子どもの心をグッとつかむ言葉のワザ
学校生活でも授業でも、教師と「話すこと」は切っても切れない関係。話術、言葉の選び方、コミュニケーション力、コーチング等、教師に必要な言葉のワザを伝授します。
子どもの心をグッとつかむ言葉のワザ(8)
子どものモチベーションを上げる効果的な「ほめるシステム」
パラグアイ ニホンガッコウ大学学長補佐西野 宏明
2020/1/10 掲載

事例効果的な「ほめる」方法って?

 初任者の頃、「ほめる」ということについてさまざまな立場の人から意見をもらいました。5つの事例をご紹介します。

ある子「先生たくさんほめてくれるからうれしい」
ある保護者「西野先生はほめてくださるから本当にうれしいみたいで。他のお母さんたちも言っていますよ」
(なるほど。よかったよかった。ほめるって大事だよなぁ。でも、ほめられるからやる気を出すってことは、私がほめなくなったらやらなくなってしまうのかな?)

ある保護者「先生、うちの子が、先生はほめる子とほめない子の差が激しいと言っていましたよ」
(え〜、そんなぁ。平等にやってるって! わかってちょうだいよ〜!)

ある同僚「ほめるシチュエーションとタイミングって大事だよ」
(そうだよなぁ。でも、よくわからないんだよなぁ)

ある同僚「西野さんは、ほめる観点ってもってる?」
(? その子のよさ? 望ましい言動?)

ある子「先生ってさ、自分の気に入る行動をする子をほめて、それをみんなにやらせようとしてさ、だからそれに従えない私とかだと疲れるんだよね。無理してほめられようとして、やりたくないことやろうとがんばってさ…」
(…)

挿絵

 そこで「ほめる」ことについて考えました。悩みながら、自分なりの答えを出そうとしました。同時に、コーチングや心理学も少しだけ勉強しました。
 その結果、次のような結論にいたりました。
 「ほめるシステム」を構築して、時間と量は平等に、そして質だけは1人1人変えてほめよう!

解説

「ほめるシステム」のキーワード

 「ほめるシステム」を構築するにあたって、次のことを意識しました。

  • 1人1人を大事にしたい。=1人1人のよさを伸ばしたい。
  • 1人1人のよさを伸ばしたい。=自尊感情を高めたい。
  • 自尊感情を高めたい。=自信を付け、やる気を引き出したい。
  • どうせやるのだったら、教師と子どもの1対1関係で完結させてしまうのではなく、学級の全員、保護者も巻き込みたい。
  • 全員に同じ量で平等にほめたい。
  • 子ども本人が、自分自身のよさになかなか気付いていないことがあるため、子どもが自覚している長所を伸ばすとともに、まだ自覚されていないよさを伝えたい。

「ほめるシステム」の実践アイデア「不意にほめらレター」

事前準備

 バインダーにA4判の座席表を10枚以上挟んで常に持ち歩きます。
 子どものいいところや気づきを発見するたびに記入していきます。
 たまに、あえて机上に置きっぱなしにしてもよいです。
 子どもはワイワイ言いながらのぞいてきます。
 同時に、向山洋一先生が書かれていた「放課後の孤独な作業」を行います。
放課後、1人1人に思いを馳せ、よさ、成長したところ、がんばっていたところを書いていきます。毎日20分間です。
 長所を思い切り書きます。
 同時に、その子が改善したいこと、伸ばしたいと願っているところをねらって書いていくこともしました。
 1人1人のよさ、長所、変化を毎日1つ以上書きます。

実践紹介

その1 学級通信で伝える
 日頃、書きためた子どもたちのよさの記録をもとに、学級通信を書きます。
 1枚につき4、5人のよさを書きます。1人あたり3、4行です。座席順でも、五十音順でもいいでしょう。
 学級通信に載せるのは、家庭で話題にしてほしかったからです。また教師の姿勢を伝えたかったからです。

挿絵

その2 直接子どもに伝える
 2か月に1回、1学期間に2回程度、スキマ時間や朝・帰りの会を使って、毎日4、5人ずつ行います。
 伝える子どもに黒板の前に出てきてもらい、握手をしながら伝えます。先生が音読して、相手の目を見ながら伝えていくのです。
 子どもは照れ臭そうにしますが、とてもうれしそうです。
 クラスに親和的な雰囲気ができてきたら、教師が伝え終わった後、菊池省三先生の「ほめ言葉のシャワー」風に、子どもたちが指名なし発言で、その子どものいいところを発表していく方法もあります。

その3 個人面談、家庭訪問、通知表で伝える
 いいところ探しの座席表が蓄積されていきます。
 この座席表をフル活用できる場面が2つあります。1つは個人面談、家庭訪問です。
 保護者との会話の中で、その子どものよさをよどみなく、自信をもって伝えることができます。清書して渡すとなおよいでしょう。
 また、通知表の所見でも活用できます。
 日頃書きためておくことで、「この子、書くことがな〜い」ではなく、「書くことが多すぎる。どれを削ろうか」となります。

子どもたちにとっても印象的な体験

 「わたし小学校の先生になって、子どもたちに突然ラブレターを読むの」
 私が1年生の担任をしていた時に、ある子どもから言われた言葉です。
 この子にとっては、「不意にほめらレター」の実践が強く心に残ったようで、将来自分も先生になって、同じように子どもたちに「ほめらレター」を読みたいと思ったようです。
 この子が本当に教員になるかどうかはともかく、中学生になった今も、夢は小学校教員とのことでした。

ここがポイント!

  • 座席表のコピーをたくさん用意し、毎日子どものよさを書いていく!今月の「言葉のワザ」
  • 友達も保護者も巻き込んでその子の自尊感情を高める!
  • 無理せず学期に1回のペースで始めてみる!

ーーー
参考文献 向山洋一『教師修業十年』明治図書
ーーー

西野 宏明にしの ひろあき

東京都の公立小学校を10年間勤めたのち、4月よりパラグアイの私立ニホンガッコウで学長補佐と教育コンサルタントを兼任中。
初任時代の初めての授業で挫折し、教師修行を始める(教育新聞電信版で連載。初回の記事はこちら)。
日本各地の教育イベント、セミナー、サークルに参加。自分自身でも若手教師向けのサークルやセミナーを主宰した。毎月5万円以上は読書やセミナー参加費に費やし、自己研鑽に励んだ。その集大成として2冊の単著『子どもがパッと集中する授業のワザ74』『子どもがサッと動く統率のワザ68』を上梓。
2017年よりJICA青年海外協力隊員としてパラグアイへ派遣され、2年間、現地の教育力向上に努める。2019年3月に公立小学校を退職し、現職。

(構成:木村)
コメントを投稿する

※コメント内ではHTMLのタグ等は使用できません。