校則なし!チャイムなし! 桜丘中が挑む学校改善アクション
校則全廃の公立中として知られる, 東京都世田谷区立桜丘中学校の具体的な取り組みを紹介します。
桜丘中が挑む学校改善アクション(5)
部活動を教員・生徒・保護者の目線で考える
東京都世田谷区立桜丘中学校宮田 孝良
2019/10/20 掲載

 「ブラック部活」などと世間を騒がせ、教員の長時間労働が問題になっているこの時代。部活動に対して多様な価値観をもつ生徒・保護者を前に、桜丘中学校では部活動とどう向き合っているのかを紹介します。

部活動の合理化を様々な視点から

(1)長時間労働に苦しみ、授業準備もできない教員の立場から
 教員にとって一番大切なことは「授業」なはずです。納得のいく授業実践と従来の部活動運営を続けようとすると、4月1日の採用日からGWまで、退勤が9時を過ぎる日を交えながら休みなく34連勤した自分のような教員を生み出すことになります。そこで、まずは教員が心と体に余裕をもって働けるように「水曜日・日曜日(大会参加を除く)の完全OFF」「朝練の廃止」を全部活で取り決めました。最初は教員の中でも反対の声はありましたが、実際に休める時間ができてどの教員も満足している様子です。
(2)もっとやりたい生徒、活動を減らしてほしい生徒、様々な生徒の立場から
 生徒の中には「部活が命」という子もいます。部活動の時間を確保するために「再登校の廃止」「定期考査期間の廃止」を決めました。会議や面談のために生徒を一回帰らせて、自宅学習などという名目を与えるのは学校の都合であり、まったくの無駄です。再登校をやめると各部の状況に応じて、活動時間を延ばしたり、帰宅時間を早めたりすることができました。また、定期考査期間の廃止は充実した部活動運営に大きな効果を出しています。考えてみると、年4回の定期考査で1週間の部活動OFFをつくると4週間も活動できません。定期考査の代わりの積み重ねテストでは範囲が狭く、休みがなくても対応できるので、学習・部活をバランスよく充実させています。
 反対に、部活動に負担を感じている生徒がいるのも事実です。桜丘中の生徒は部活以外にも様々な習い事をしています。また、部活以外にも素敵な経験を子どもにさせようとしてくれる保護者もたくさんいます。そこで「部活は休んでもいい」と最初の保護者会で熱弁しています。先日、野球部の大会を休むと言ってきた生徒がいたので理由を聞くと「東京ドームでグラウンド整備の体験ができることになった」と言うので、「一緒に大会出たかったけど、よく考えて決めたんでしょ? じゃあ最高の経験をして来い」と送り出しました。いろいろな生き方がある現代です。生徒が自分の判断で物事を決めたのなら、それは素晴らしいことです。学校の都合や常識を押しつけてはいけないと思った出来事です。
(3)もっと部活動に打ち込む我が子を期待する保護者の立場から
 桜丘中には「部活Doing」という組織があります。10年ほど前、部活動顧問のなり手がいなく、多くの部活が廃部の危機だったときに保護者が立ち上げた組織です。現在は、各部の「部費の会計」「広報誌の作成」「遠征の引率」などをしてくださっています。先日の会議では、「先生方がそんなに大変ならもっとお手伝いがしたい」とおっしゃっていただきました。保護者と教員が協力して、子どもたちにより良い環境をつくろうとしています。

部活動の本来の意義を考える

 先の話と矛盾するように聞こえるかもしれませんが、桜丘中学校では自分たちのやりたい部活をつくり出すことができます。部活と言ってもサークル活動のようなものですが、メンバーを集め、顧問になってくれる先生を探し、学校での活動場所を見つけるために生徒たちは頑張ります。僕も今まで野球部の顧問をしながら、「美容部」「ライトセーバー部」の顧問をしたことがあります。生徒が自ら動き出した活動を、学校の都合でダメだといっていたら日本で育つ子どもたちは、上の人が言うことを聞くだけになります。日本の明るい未来のためにも、そういう生徒を応援できる学校が増えてほしいと思います。また、「ダンディースポーツクラブ」から見えた課題もありました。彼らはクラブチームで土日(平日の夜)に活動する運動神経抜群の生徒たちですが、放課後に居場所がなかったのです。そのことに気づいてからは、野球部では外部でやっている生徒も所属してもらい、平日は一緒に練習しています。勝利至上主義にならず、目の前にいる生徒のことを第一優先に考えていきたいと思います。

宮田 孝良みやた たかよし

東京学芸大学中等英語科卒、桜丘中学校で5年目、英語・野球部・生徒会を担当し、今年度は生活指導主任を務める。

(構成:赤木)
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