- まえがき
- 第1章 「こども理解」の意義
- 1 子どもに教える前にすべきことがある
- @教師にとって一番必要なことは相手を思うこと
- A「好き」になるには「よさ」を見つけること
- B行動の裏にあるものを見る
- 2 子ども理解の不可能性からスタートする
- @私のことを心配してくれていると思わなかった
- A自分の存在なんて,いっさい残したくないから
- B何も言わずに座り続けてくれたことに感謝します
- C子どもたちに対する私たちの影響を〈断念する〉ことから始める
- 3 なぜ,「こども理解」が大切なのか〜教師教育の立場から
- @「偏る」教師教育
- A校内暴力と学級崩壊
- B無力化された学校,教師たち
- C学級崩壊のメリット
- D教師となるために
- 4 なぜ,「こども理解」が大切なのか〜特別支援教育の立場から
- @特別支援教育の立場とは?
- A一人一人の教育的ニーズや持てる力を把握するための「子ども理解」
- B生活文脈の中で「関係性」「多面性」を意識した「子ども理解」を
- 5 「こども理解」とは何か〜歴史的背景を中心に
- @「こどもらしさ」の誕生
- A「こども理解」前史
- 6 多様な子どもたちと一緒に誰も排除しないインクルーシブな学級をつくる
- @どんな子どもも排除しない「インクルーシブ教育」
- A「Aくんだけが違う」のではなく「一人一人が違う」
- B子ども自身の自己理解を促す
- Cインクルーシブな職場づくり
- Dむすび
- 第2章 「こども理解」の研究法
- 1 子どもの行動を見る・背景を読む
- @「子ども理解」とはどんなことをするのか
- A子どもを「見る」視点とその方法
- 2 「こども理解」を深めるシンプルな方法〜全員のその日の言動を思い出す
- @所見を書きにくい子
- A「言動を思い出す」力を高め「こども理解」を深める
- B他の方法と組み合わせて「こども理解」を深める
- 3 支援を要する子の背景を読み解く
- @そのつまずきには,わけ(理由)がある
- A背景要因を読み解くためのプロセス
- B意外と知られていない,姿勢保持のつまずき「低緊張」
- C子どもの姿を変えようとするより,授業の姿を変えよう
- D二次的に引き起こされるつまずき
- E「謎解き」と「宝探し」のために
- 4 子どもの良さは「あたりまえ」の中にある
- @子どもは何を望んでいるのかを考える
- A指示は教師の都合
- B先生がまずやってみせると子どもは真似をする
- C「君は素晴らしいよ」とメッセージを送り続けよう
- D「あたりまえ」の中に素晴らしさがある
- 5 一人ひとりを見つめる子ども研究法
- @ザ・チャイルド
- A共育カード
- B毎日日記
- 6 絵を通して知る子供の見方,感じ方〜表現の根っこから学ぶ子供理解
- @はじめの一歩
- A子供理解と絵の見方
- B子供理解に根差した図画工作科の授業
- 7 授業で見つける子どもの姿
- @発表できない
- A授業中のおしゃべり
- B友だちをからかう
- C静かに座っている
- Dふざける
- E落ち着かない
- F考えていない
- 第3章 「こども理解」の実践事例
- 1 遊びやかかわりの中で子ども理解を深める〜幼児期の子どもと向き合い思うこと
- @生活経験がそのまま表れ,次につながっていく幼児期
- A教師自身の奥にあるものを探り,捉え,かかわる
- 2 子どもの見方をネガからポジへ
- @どのような思いで見るか
- Aネガからポジへ
- B「ネガからポジへ」事例 「席に着かないAくん」
- 3 子どものことは理解できない
- @理解できないことを知る
- Aあいさつと休み時間
- B子どもの声を聴けるようにする
- C子どもの裏をこじ開ける
- 4 子ども理解のための3つの視点
- @行動そのものを考えてみる
- A特性から考えてみる
- B気持ちを考えてみる
- C最後に
- 5 子どもを理解することとその方法
- @子どもを理解することとは
- A子どもの思いを受け取る方法
- B子どもの思いの受け取り方
- Cわかっていると思ったときが,わかっていないとき
- あとがき
まえがき
教師として一番必要なこと,するべきことは何か。
その問いがあるとすれば,私はまず「こども理解」を挙げるべきではないかと考えています。
学習者である子供を理解することができなければ,どんなに授業の仕方や教材を研究しても決して上手くいきません。それは,材料のことをよく知らないで調理をしたり,自然環境を考えずに農業をしたりすること以上のことです。孫子の言葉「彼を知り己を知れば百戦して殆うからず」にもあるように,まず相手,つまり,子供を知ることから始めなければうまくいきません。私自身,初任の頃,「理想が子供の頭の上を通っているよ」と副校長先生に言われ,ハッとしたことを覚えています。今でも子供のことが見えていない,理解できていないのではないかと思いながら仕事をしています。
では,「こども理解」とはどのようなことなのでしょうか。そして,「こども理解」とは,具体的にどのような取り組みをすればよいのでしょうか。
本書では,こうした「こども理解」について意義,歴史的背景や子供達の実態や状況,具体的な子供の看取り方や理解の仕方,そして教育実践についてまとめたものです。ぜひ,若い先生をはじめ,教育に関係のある方に読んでいただき,「こども理解」の大切さについて共に学び合うことができればと考えています。
/長瀬 拓也
子ども理解について考えるにはうってつけの一冊であった。