著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
入門期の指導に最適なリスニングクイズで英語耳を育てよう!
四條畷学園小学校副校長橋 豊
2012/1/18 掲載

橋 豊たかはし ゆたか

四條畷学園小学校副校長。
1960年大阪生まれ。
大阪府立市岡高校卒業。大阪教育大学教育学部小学校理学科卒業後、私立四條畷学園小学校勤務。1992年私学研修福祉社会研究員として渡英、1年間にわたり現地公立小学校で勤務などを経て現職。ブログ「Skyblue's Den」公開中。

―小学校の外国語活動が今年度からスタートしました。本書と本シリーズ(小学校楽々教材シリーズ)のねらいについて教えてください。

 ふたつあります。ひとつは、子どもたちに「英語が分かり使える」体験をしてもらうこと。もうひとつは、英語を教える先生方の肩の荷を軽くすることです。
 
 そもそも、何で英語の授業は小学校の先生方にとって大変なのでしょうか。逆に言えば、どんな条件がそろえば英語の授業が苦にならなくなるのでしょうか。
 
 まず、先生方ご自身が「これはきっと子どものためになるに違いない」と確信できることが第1条件でしょう。これがなくては、先生のやる気は起きないと思います。これと同じくらい大事な2番目の条件が、「きっとこれ、子どもたちから支持されるだろう」という期待感をもてるということ。「子どもが楽しんで、しかもそれは将来の糧になると確信できるもの」を授業にかけたいと思うのは、先生方共通の思いだと思います。
 
 普通の授業ならこのふたつの条件が満たされていれば、「授業をやろう!」という気が起きるはずですが、英語の授業を行うには、これだけじゃ足りません。第3の条件「これなら私にも教えることができるだろう。」という安心感と、第4の条件「この程度の準備なら、そんなに時間はとられないだろう。」という気楽さが必要になってきます。この本は、これら4つの条件を何とかクリアできたのじゃないかな、と私は考えています。

―小学生にはどのように英語を教えればいいのでしょうか?

 英語を理解する、というのは、聞いた言葉全て、あるいは書いてある言葉を全て理解するのではありません。ほとんどの人は、聞き取れた部分、読み取れた言葉をつなぎ合わせ、未知の部分を頭の中で補って理解しています。程度の差こそあれ、この脳内活動が英語の理解の本質である、と考えています。
 
 この本では、小学生の段階でこの英語理解というものの本質を、体にしみこませることをねらって作成したリスニングクイズのワークシートです。各ワークシートを印刷していただき、解説の部分を読んでいただけば、あとはCDのスイッチを押すだけで授業が成り立ちます。

―本書にはさまざまなリスニングクイズが収録されていますが、オススメの内容を教えてください。

 ネイティブが話す英文から、外来語として子どもたちがよく知っている言葉を聞き取るクイズ、ある言葉の意味を説明する英文から、外来語や知っている英単語を聞き取り、それがいったいどんな言葉の説明なのかを当てるゲームなどがあります。いずれも、とびとびに聞き取れた言葉から、英文全体をおおざっぱに類推してみようとする態度を養うことを意図しています。
 
 また、rice(米)lice(シラミ)のように、を言い間違うと意味が大きく違ってしまう言葉が英語にはたくさんあります。そんな言葉を集めて、ネイティブがどちらの単語を発音しているのかを聞き取るクイズもあります。クイズを繰り返すうちに、アルファベット通りに発音するって大切なんだ、と子どもたちが自然と納得できるようになっています。
 
 音節の区切りが、日本語の区切り方と違うのだ、ということに気づくクイズもあります。子どもたちは手のひらに当たる息の数を勘定して答えをさぐり、日本語との音節の区切り方の差異に興味を持っていきます。この気づきは、中学に入った後、アクセントの学習をするときに役立ちます。

―本書は小学校英語を主な対象にしていますが、中学校の入門期で使うことも可能でしょうか?

 ワークシートには、初心者でも無理なく楽しめる「書く」「読む」という活動が織り込まれています。ですから、中学から始まる本格的な英語学習にスムーズに移行していくための橋渡しのためにこの本をお使いいただくことも、効果的だと考えます。

―全国で英語を教える先生方へ一言メッセージをお願いします!

 私は「意図的不完全英語教育」と名付けた教育論を提唱しています。そして、本でも紹介した内容も含めた学習プランを作成して、勤務校で実践しています。本書以外の学習内容は、「発音」「英文作り」というように内容を分類し、ワークシート形式に整理して、今後本シリーズでご紹介させて頂く予定です。
 
 英語はだれでも使える。ただ、どれくらい使えるかはその人が持つ言語の運用能力次第。そんな日本になることを夢見て研究、研鑽を続けています。

(構成:木山)
コメントの一覧
2件あります。
    • 1
    • 京野真樹
    • 2012/1/18 19:06:29
    分かった部分を使って分からなかった部分を類推する思考は、自分が専門分野にしている国語の学習における発想と全く同じことに気付きました。見えていることから見えていない部分を考えることが、人間の知的思考活動の基本ではないでしょうか。その点で、意図的不完全英語学習は、理にかなった実践理論だと思いました。続く2冊も楽しみにしています。
    • 2
    • Mark Wood
    • 2012/1/31 14:52:58
    As we continue to strive for a greater mutual understanding, Mr. Takahashi relays a straightforward approach for students of all levels to succeed in true multi-cultural English language acquisition. This book provides a range of diverse situations that can truly make a difference, preventing sometimes embarrassing and/or humorous mis-communication. My students enjoy the examples and are able to use what they've learned in practical situations.
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