<日本学級経営学会発>学級経営ガイドブック
日本学級経営学会のメンバーによる、読み切り学級経営ガイド。明日の学級づくりに役立つ実践的な内容が満載です。
学級経営ガイドブック(9)
「学級じまい」の時期を、どう安定させるか
福島県公立小学校菊地 南央
2020/2/25 掲載

1 はじめに

 学級の1年間も、残りわずか。この「学級じまい」の時期も、6月や11月と並んで、学級の荒れが顕在化しやすい時期と言われています。
 どうして、1年間近くを共に過ごしてきた学級が、最後の最後に荒れてしまうのか。私は、この時期の荒れの原因の一つが、教師の願いと児童の願いのズレにあると考えています。
 教師にとって2月は、「仕舞い」「終い」の時期と感じられるかもしれません。1年間の授業や学級経営の成果を明確に感じ、育ちを実感したいという気持ちは確かにあります。一方で子どもにとっては2月も、目の前にある新たな課題や挑戦に一生懸命で、日々奮闘中です。それでも、教師は終わりを意識して「いい感じ」にまとめようとしたがったり、1年間で伸ばしきれなかったところを詰め込もうとしたりします。
 このズレを乗り越えて、安定した学級じまいを迎えるために、3つのポイントについて紹介したいと思います。

2 ×プレッシャーを与える ○モチベーションを引き出す

 学級の担任として、授業内外でたくさんのことを教えてきました。子どもたちも、先生の思いを察することができるようになっているかもしれません。そんな時だからこそ気を付けなくてはいけないのが、過度の期待から生まれる否定的な関わりです。
 「その学習は、9月にやったでしょう。」
 「前にも言ったのに。何回言えば分かるの。」
 この時期の授業では、1年間の学習内容の復習に取り組むことが多くなります。NRT等のテストに取り組む自治体もあるでしょう。そんな中で、学び残しが見える場面が増え、つい否定的な言葉をかけてしまいがちになるのです。学び手が、いま学んでいることに対して、「終わり」を意識する教師が、焦って詰め込もうとしてしまうのです。
 そうなるのを防ぐためには、最後まで子どもの人生をフォローする立場であることを大切にして行動しましょう。具体的には、「@現状を客観的に伝えて同意を得る→A質問をしたり選択肢を提示したりして、解決策を考える→B支援できることを伝える→C励ます」というステップを踏むことをおすすめします。
 先ほどの一言を例にすると、
「この学習でつまずいているようだけれど、どうしたら出来るようになりそう?」
(子どもの考えを、聞く。)
「それについて、〜と、〜という方法が考えられるけれど、先生に手伝えることはある?」
「困ったら伝えてね。応援してるね。」
という一言に変換することが考えられます。否定的に接してプレッシャーを与えるのではなく、肯定的に接してモチベーションを引き出すことに、最後の最後まで力を尽くしましょう。

3 ×成果をまとめる ○今日も小さな成長を大切にする

 学級としての1年は、終盤です。子どもたちは、学習面でも生活面でも大きく成長しています。もし、その成長が実感できない場合は、4月の記録や姿と比較してみるといいでしょう。ぜひ、日々の中から成長を見つけ、子どもたちに伝えましょう。
 一方で、「もっと○○ができるようになってほしい。」「もっと○○な学級になってほしい。」という思いもあることでしょう。ここでつい、「もう残り〜日しかない。」「今からやってもそんなに成果が出なさそうだし……。」と、考えてしまうことがあります。その結果、日々の授業実践や細かな手立てや、子どもとのコミュニケーションに対して、手を抜いてしまうことがあります。私自身、ひどい場合には、
「(これまで教えてきたのに)どうして、もっと○○できないの。」
などと、子どものせいにしてしまうこともありました。教師は、たとえ年度末であっても、これまでの手立てに横着して、手を抜いてはいけません。これまで同様に、焦らずたゆまず手立てを考え、授業づくりや日々の教育実践を通して成長の楽しさを味わわせ続けましょう。成果を生み出し続け、子どもたちとその喜びを分かち合い続けて、1年を締めくくることが大切です。

4 ×目標達成 ○目標は、やり抜く・やり通す

 年度の初めに、学級目標を立てる学級も少なくないと思います。この扱いも、気を付けなくてはなりません。学級目標は、多くの場合、数値化して検証できるようなものは少ないでしょう。「様々な特性をもつ子どもたちが所属する」という教室の特性上、それが適切です。
 学級目標を1年間大切にすることはもちろんですが、その学級目標はこの1年間だけ、大切なものなのでしょうか? きっと、これから先の人生においても、大切にすべきもののはずです。そのことを、子どもたちと共有し合い、目標の達成を目指すのではなく、最後の1日まで目標をやり抜く、やり通せるよう手立てを講じていきましょう。
 転がることで車輪が安定するように、回ることで独楽が安定するように、学級も動き続けることで、課題や成果という軸が生まれます。しっかりした軸で、安定した「学級じまい」を迎えるためには、教師が行動し続けることが何より大切です。

菊地 南央きくち なお

1987年福島県生まれ。学びやすさと暮らしやすさをテーマにした学級づくりや、企業や外部人材と協働したコラボ授業の実践に取り組んでいる。ICT企業・医師・農家・エンジニアなどと協働し、カードゲームで食の課題を解決していく「食育モンスタープロジェクト」のチームメンバー。ふくしま教員ネットワークPIECE代表。NPO授業づくりネットワーク理事。共著に『学級経営が主役のカリキュラム・マネジメント〜キャリア意識を育むコラボレーション授業の実践〜』(学事出版)。

(構成:及川)

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