長瀬拓也プロデュース エキスパートが教える!とっておきの授業スキル
ベテラン教師のコツを強力執筆陣がリレー連載! 学級・授業がもっとうまくいくヒミツ、教えます!
エキスパートが教える!とっておきの授業スキル(6)
魅力いっぱい! 西尾流 絵画指導のキソキホン
小学校教諭長瀬 拓也
2014/11/5 掲載
  • とっておきの授業スキル
  • 図工・美術

長瀬:第6回は、熊本の西尾環先生による図画工作科の指導のアイデアです。図画工作科は若い先生にとっては苦手な人も多く、しかもその結果が作品に表れ、悩んでいる方も多いかもしれません。ぜひ、西尾先生の指導のアイデアを参考にしてください。

図画工作ミニ題材で、形のとらえ方&着色を学ぼう!
西尾 環先生

 学年始めの絵画の授業では、描く楽しさや面白さを味わいながら、形のとらえ方や色の使い方等の基礎・基本を身に付けることが大切です。ここでは「見て線で描く」「絵の具を扱う」という視点で設定した2〜3時間程度で実施できるミニ題材(3年生以上)の中で、(1)意欲を高める導入の工夫、(2)線描指導、(3)着色指導の方法を紹介します。

スキル1導入の工夫とICT活用で題材が魅力的に

 3・4年生では、描く対象物に出会って感動することから始まります。
 題材「おいしそうなやさいたち」では、子どもが実物の野菜や果物の香りや触感を通して対象物を観察し、形の面白さや色の違いまで気付きます。
 5・6年生では、描く対象物に思いを込めることをねらいます。
 題材「卒業まで使うランドセル」では、1年生で重かった時から毎日背負ってきた日々を語り合います。すると、丈夫に縫ってある縫い目や、小さな傷に目が行くようになります。

 これらのミニ題材は、実物との出会いで、子どもの興味・関心をそそります。加えて、ICT活用でさらに魅力を増します。例えば、教師がタブレットで撮影した対象物(野菜やランドセル)をテレビに映し出し、拡大機能で部分を大きく見せましょう。肉眼では注視しなかった形や色を発見し、「おお〜」と感動の声が上がります。さらに、先輩が描いた参考作品をスライドショーで見せながら描く意欲を高めます。
 ほかにも「カラフルな春の花」(3・4年)、「はきなれたくつ」(5・6年)なども、魅力的な題材です。

例1 例2

スキル2かたつむり画法で形をとらえよう!

 線描(せんびょう)は、スケッチ用のサインペン(スケッチペン)か、墨をつけた筆で、対象物を白い画用紙にかたつむりになったつもりで、ゆっくりと描くようにします。サインペンは、ペン先が直方体になっているものが強弱の線が出てよいです。(筆は習字の小筆程度。)
 野菜や果物であれば、「実物よりちょっと大きく描こう」と呼びかけます。そして机間を回りながら「このでこぼこ感がいい」「形のゆがみをよく見て描けたね」などと声をかけていきます。子どもの中には、絵が小さくなってしまう子もいますが、そういう時は「じゃあもう一個、今のより大きく書いてごらん」と声をかけます。そうすることで、形のとらえ方を繰り返し学ぶだけでなく、ものの前後の関係や重なりについて指導することができます。複数個描いた子どもの絵を取り上げてクラス全体で一緒に見ながら、指導するとよいでしょう。

 5・6年生では、靴やランドセルなどの対象物を様々な方向から見て場面構成を考えさせます。靴であれば、左右の組み合わせを工夫したり、視線を下ろして奥行きを感じさせたりしてから、描くようにします。

例3 例4

スキル3ビデオでバッチリ!用具の使い方

 何年生であっても年度初めには必ず、絵の具、パレット、筆、水入れの使い方の基礎・基本を学ぶようにします。

例5
例6
例7

 また一色に思えるような対象物でも、よく見ればいろいろな色があることをふまえて、色づくりをさせましょう。例えば「にんじんのオレンジも赤と黄色の割合で色の雰囲気が違ってくる」「赤いランドセルに光が当たっているところは色が薄くなる」ということに気付くようにします。そして

  • 混ぜる時は、弱い色を先に広げ、強い色を足していく。
  • 光が当たって薄い色、と言うのは、白を混ぜるのでなく、水で薄くするということ。対象物の白もよく見れば、薄い色が見える。

ということを押さえます。

 なおこれらの指導法は、下記のサイトにビデオでアップしています。

水彩絵の具の使い方

成功に導くポイント
  • ICTの効果的な利用で魅力倍増!
  • 線描は、「ゆっくり」がキーワード。
  • 動画で着色の基礎・基本を押さえよう。

長瀬:西尾先生ありがとうございました。次回は理科のとっておきスキルを静岡の森竹高裕先生にご紹介いただきます。どうぞお楽しみに。

西尾 環にしお たまき

1960年鹿児島県生まれ。熊本市立五福小学校教諭。熊本市図画工作・美術教育研究会研究局長。30代の頃加入した熊本図工サークルにおいて、今日まで図画工作の実技研究及び授業研究を進めている。2006年、サークル仲間と共に美術館と連携した実践研究「鑑賞を楽しむ子どもをめざして」で、全国教育美術賞を受賞。個人でも2001年日本子どもの版画指導者賞受賞。また2008年、図画工作と国際教育を関連させた実践研究「海外との共同制作で課題解決力と感性を育む〜ウブドとの国際交流アートマイルプロジェクト〜」で、ちゅうでん教育大賞優秀賞受賞。さらに昨年、ICTを活用した図画工作の授業実践「ここにいるよ、すてきな住人」でICT夢コンテスト奨励賞受賞。共著として『やってみたいな!図画工作題材集 絵画 中学年』(開隆堂)、『ITを自由自在に活用するヒント』(明治図書)など。

長瀬 拓也ながせ たくや

1981年岐阜県生まれ。岐阜県立中津高等学校、佛教大学教育学部教育学科卒業。小学校教諭。専門は、学級組織論、教育方法学、社会科教育。NPO法人授業づくりネットワーク理事、教育サークル「未来の扉」代表代行、クラス・マネジメント研究会代表。
主な著書に『新版 若い教師のための読書術』(学事出版)、『教師のための時間術』『誰でもうまくいく!普段の楽しい社会科授業のつくり方』(黎明書房)、『学級経営・授業に生かす!教師のための「マネジメント」』『THE学級マネジメント』(明治図書、編著)『THE教師力〜若手教師編〜』(明治図書、共著)『ゼロから学べる学級経営―若い教師のためのクラスづくり入門―』『ゼロから学べる授業づくり―若い教師のための授業デザイン入門―』(明治図書)、近刊に『ゼロから学べる生徒指導―若い教師のための子ども理解入門―』(明治図書、編著)などがある。

(構成:林)
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