- はじめに
- 第T章 「朝の10分間ミニ作文」実践ガイド
- (1) 実践にあたっての六つの要諦
- (2) 【要諦1】子どもたちに書くことへの興味・関心・意欲を持たせる工夫をする
- (3) 【要諦2】実践を恒常的に継続させるための工夫をする
- (4) 【要諦3】子どもの負担にならない程度の分量にする
- (5) 【要諦4】毎日でなくとも、週に一〜三回程度でもいいから無理をしない範囲で実践をする
- (6) 【要諦5】題材は原則として自由題がいいが、時には題材を指定して書かせることも実践に変化が生まれ、興味・関心・意欲を喚起する契機となる
- (7) 【要諦6】あまり教師の手を煩わせないで済むための工夫をする
- (8) 実践した子どもと教師の感想あれこれ
- 第U章 「朝の10分間ミニ作文」実践事例
- 一 楽しく自分の思いを表現させるための指導《第一学年》
- (1) ねらい
- (2) 実践の特色
- (3) 初期の指導の方法
- (4) 実践継続への留意点
- (5) 実践
- (6) 成果と課題
- 二 朝の十五分間を効果的に使う“楽しみ書き”の工夫《第二学年》
- (1) ねらい
- (2) 実践の特色
- (3) 初期の指導の方法
- (4) 実践継続への留意点
- (5) 実践
- (6) 成果と課題
- 三 書く力をつける朝の十分ミニ作文《第三学年》
- (1) ねらい
- (2) 実践の特色
- (3) 初期の指導の方法
- (4) 実践継続への留意点
- (5) 実践
- (6) 成果と課題
- 四 五つのステップで書くファンタジー《第四学年》
- (1) ねらい
- (2) 実践の特色
- (3) 初期の指導の方法
- (4) 実践継続への留意点
- (5) 実践
- (6) 成果と課題
- 五 他教科への広がり「考える力」を育てる 分作文《第五学年》
- (1) ねらい
- (2) 実践の特色
- (3) 初期の指導の方法
- (4) 実践継続への留意点
- (5) 実践
- (6) 成果と課題
- 六 「目的に応じて効果的に表現する力」を育てる《第六学年》
- (1) ねらい
- (2) 実践の特色
- (3) 初期の指導の方法
- (4) 実践継続への留意点
- (5) 実践
- (6) 成果と課題
- 第V章 今、なぜ、「朝の10分間ミニ作文」なのか
- 一 生徒の国際学習到達度調査(PISA)2003年の結果を検証する
- (1) 結果公表時の状況
- (2) 『読解力向上プログラム』とPISA型「読解力」
- (3) 熟考した自分の考えを論理的に書くことへの取り組み
- (4) 検証結果から考察する ―書くことの教育の本質的な課題を捉えながらの方向転換を
- 二 平成一五年度小・中学校教育課程実施状況調査の結果を検証する
- (1) 結果公表時の状況
- (2) 小・中学校教育課程実施状況調査概観
- (3) 今回調査と前回調査との同一問題の通過率の比較
- (4) 今回調査と前回調査との記述式の同一問題の通過率の比較
- (5) 前回調査と前々回調査との記述式の同一問題の通過率の比較
- (6) 検証結果から考察するー深刻な記述式問題の通過率の低下
- 三 書くことの教育における「不易」な課題
- (1) 書くことの教育の本質的な課題
- (2) 書くことの力の三層構造
- (3) まずは、書き慣れること、書くことを習慣化すること
- (4) 気軽に楽しみながら書く「朝の10分間ミニ作文」を
はじめに
「朝の10分間ミニ作文」。いったい何だろうと思われた方も多いのではないだろうか。
初出は二〇〇五年五月二・九日の『日本教育新聞』第四面に掲載された拙稿「『朝の10分間ミニ作文』で書く習慣を」である。同年四月二二日に公表された「平成一五年度小・中学校教育課程実施状況調査」の結果から子どもたちの書く力の低下傾向を課題視し、書くことの日常化・習慣化を目途として提言したものである。
その提言に基づき、小学校第一学年担任から第六学年担任までの六名の先生方に同年九月から一二月までの四ヶ月間にわたり、それぞれの発達段階やクラスの子どもたちの実態に応じた「朝の10分間ミニ作文」を実践していただいた。本書はその実践事例を加えて一書にまとめたものである。
第T章は、「朝の10分間ミニ作文」を実践するための手引き、「実践ガイド」である。本書を読まれた先生方がすぐにでも実践に取りかかることができるようにと可能な限り具体的に記述するように配慮した。
第U章は、実践事例編。二〇〇五年九月から一二月までの四ヶ月間にわたる「朝の10分間ミニ作文」の実践事例である。学年順に小学校第一学年から第六学年までの六事例を紹介している。
第一学年は、平仮名の学習を終え片仮名や漢字の学習が始まる時期の子どもたちに、さまざまな書く場面を設定して書くことの楽しさを実感させ、友達のよい作品により多く触れさせた実践事例である。第二学年の実践は、「サイコロ作文」「五七五新俳句」「百マス作文」等々子どもたちを作文好きにするためのさまざまなアィディアを駆使した事例である。第三学年の事例は、「上手な文章はねらわない。分かる文章をねらう。そして、なによりも書く習慣をつけていく」との願いにより、「ぼくは朝のミニ作文がすきです。学校に行くときわくわくしながら行きます」という子どもの感想を引き出した実践である。第四学年は、帰りの会に「今日の出来事」を百字程度に書くことによって書く力をつけ、ファンタジーの創作作文に取り組んだ事例である。第五学年の実践事例は、書くことの日常化、書くことの自覚化、書くことの共有化をねらった実践であり、他教科への広がりも視野に入れた「考える力」を育てる事例である。第六学年は、五年生のときから継続してミニ作文活動に取り組み、前年度の積み重ねの上に進められた実践である。実践の結果子どもたちは、下書きやメモを書かなくても紙面全体を見渡しておおまかな構成を考える力が育ち、百五十字から四百字までほぼ字数通りに書き上げることができるまでになった事例である。
そして第V章が、いわば理論編である。「朝の10分間ミニ作文」を提言する背景について述べている。とりわけ、二〇〇四年一二月七日に公表されたOECDの「生徒の国際学習到達度調査(PISA)2003年」の結果および「平成一五年度小・中学校教育課程実施状況調査」の結果から書くことの力の低下傾向を捉え、併せて書くこと嫌い、書くことができないという作文教育における不易な本質的課題についても論及している。
なお、第U章の事例を実践し執筆して下さった六名の先生方は、東京都および千葉県の公立小学校において国語科教育の実践理論を研究され、いずれも現在第一線で活躍されている方々ばかりである。
本書は、明治図書編集部の阿波理恵子氏に多大なご尽力を賜りました。ここに記し、感謝申し上げます。
平成一八年三月 /大熊 徹
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- 明治図書