著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
食に関する自己管理能力を身に付ける指導
日本体育大学教授宮川 八岐
2006/8/4 掲載
 今回は食育の年間指導をサポートする新刊『現代の教育課題に応える3 特別活動で進める食育プラン集』について、編者の宮川先生にお伺いしました。

宮川 八岐みやかわ やき

日本体育大学教授・前文部科学省初等中等教育局視学官
【編著書】
『説明責任時代の学級担任の仕事ガイドブック 全9巻』
『楽しい学級づくりとっておきファックス資料集 全5巻』

―食育については、最近、何かと話題になっておりますが、今、なぜ学校で食育が必要とされるのでしょうか? 社会的な背景を簡単にご紹介ください。

 現代が飽食の時代でありながら、現代人は健康的な生活ができていないとの指摘があります。我が国の学校教育は、人格形成(人間力)を標榜しております。教科学力だけでなく、徳育、社会性の形成など人間としての調和のとれた育成を目指しています。「人間力」の構造は、確かな学力、豊かな心、健やかな体、の3要素からなりますが、健やかな体づくりには、食(栄養)・睡眠・運動の望ましいバランスが必要です。この領域は家庭の教育力が基本になりますが必ずしも十分な状況にありません。これまでにも増して学校教育の充実が求められるようになっています。

―本書では、どのように食育に取り組めばよいのか、たくさんのプランが「特別活動で」などと活動の場面ごとに詳細に紹介されています。どのようなコンセプトで本書のような形になったのでしょう?

 子どもたちの健康的な生き方に関して正しい理解を深めるとともに、食に関する自己管理能力を身に付ける指導を充実する必要があります。それには、学級活動や児童会活動、クラブ活動、学校行事のそれぞれの集団活動の特質を生かした指導の工夫、学校給食の時間の指導と関連的指導の充実が重要になります。それぞれの場面や指導において学級担任、当該指導教師が栄養教諭等との連携した指導に積極的に取り組めるようにとの願いを持って全体を編集しました。

―何を使ってどのように行えばいいのか――は、これから食育に取り組む学校での課題だと思います。教材開発や指導のポイントを教えてください。

 学級活動などの指導で子どもたち一人一人が取り組む実践課題を自己決定できるようにすることが重要です。単に知識理解の指導に終わることのないよう、全国的な統計資料や地域・学校等の実態調査資料の活用、映像資料等視聴覚資料・教材の活用を推進するとともに、専門的関係機関などとの連携を図って実践意欲を喚起する資料活用、指導方法について提案しようと考えました。

―食育の一環として最近は学校で朝食を出す学校もあるようです。
 小社のアンケートで学校での朝食について賛否を尋ねたところ、反対票が8割を超える結果となりました。学校での朝食について先生はどのようにお考えになりますか?

 学校週五日制の導入の基本的な考え方は、学校の役割、家庭や地域社会の役割を見直し、それぞれの役割や機能を生かして子どもたちを育てようとするものでした。にもかかわらず、朝食までも学校でということでは成熟社会の実現などほど遠いものになります。早寝、早起き、家族での楽しい朝食は家庭教育が目指すべき基本テーマでしょう。社会全体で考えるべきです。

―最後に読者の皆さんに、本書をどのように使っていただきたいかも含めて一言お願いします。

 先生方が、1年間の見通しを持ち、6年間の繰り返しと系統的な指導を実践するための各学校の指導計画の改善に生かしていただきたい。また、学校や市町村等の研究会の検討資料としても活用するとともに、保護者会・PTAなどの研修会でも活用していただきたいと思います。

(構成:木山)

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