著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
体を動かせば子どもは必ず音楽授業にノッてくる!
国立音楽大学准教授井上 恵理ほか
2012/1/26 掲載
 今回は井上恵理先生と酒井美恵子先生に、新刊『動いてノッて子どもも熱中!リトミックでつくる楽しい音楽授業』について伺いました。

井上 恵理いのうえ えり

東京藝術大学音楽学部楽理科卒業。ジュネーヴ・ジャック=ダルクローズ学院卒業。ダルクローズディプロマ取得。その後、学院にて専門コースのリトミック即興演奏、子どものクラスのリトミック講師、及びジュネーヴ・コンセルヴァトワールで即興演奏の講師をつとめる。国立音楽大学准教授。玉川大学非常勤講師。「リズムの森」総合指導主任。日本ジャック=ダルクローズ協会副会長、日本ダルクローズ音楽教育学会理事、全日本リトミック音楽教育研究会本部講師。身体と音楽との関連性を研究し、その具体的な方法として、ダルクローズ・リトミックをテーマとし、音楽教育、表現活動の分野で指導している。
著作として『“体を楽器”にした音楽表現 リズム&ゲームにどっぷり!リトミック77選』(共著、明治図書、2006)、『アクション&ビートでつくる音楽鑑賞の授業』(共著、明治図書、2007)、『DVD ジャック=ダルクローズのこどもたち』(訳、響、2004)などがある。

酒井 美恵子さかい みえこ

国立音楽大学音楽学部器楽学科ピアノ専攻卒業。東京都の公立中学校の音楽科教諭及び指導主事を経て現在、国立音楽大学准教授。日本音楽教育学会、日本学校音楽教育実践学会などに所属。
論文・著作等として「J-POPを合奏教材とした一事例」(音楽教育実践ジャーナル通巻9号、日本音楽教育学会、2007)、『中学校音楽科新学習指導要領ガイドブック』(共著、教育芸術社、2008)、『中学校新学習指導要領の展開 音楽科』(共著、明治図書、2009)、『初任者研修実務必携』(編著者、第一法規、2009)、『中学音楽が魅力的に変わる!授業プランの新モデル24 第1学年編』『同 新モデル30 第2・3学年編』(何れも編著、明治図書、2010)などがある。

―まずは「リトミック」とは何か、簡単に教えて頂けますか?

 リトミックは、スイスの作曲家エミール・ジャック・ダルクローズ(Émile Jaques-Dalcroze: 1865-1950)の創案した音楽教育法で、次のような特徴があります。

  • 音を聴き、感じ、身体から音楽を理解し、さらに音楽をとおして心身ともに情緒豊かな人間を育てる
  • 身体全体からわき出てくるような喜び、うれしさ、楽しさを奏で、そこから音楽を創る
  • 表現することの素晴らしさを経験し、音楽の感性を高める

 様々な年代の方々に指導をしていますが、まず感想として「楽しい」とおっしゃってくださることが多いです。

―本書では、全ての題材で体を動かす活動が取り入れられていますが、これまでの音楽授業との一番の違いは何でしょうか?

 今までも、特に低学年ではリズムに重点を置いた音楽活動を授業で行っていましたが、本書では、すべての学年、すべての領域・分野で、体を動かす活動を提案しています。平成23年度から全面実施されている小学校音楽の学習指導要領では、〔共通事項〕が新設され、音楽を形づくっている要素を聴き取り感じ取ることを大切にした授業展開が求められています。音楽を形づくっている要素は、体を使った活動を取り入れることで、とても実感しやすくなります。

―付属DVDは、共通教材の範唱や、動きのモデルが沢山収録されているようですね。オススメの活用方法を教えてください。

 歌唱共通教材は、低学年の8曲を網羅しました。歌のお兄さんとお姉さんの美しい歌声と、曲に合った素敵で楽しい動きをぜひ子どもたちに見せて、一緒に歌ったり動いたりしていただけると嬉しく思います。また、授業で生かせる動きのモデルを多数収録してあります。授業の導入での常時活動として、あるいは、たとえば音階を用いた創作の学習に入る前に、音階の映像を見たり一緒に歌ったりするなど、授業の内容とかかわらせて多様にお使いいただけます。

―音楽が苦手な子どもを、うまく授業に引き込むコツなどありましたら、ぜひ教えてください。

 いろいろな説明は抜きにして、まずは実際に体を動かしてみましょう。次の活動は、音楽に苦手意識のある子どももすぐに取り組めます。

  1. 拍の流れにのって動く心地よさを味わう活動
  2. 音色に合わせて動いて、音の美しさを実感する活動
  3. 旋律に合わせて体を動かしながら歌うなどして、まとまりのあるメロディーのよさを楽しむ活動

 これらにより、きっと音楽そのものの魅力をダイレクトに実感することができるはずです。苦手意識のある子どもも「音楽が楽しい」と思えることでしょう。楽しいことは意欲の高まりにつながり、次第に苦手意識が解消されることと思います。付属DVDをぜひご活用ください。

―最後に、音楽授業を受け持つことになった学級担任の先生方へ向け、メッセージをお願いします。

 子どもたちのたくさんの笑顔を思い浮かべながら本書をつくりました。十分活用して、子どもたちに音楽の魅力を実感できる授業を展開してください。なにより、先生方ご自身が生き生きと楽しく授業をなさることが大切なことだと思います。

(構成:木村)
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