著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
教師も子どもも、気軽に作文に取り組める!
東京学芸大学教授大熊 徹
2006/10/13 掲載
 今回は子どもたちの書く力を伸ばす実践を紹介した新刊『書く力・考える力が育つ 朝の10分間ミニ作文』について編著者の大熊先生にお話を伺いました。

大熊 徹おおくま とおる

1948年、千葉県生まれ。現在、東京学芸大学教授、全国大学国語教育学会全国区理事、日本国語教育学会常任理事・編集部長、市川市教育委員。
【著書】 『説明文を活用して「話す力」を育てる総合学習』(1998年)/『「生きる力」を育成する国語科授業の構想と展開1〜3』(1999年 監修)/『国語科と総合的学習の連携』(2006年) ほか多数。

―まずは「朝の10分間ミニ作文」とはどのような実践なのか、ご紹介ください。

 とにかく気軽に楽しみながら書く、書くこと自体を楽しむという書く活動です。具体的には「朝の10分間読書」などと交互に、週に2〜3回ほど、朝学習の時間に短い作文を書く活動です。この活動を継続することによって、子どもたちは書き慣れ、書く習慣が身につき、書くことへの抵抗感が緩和され、結果的に知らず知らずのうちに思考力や認識力なども身についてきます。たとえ週に1回でも、朝学習の時間でなくても、継続的に実践をすれば、必ず効果があらわれる書く活動です。

―読書と違い、作文は書かせておしまいにはできないのではないか、教師の負担が大きくなるのではないかという心配もあると思います。それについてはいかがでしょうか。

 確かに朝の読書が全国に瞬く間に広がった理由の一つは、教師が手を煩わせなくても済む実践であるからでしょう。今回、小学校1年から6年までの6名の先生に4か月間ミニ作文の実践をしていただいたのですが、実践ポイントの一つとして「教師が手を煩わせないで済むための工夫」に取り組んでいただきました。作文を集めたり掲示したりすることも子どもの活動にすることや、日直がお勧めの作文を読み、教師が口頭でコメントする等々、様々な工夫があります。第U章に6名の先生の実践事例を掲載してありますので、是非お読みください。

―「ミニ作文」の指導により子どもたちの書く力はどのように高まったでしょうか。

 先生と子どもの声でお答えしましょう。「スタートした時のA児のミニ作文はわずか30字程度だったが、2か月間書き続けていくうちに100〜200字を書くまでになった」(2年教師)、「継続は力なりという言葉通り、書くことを習慣づけることにより、国語だけではなく他の学習での書くことが豊かになってきた」(5年教師)、「2か月書いた作文は40枚に達しました。夏休みなどの学校が休みの日にも書きたいと思います」(5年児)、「ぼくは朝のミニ作文がすきです。学校に行くときわくわくしながら行きます」(3年児)。

―大熊先生が「ミニ作文」を提案されるにいたった経緯は何ですか。

 PISA調査から、「考える力」や「論理的に文章を書く力」などの育成が、また、教育課程実施状況調査から、記述する力の育成が課題となりました。しかし、だからといって、直ちに論理的な文章を書く力を育成しようとしても、それは無理というものです。そもそも書くことが嫌い、書くことができないという課題は作文教育の本質的な課題なのですから。そこで、気軽に楽しみながら書く活動を継続し、書くことの習慣を身につけることがまず大事なのではないでしようか。急がば回れです。継続して書くことによって思考力、認識力などが徐々に育成されてきます。結果的に「考える力」が育ち論理的な文章にも抵抗を示さなくなるのです。

―最後に、書名に添えられた「書く力・考える力が育つ」にこめられた大熊先生の思いと、作文指導に悩まれている先生方へのメッセージをお願いします。

 「書く力」と「考える力」とは切っても切れない関係にあります。考えなければ、文章を書くことはできません。書くことは考えることです。ですから、子どもたちの「考える力」を育てるには、とにかく書かせることです。そのためには、子どもたちが喜んで、楽しんで書く手立てを講じることが必要になります。「朝の10分間ミニ作文」は、その具体的な実践です。作文指導に悩まれている先生方も、子どもたちと一緒に取り組まれてはいかがでしょうか。休み時間などのわずかな時間にミニ作文を書き、子どもの作文と一緒に教室に掲示しておくのです。子どもたちはきっと喜んで書き続けることでしょう。そして「考える力」を身につけていくことでしょう。

(構成:阿波)

コメントの受付は終了しました。