インクルーシブ教育時代!支援のあるクラスづくり
ちょっと気になるあの子に着目すれば、どの子も願う「あるといいな」の配慮がわかる。居心地のよい、みんなのクラスづくりを始めましょう♪
支援のあるクラスづくり(9)
伝えよう!安心の4月を始めるための引き継ぎ
帝京大学大学院教職研究科客員准教授吉本 裕子
2014/2/20 掲載
  • 支援のあるクラスづくり
  • 特別支援教育

 年度末が近くなった今回、ゆみ先生が相談にいらっしゃいました。

ゆみ先生

 今受け持っている4年生は、来年度はクラス替えとなり、担任も代わります。今のクラスには発達障害をはじめいろいろと課題のある子どもがいます。その子たちが困らないようにうまく次の担任の先生に引き継いでいきたいのですが、どんなところに気をつけたらよいでしょうか。また、クラス分けについても、どんな配慮が必要でしょうか。

裕子先生からのアドバイス

 年度末を迎え、先生たちは、授業のまとめはもちろんのこと、成績評価、指導要録の作成と大忙しとなりますね。中でも6年生の担任は、卒業に向けての準備や取り組みがあり、さらに大忙しかもしれません。
次年度の担任への引き継ぎや中学校への引き継ぎは重要なこととご存知のことと思いますが、引き継ぎ資料作成にかかる教師の負担は大きいものです。
しかし、新しい学年・学級での生活や学習等がスムーズにできるよう、その子への配慮や支援を確実にしていくためにも、引き継ぎは手を抜くことができない教師の仕事です。引き継ぎのために作成した資料は、クラス分けの時にも参考にすることができるでしょう。

特別支援が必要な子どもの引き継ぎについて…

 通級による指導を受けている子どもやそれ以外でも個別の教育支援計画や個別の指導計画を作成している子どもであれば、それを基にして細かいところまで伝えることができるかと思います。しかし、個別の指導計画は作成していないけれど、クラスの中でちょっと配慮や支援をした方が過ごしやすいと思われる子どもについても、引き継ぎができるようにしたいものです。次のような点に気をつけてみましょう。

  • 学校生活や学習でのやりにくさ
  • こんな工夫をすると本人がやりやすくなる、学びやすくなること
  • 本人の得意なこと、興味を持っていること
  • 友達関係について…マイナスの関係だけでなく、良い関係も!(特別支援を必要とする子どもとも上手につきあえる子がクラスにいると、学級風土に良い影響を与えてくれます)
  • 服薬、アレルギー等の身体的なこと(養護教諭とも連携する)

 新学期のスタートで、自己有用感を味わえるきっかけができると、本人だけでなくクラス全体にとってもよい風土が生まれます。
 中学への進学の場合でも、進級の場合でも、引き継ぎの内容については、保護者の同意を得てから引き継ぐようにするとよいでしょう。同意のないところでの引き継ぎは保護者の信頼関係にも響きます。最近では、4月にわが子がつらい思いをしないようにと、次の担任教師に配慮や支援をしっかりと伝えてほしいと願う保護者も多くなっています。
 確実に引き継ぎ、次の教育の場で配慮や支援が実施されることが重要です。

どの子にも求められる引き継ぎについて

 特別な支援が必要というわけではないけれど、ちょっと伝えておいた方が円滑に進むのではないかという事柄もあります。学年が上がり、クラスが変わると子どもが育ち、取り越し苦労、ということもありますが、一応心に留めて引き継ぐ配慮が次の担任教師にも安心感を与えます。下記のようなことに注意しましょう。

ちょっと伝えておきたい心配事

  • 自己表現の弱い子…話すことは苦手だが、理解している。
  • 表面上は強そうにふるまうが、傷つきやすい子。
  • 支援が必要な家庭の子
  • 友達関係に課題がある子(よく付き合わないと理解しにくい子どもについては、予備知識があると初めての担任でも気を配ることができます。また、クラス分けの時にも必要な情報となります。)

クラス分けの参考にする主な情報

  • 学習、運動の力
  • リーダーシップがとれる力
  • 友達関係
  • 家庭環境
  • 地域性 (最近では、保護者同士の関係を考慮に入れなければならないこともあります。)

ゆみ先生

引継ぎといっても、様々な事柄を考えて、伝えていくことが必要なのですね。早めに準備して、良い引継ぎをしていこうと思います。

子どもがスムーズなスタートを切れる引き継ぎポイント

  1. 必要な配慮や支援は確実に伝えましょう。
  2. 問題点よりも、「こうするとよい」という積極的な工夫を知らせるようにしましょう。
  3. 引継ぎ事項は、場合によっては保護者の同意を得ましょう。

吉本 裕子よしもと ゆうこ

特別支援学級(知的障害学級)の担任として29年、その後管理職として11年、公立小学校に勤める。特別支援学級担任時代は東京キの個別の指導計画作成に携わった。校長時代は「特別支援教育の考えを基盤とした4つの教育改善」のテーマの下、通常の学級の担任と通級による指導担当者たちと研究発表を実施。平成25年3月に小平市立鈴木小学校の実践をまとめた『特別支援教育の視点で授業改善』を明治図書より出版。
現在 調布市教育委員会教育支援コーディネーター、清瀬市特別支援教育巡回指導員等。

(構成:佐藤)
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