- まえがき
- T章 プロ教師の成功する学級づくり
- 一 学級づくりの大前提とは
- 二 学級経営の基本スタンス「子どもは『ほめて』伸ばす」
- 三 全員が大きく夢を描くための「学級づくりの筋道」
- 四 子どもが自立していくための年間戦略
- 五 いじめのないクラスづくり
- 六 学級づくりがうまくいくための極意
- 七 規律のあるクラスにするためにすぐできる方法
- U章 一人ひとりの子どもを伸ばす「個別対応術」
- 一 一年間の布石をこう打つ!〜嫌なことがあると逃げる子〜
- 二 発達障害をもっている子への指導
- 三 愛情に飢えており反抗が常習化している子への対応
- 四 何度言っても同じようなイタズラや失敗をする子
- 五 乱暴な子への対応
- V章 子どもを伸ばす!「プロ教師の子どもコミュニケーション術」
- 一 「自立した子ども」を育てるコミュニケーション
- 二 「生きる力」を養うための“ちょっとした場面”におけるコミュニケーション
- 三 全体での話は緊張感の中で考えさせる
- 四 思春期・反抗期を迎えた子へのコミュニケーション術
- 五 望ましい姿を、子どもたちに共通理解させよう
- W章 プロ教師の成功する授業テクニック
- 一 教え方の大原則〜教えるポイントを限定した上で、「教えて評価する」ことが子どもを伸ばす〜
- 二 子どもの力を引き出す授業には「優れた技術」が使われている
- 三 子どもが安心して授業を受けることができるための「教態」のあり方
- 四 できる子もできない子も満足するための授業づくり
- X章 教師の仕事を充実させるためのテクニック
- 一 「仕事が多すぎる」と感じるときに
- 二 「保護者とのよい関係」を築くための極意
- 三 信頼を勝ち取る「保護者からのクレーム対応法」
- 四 同僚との連携で必要な姿勢
- あとがき
まえがき
図工の時間。子どもたちは思い思いの絵を、描いている。
そのうちに、「終わりました。」と見せにくる子が現れてくる。
中には、自分で終わったと判断して、片付けを始める子もいる。
さて、この場面、みなさんなら、どう子どもに声かけをするだろうか。
子どもが完成だと思って満足しているのだから、「ほめて終わらせればよい」という意見もあるだろう。
不備を見つけ、「ここを塗っていないよ」と教えるということもあるだろう。
私の場合、「よく頑張ったね。」と、ほめるだけでは終わらない。
評価をした後で、「あと一工夫」を子どもに要求する。
「ここに、線を入れてみたらいい。もっと本物のような花になるよ。」
「明るい色が少ないね。思い切って白の点を、海の中に入れてみたらどうかな。明るさが出るよ。」
不思議なもので、絵というのは、ほんのちょっとの工夫で、かなり出来が変わってくるものだ。
そうなると、本人が驚くことになる。あとほんの少しの努力をするだけで、絵が上手くなったと。
周りの子も、「へ〜。上手に描けたね〜。」と惚れ惚れして絵に見入っている。
子どもは、努力してよかったと本気で思えるようになる。こうして、努力を惜しまない子が育ってくる。
これは、教室の中のささやかな一コマに過ぎない。
だが、長い目で考えると、子どもに与える影響は小さいとは言えないものを感じる。
私は、教師の仕事を、次のように考えている。
子どもの可能性を引き出し、伸ばす。
子どもは誰でも、本来、力をもっている。
その力を、前向きな形で引き出してやり、伸ばしてやることこそ、教師の仕事だと考えている。
しかしながら子どもは、自然にほうっておいた状態では、「可能性を眠らせている」ことが多々ある。
例えば、音読の場面。何も指導していない四月の段階では次のような状態である。
小さな声で読んでいる子がいる。
ボーッと教科書を眺めて、声を出していない子がいる。
机に突っ伏して、ボソボソと読む子がいる……。
もっとハキハキと読む力はある。にもかかわらず、力を出し切っていないのである。
こんな状況でほうっておくのが、教育だろうか。
教師の中には、次のように言う人がいる。
「教師の仕事は、支援をすること。指導ではなく支援をしなさい。見守って、やる気が出るのを待ちなさい。」
本当にそうだろうか。
こういう状況で、何も指導せずにほうっておけば、どんどん子どもの声は小さくなってくる。
やがて、まともに読まないようになってくるだろう。
こんなことで、子どもの可能性を引き出し、伸ばすことができるだろうか。
私は、指導すべきだと考えている。
声が出せるように、教え導いていかなくてはいけないと思っている。
それは無理に、力ずくでやるのではない。もっとスマートに、でも声を出さないといけないように、子どもに指導していくのが教師の仕事だと考えている。
例えば、「声が小さいです。やり直し」と言って、もう一度読ませるのも一つの方法だろう。
「お隣さんに声が聞こえるぐらいの声で読みなさい」と指示するのも一つの方法である。あとで、「お隣さんの声が聞こえた人?」と言って確認し、ほめるようにする。
他にも、一人ずつテストをする方法もある。一文を十分に練習させた後、その一文だけを読ませる。そして、声の大きさを評定する。自分では声を出しているつもりでも、声が小さいということもある。自分はいったい何点ぐらいの音読ができているのかがわかると、やる気が出てくる。
このように、様々な方策を打っていく。「声が出せるのに出そうとしない」状態を見逃すことはしない。
様々な方策を実行し、本来もっている子どもの力を引き出してやることこそ、教師の仕事だと考えている。
本書は、「子どもの可能性を引き出し、伸ばす」ための教師の仕事を示したものである。
読者諸兄が受けもつ子どもが少しでも伸びていくことにつながれば、この上ない幸せである。
二〇一一年十月 /大前 暁政
とてもわかりやすく,明日からでもすぐに実践できる本でした。
例えば,私は,子どもが自分から動くクラスにしたいと思っていてもなかなかできず,
結局,教師の私がやってしまったり,指示をしてさせたりする状況です。
この本には,給食のごみが落ちているときの指導の仕方まで詳しく書かれていました。
私はまさに悪い例の指導をしていました。
毎日の一つ一つのちょっとした教師の指導の仕方によって,子どもは良くも悪くもどんどん変わっていくのだと思いました。
教師の力量次第なんですよね・・・。
この本では,実際にどう指導したらいいか,いろいろな場面での教師の言葉がそのまま書かれてあるので,真似をしていきたいと思います!
学級経営に困っている新採用の同僚に
「とってもいい本なので,読んでみたら・・・」
と進めようと思います。