著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
子ども達を理解することから始めよう
小学校教諭長瀬 拓也
2015/3/12 掲載
 今回は長瀬拓也先生に、新刊『THE こども理解』について伺いました。

―今回の書籍は、『THE 教師力』シリーズの1冊として、テーマは「こども理解」です。本書のねらいと、その背景にある先生の想いについて教えて下さい。

 教師として何が一番大切か。
 それは、目の前の子ども達を理解しようとすることだと私は考えています。
 しかし、実はなかなか難しいことです。
 私自身、よかれと思ったことが子ども達にとって全く反対のことになってしまうこともあります。相手を理解するということは本当に難しいことで、いつも悩んでいます。しかし、そうした失敗や反省があるからこそ、教師は成長すると思います。
 そこで、教師として一番大切なことである、「こどもを理解する」という根本的な問題をもっと考えるべきではないか。そのように考え、今回、この「こども理解」の制作に取りかかかりました。
 あるべきでなかった本、それが「こども理解」だと考えています。

―まず最初に、本書は、その分野を専門とする著名な先生方によって執筆されていますが、その構成についてご紹介下さい。

 「こども理解」の制作を始める前にいくつかの著書を参考にしたのですが、本書でも執筆して頂いた福山憲市先生の『一人ひとりを見つめる子ども研究法の開発』(明治図書)がとても参考になりました。ぜひ読んで頂きたい一冊です。
 その上で、私の恩師やお世話になっている「こども理解」の各分野のプロフェッショナルと考える先生方にお願いしました。また、こども理解の実践に関しては、何人かの同世代の先生方にもお願いしました。みなさん大変お忙しい方ばかりです。しかし、「こどもを理解する」という一番大切なテーマに関心をもっていただき、寄稿していただけました。まずもって心より感謝しています。
 構成としては、「こども理解の意義、研究法、実践」という形になっています。なぜ、理解が必要なのか、そのためにどのように取り組めばよいか、そして実践という形になっています。

―子ども一人ひとりには個性があり、その生育歴や家庭環境、得手不得手など千差万別で、日常の子どもたちとの付き合いの中での理解はたいへん難しいものですが、まずどのようなこと(姿勢)が大切と思われますでしょうか?

 子ども達から学ぼうとする姿勢です。
 これしかないと思います。
 本書の中で「理解できないところから出発するべきだ」と書かれた先生方がいました。まさにその通りだなと思いました。
 本書を編集する上で「理解する」や「理解できる」ことではなく、大切なことは、「理解しよう」とすることだと学びました。子ども達を理解しようとすることがいかにできるか。頭にくること、いやになることもたくさんあると思います。しかし、それでも相手から学ぼう、理解しようとする姿勢が大切なのだと学びました。私自身、教師を10年してきましたが反省ばかりです。

―本書では、「こども理解の研究法」として、一人ひとりの子どもを見る視点や方法、理解を深める取り組みについて紹介されています。観察法や質問紙、日記や作品を通しての理解など、様々な取り組みが紹介されていますが、「宝」とも言われる子ども達の素晴らしさを見つけるには、どのような視点が必要でしょうか?

 私自身は「よさ」を見つけること、そして教師である自分自身を見つめることだと考えています。
 理解するということは実は一番難しいことだと最近感じています。
 自分ができているかと聞かれれば、反省だらけです。もっと謙虚に学ばなければと思います。
 その上で、いかに子どものよさを見つけようとすることができるかに尽きます。
 しかし、詳しい視点はぜひ、本書で見つけてほしいと思っています。

―最後に、読者の先生方へメッセージをお願い致します。

 本書をつくるにあたり、まず、先生方が議論されたのは、「子供」「子ども」「こども」といった表記をどのようにすればよいか、からでした。「子供」または「こども」という使用が国の方針として出されているようですが、今回は「こども理解」というタイトルにし、それぞれの先生が一番しっくり来る「kodomo」を表記しています。じつは、こうした細かいところまで話し合いがなされ、執筆されたのが本書です。
 ぜひ、できれば、学級開きまでに読んでほしい一冊だと思っています。もちろん、それから後でも読んでほしいと思っています。この春、私の一番のおすすめが本書ですね。

(構成:及川)

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