- 著者インタビュー
- 特別支援教育
共通するコンセプトとしては、自閉症スペクトラム障害のあるお子さんだけが努力するのではなく、周りの人、特に保護者と教員がともに理解し合い、協力して支援をしていこう!というものです。前書の前書きに、「支援のためにまず必要なことは、周囲の大人たちの対人関係やコミュニケーションやこだわりの問題の克服ではないか」とあります。それは、自閉症スペクトラムの主となる障害特性ですが、実は私たちが自身を振り返らなければならないのではないか、というメッセージです。
応用行動分析学とは、行動分析学で得られた知見を応用したヒューマンサービスの形で、特にこれまでの研究から、自閉症や知的障害のある方への有効なアプローチであることが実証されてきました。決して、何か一つの技法や療法を意味しているわけではありません。
鍵は、行動は個人と環境との相互作用として捉えるところにあります。「障害」といった状態もある意味では、個人と環境との相互作用の結果とも捉えることもできます。まず、環境側ができる最大限の工夫・改善を優先します。そのような中で、当事者にもがんばってもらいます。具体的な内容については、前書と本書を読んでいただければ幸いです。
いわゆる「問題となる行動」を共通理解し、共通対応していくための便利なシートです。共編著の井上雅彦先生が作成したものです。まず、「事前(手がかり・きっかけ)」−「問題となる行動」−「事後(結果や対応)」という枠組みから現状理解をします。次に、その現状に対して、「@事前にできる対応の工夫」「A問題となる行動に代わりうる望ましい行動」「B望ましい行動ができた時のほめ方・楽しみな活動」「Cそのような工夫をしても、問題となる行動が起きてしまった時の対応」を整理していきます。ケース検討会で参加者が意見を出し合いながら案を整理していくときに便利です。
本書の一部でも、および前書の支援事例の紹介「こんな時どうする?気になる行動への支援」のところでは、ストラテジーシートを活用した多くの例を紹介していますので、ご参照ください。
私は、自閉症スペクトラム障害のある子どもとその保護者に対する具体的な支援方法を全般的に研究しています。そこから派生して、地域支援システムのあり方も考えています。実際に関わることからはじまる臨床研究が中心ですから、いろいろ協力してもらっていますし、これまで多くのことを学ばせてもらいました。そういう意味で、自閉症には「恩」を感じているんだと思います。だから、なんとか恩返しをしたいと思い続けています。
自閉症スペクトラム障害は、周囲の人が理解するのが難しいところがあります。さらに、支援しようとした場合にも難しいところがあります。特に、今回、テーマにした「思春期・青年期」、さらには成人期を見据えていくと、問題は非常に困難さを増すこともあるだろうと思います。一人で抱え込まずに、周りの人が理解し合い、支援を共通化していきながら支え合うことが大切だと思います。本書がその一助になればと思っています。
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