情報活用部、作文・文集研修部、書写部、18区国語研究会が互いに連携し、横浜の国語教育を主導している。

―まず、「思考力」に焦点を当てたきっかけと、その育成のために「読むこと」の領域に絞った経緯を教えて頂けますか。

 横浜市小学校国語教育研究会課題研究部(以下 課題研)では、10年以上に渡り、言語活動を通した単元づくりを目指して研究を続けてきました。言語活動を充実させることは、国語の力を付けるだけでなく、子どもたちが知識や技能を活用する中で、思考力・判断力・表現力等を育むことにもなります。そこで、課題研では、目の前の子どもたちの言語能力の実態をとらえ、生涯に渡って実生活で必要とされる力として、「思考力」にターゲットを当てることにしました。また、国語の能力や思考力の系統性が見えやすいということ、そして、新しい教科書に変わったことで、学校現場が、特に新教材の扱いに頭を悩ませている状況を踏まえ、「読むこと」の領域に焦点を当てることにしました。

―本書に収録した授業プランは、思考力を育成するために3段構成になっているそうですね。この三つを簡単に教えて頂けますか。

 最初の段階は、身に付けたい国語の力と、その力を付けるための言語活動について書かれたページで、1ページ目がそれに当たります。また、単元で特に重点化した思考力も明示しています。
 次の段階は、単元の指導計画です。思考力を育成しようと思ったら、まずは教師が「どこで」思考させようか、ということを意識しなくてはいけません。思考する場面を教師が意図的に設定し、子どももまた、自分が今、どのような思考操作をしているのか自覚できるように、「思考力のはたらきどころ」を指導計画上に位置づけました。
 最後の段階は、授業ですぐに使えるワークシートです。子どもに思考させるための具体的な手立てが盛り込まれたワークシートの開発に力を注ぎました。授業におけるポイントやワークシートの効果的な使い方も掲載しています。

―各授業プランで紹介している指導計画には、「思考力のはたらきどころ」が明記されているのが特徴ですね。学習活動の中で、子どもたちの思考力をはたらかせるために、常に意識しておくべき教師の視点などありましたら、ぜひ教えてください。

 思考力は多岐に渡るので、意識し始めると、あれもこれもと考えがちです。しかし、その単元でこそ身に付く思考力というのは限られていますし、教材の特性にも左右されます。それを見極め、重点的に扱っていくことが大切です。また、教師が思考語彙(思考するための言葉。特に、思考操作を表す言葉)を使うだけでなく、発達段階に応じて子どもにも思考語彙を意識させ、今どんな思考操作をしているのかを子ども自身が意識できるようにすることも大切です。

―本書ではワークシートが豊富に収録されています。思考力が育成できるワークシートづくりのコツがありましたら、ぜひ教えてください。

 思考力は、情報の取り出しをした後に働きます。取り出した後の思考過程が分かるような誌面づくりが大切です。また、何度もゆさぶりをかけられることで思考力はついていきます。「ゆさぶり」というのは、違う面から見せたり考えさせたりすることですが、そうしたゆさぶりを、ワークシート自体に載せてしまうというのもよい方法です。さらに、思考したことが自分の言葉で表現されると、思考の軌跡が残っていきます。ワークシートはノートとは違います。表にまとめるとか、感想を○○字で書くとか、書き抜いてわけを書くとか、そういったノートでもできることを書かせるのではなく、様々な思考が働くワークシートにしたいですね。

―最後に、全国の先生方へ向け、メッセージをお願いします。

 課題研では、2年がかりで「思考力」に挑戦してきました。目に見えない「思考力」をいかに可視化するか…。「難しい!」を連呼する2年間でしたが、最終的に分かったことは、「豊かな言語活動を通しながら、教師がいかに「思考」を意識するかが大切」という簡単なことだったと思います。三つの思考の変化の形、@深化、A拡散、B高次化、を目指して作った1冊です。経験年数の浅い先生方にも難しくない本を目指しました。ぜひ、一度ページを開いてみていただければと思います。

(構成:木村)
コメントの受付は終了しました。