インクルーシブ教育時代!支援のあるクラスづくり
ちょっと気になるあの子に着目すれば、どの子も願う「あるといいな」の配慮がわかる。居心地のよい、みんなのクラスづくりを始めましょう♪
支援のあるクラスづくり(8)
式での配慮から共生社会を考える
帝京大学大学院教職研究科客員准教授吉本 裕子
2014/1/20 掲載
  • 支援のあるクラスづくり
  • 特別支援教育

 今回は6年生最後の卒業式ついて、けんた先生から相談を受けました。

けんた先生

 3月に初めて卒業式を経験します。学年に車いすの子どもや発達障害の子どもがいますが、式にあたってどんな風に配慮をしていったらよいでしょうか。

裕子先生からのアドバイス

 学校生活最後のそして最高の学校行事である卒業式は、どの子にとっても希望に満ちあふれたよい式であってほしいものです。どの子にも心あたたまるよい式にするためにも、一人一人のニーズにできる限り寄り沿う形を考えていくことが大切です。
 卒業式の形や内容は、学校によって少しずつ異なりますが、一般的には次のような内容が考えられるでしょうか。
〇入場、退場 〇着席 〇証書授与 〇門出の言葉(呼びかけ等)
 その他の内容がある場合も、上記のようにその1つひとつの場面を書き出してみて、場面ごとに具体的な配慮を考えてみるとよいでしょう。

 また、卒業式は、子どもが主役といっても大切な学校行事です。学校の過度な負担にならないどの子にとってもよい式になるよう、どこまで歩み寄れるかを管理職が中心となって学校全体で考えていくことが大切です。参加しづらい子がいるからこの内容は今年は省こう…などとしては、その他の子どもたちが残念な思いをすることもあるでしょう。どの子にとってもよい形を考えたいですね。

 では、具体的に考えてみましょう。

配慮を要するのが肢体不自由の子どもの場合

入退場

 入退場や座席の場所(後ろの座席や端の列など)に合わせて、入退場の順番を考えましょう。特に車いすの場合はその後の証書授与のやり方にもつながりますので、一連の動きがスムーズに流れるように考えることも大切です。

証書授与

 本人が壇上に上がって証書を受け取る場合は、補助の人を配置したり、車いすをあげることを検討してみましょう。校長先生がフロアにいる本人のところまで降りて渡すのも案です。
 いろいろな形が考えられますが、いずれの場合も本人や保護者の方の希望を聞き、共通理解、合意の上、決定しましょう。

配慮を要するのが発達障害の子どもの場合

 下記のようなことが考えられます。肢体不自由の子どもの場合と同様、本人と保護者が納得できる対応をしていくことが大切です。

  • 座席に関しては、緊張してトイレに行く、声を出す、集中が続かないなど式の最中に対応が必要になる場合も考えて、教員側の席に近い配置がよいでしょう。
  • 緊張してトイレが近くなる子や集中しない子の場合は、気分の切り替えも含めて、適宜トイレに連れて行くことも考えます。
  • 証書授与では、待つ位置、立つ位置などがわかるようにテープで印しをつけるのも一考です。
  • 呼びかけ等の内容がある場合は、子どもの実態に合わせて、本人が言いやすい言葉を選など、どこで言ったらよいかを、周りの子どもの中で知らせる役を決めておく等の配慮も考えるとよいでしょう。

どの子にも伝えたい思い

 国では、「共生社会の形成に向けて、障害のある児童生徒も障害のない児童生徒も、経験を広め、社会性を養い、豊かな人間性を育てる上で、交流及び共同学習は大きな意義を有するとともに、多様性を尊重する心を育むことができる」とインクルーシブ教育がすすめられてきています。
 共に過ごしてきたクラスの子どもたち一人一人が、思い出に残るよい卒業式にしようと心から思える学級づくりが求められています。担任の先生が無理にやらせるのではなく、クラスの全員が納得し、力を合わせて卒業式を創り上げることができるよう、しっかりと話し合うことが大切です。
 卒業前の大切な時期だからこそ、「人を大切にすることとは何か」「思いやりとは何か」を考えていくことが必要になります。


けんた先生

 配慮といっても、子どもの状態によって様々なのですね。インクルーシブ教育時代に求められることも、よくわかりました。
 管理職や他の先生ともよく相談していきます。

100倍素敵な卒業式になる配慮のポイント

  1. 当事者の子どもはもちろんですが、他の子にとっても心に残るよい式になるように学校全体で取り組みましょう。
  2. 卒業に向けての最後の取り組みです。障害のあるなしに関わらず、どの子どもも自分の力を精一杯発揮できるように努力させることが大事です。

吉本 裕子よしもと ゆうこ

特別支援学級(知的障害学級)の担任として29年、その後管理職として11年、公立小学校に勤める。特別支援学級担任時代は東京キの個別の指導計画作成に携わった。校長時代は「特別支援教育の考えを基盤とした4つの教育改善」のテーマの下、通常の学級の担任と通級による指導担当者たちと研究発表を実施。平成25年3月に小平市立鈴木小学校の実践をまとめた『特別支援教育の視点で授業改善』を明治図書より出版。
現在 調布市教育委員会教育支援コーディネーター、清瀬市特別支援教育巡回指導員等。

(構成:佐藤)
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