教師なら必ずマスターしたい《指導技術集》
「指導技術」を意識するかしないかで、ここまで変わる!教師なら絶対に身につけておきたい知識や技能を、具体的なエピソードをまじえて紹介。
マスターしたい指導技術集(13)
子どものやる気を引き出す条件
京都文教大学准教授大前 暁政
2014/4/15 掲載
  • マスターしたい指導技術集
  • 教師力・仕事術

楽しいイベントをするのに、子どもが進んで動きません。

リーダーになろうとする子が少ないのです。

 学級でイベントを行うことになったとき。
 せっかく楽しいイベントを企画したのに、子どもがなかなか動かないことがあります。リーダー役への立候補も少ないといった状態です。
 これは一体なぜなのでしょうか。

 ひょっとすると、「子どもが、イベントへの見通しをもてていない」のかもしれません。見通しをもてないから、動きたくても動けないのです。
 その場合、まず教師は、どんなイベントをしようと思っているのか、ゴールを示さなくてはいけません。ゴールを示すことで、イベントへのイメージを豊かにするのです。

 また、他の原因として、「進んで動くと、友達から馬鹿にされる」といった空気が教室につくられているのかもしれません。進んで動く子を馬鹿にするような雰囲気だと、子どもはどんどん動かなくなっていきます。
 そうだとするならば、教師は、「進んで動くことはすばらしいのだ」という空気をつくることから始めなくてはなりません。
 上の二つに共通して言えることは、次のことです。

子どものやる気を引き出す「環境」をつくることが大切です。

 子どもに進んで動いてほしいのであれば、子どもが進んで動けるような環境をつくることが、第一なのです。反対に言えば、子どもが進んで動けないのは、「子どもが進んで動ける環境」をつくれない教師が悪いのです。
 
 これを、若い教師は次のように考えてしまいます。
 「今年の子どもは、やる気がない」
 「最近の子どもは、リーダー役をしてくれない」
 つまり、子どもの「資質」の問題に転嫁してしまうのです。
 教師のイメージ通りに子どもが動けていないときは、まず「環境」を疑ってみることが、第一なのです。
 
 さて、環境も整っているのに、子どもが進んで動かない場合もあります。
 教師のイメージしている動きとは違い、子どものやる気がいまいち感じられないとします。
 リーダー役になった子が、みんなをきびきびとリードしようとしない。
 せっかくの楽しいイベントなのに、何となく子どものやる気が感じられない。
 こういうときはどうしたらよいのでしょうか。

 一つの方法として、教師がお手本を示し、「こういうときはこんな風に動くのだよ」、「こんな風に盛り上げるんだよ!」とやってみせてもよいでしょう。
 お手本を示すのは、効果的な指導方法です。
 子どもの動きが、教師のイメージとかけ離れているのであれば、教師のイメージを、教師自身がお手本で示してやるとよいのです。そうすれば、子どもの動きは少しずつ変わってきます。教師のイメージに近付いていくのです。
 
 ただし、この方法は、子どもの「内面」から「やる気」をわき起こしたのではありません。「こんな風にやる気を出して動こう」という教師のイメージを、「外面」から与えて、少々無理矢理に子どもを動かしたのです。
 言ってみれば、「薬を与えて元気を引き出した」というような、西洋医学的な方法です。これはこれで大切なのですが、「心の内からやる気を引き出す」ような、東洋医学的な方法も考えなくてはなりません。
 子どもに、「自分自身の意思で、進んで動きたい」と思わせなくてはならないのです。
 
 内面から「動きたいな」と思わせるには、次の方法が有効です。

子どもの「ほんの少しのやる気」を見逃さず、認め、ほめていくことが大切です。

 よく見ていると、子ども全員のやる気がないわけではありません。よく見ていると、「少しのやる気を見せる子」もいます。その子のやる気を見逃さず、ほめていけばよいのです。
 人は、誰だって、自分の頑張りを認めてもらいたいと思っているものなのです。頑張りを認めてくれたら、「次も少し頑張ってみようかな」と思えるのです。しかも、頑張りが小さければ小さいほど、教師がその頑張りを見つけてほめてくれたことを、子どもたちは嬉しく思います。その子本人の内面から、やる気がわき出てくるようになります。
 最初は少しずつしかやる気が引き起こされませんが、やがて、加速度的にわき出してくるようになります。その結果、教師が思い描いていたような、進んで動く子どもたちになっていくのです。
 
 「やる気を引き出せる環境を整えること」と、「内面からやる気を引き出せるようにすること」。この二つを意識して、子どもに接するようにすればよいのです。

大前 暁政おおまえ あきまさ

昭和52年生まれ。岡山県の公立小学校教諭を経て、京都文教大学の准教授(理科教育)として赴任。理科の授業研究が認められ「ソニー子ども科学教育プログラム」に入賞。著書に、『子どもを自立へ導く学級経営ピラミッド』『プロ教師の「折れない心」の秘密〜悩める教師への50のアドバイス〜』『プロ教師直伝! 授業成功のゴールデンルール』『プロ教師の「子どもを伸ばす」極意―学級&授業づくりマスターBOOK―』『スペシャリスト直伝!板書づくり成功の極意』『スペシャリスト直伝!理科授業成功の極意』(以上、明治図書)、『必ず成功する!授業づくりスタートダッシュ』(学陽書房)、『NHKおじゃる丸 クイズでおじゃる 目指せ小学校クイズ王』(執筆協力、NHK出版)などがある。
著者HP:『大前暁政の教育』

(構成:及川)

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