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科学系博物館の利用―理数教員に関する調査結果報告から
kyoikujin
2009/10/19 掲載
教師のための博物館の効果的利用法

 6日、国立教育政策研究所のサイトに第3期科学技術基本計画のフォローアップ「理数教育部分」に係る調査研究 第T部[理数教員に関する調査結果報告]が発表された。この報告は総合科学技術会議の委託によって同研究所がこれまでの理数教員に関する調査をまとめたものであるが、とくに「学校と科学系博物館等との連携による教員支援」については独自の調査も行われている。

 5月16日の記事では博物館が行っている学芸員による解説や出前授業などの教育へのフォローについて少しふれたが、この調査報告からはこうした取り組みがまだ全国的に広く行われているとは言い難い現状がうかがえる。

科学系博物館の学習機会、中学校の8割が「設けていない」

 20年度の小学校理科教育実態調査によると、小学校の教員が科学系博物館での学習機会を年に何回設けているかという問いに対し、25.8%が6年間に1度も設けていない、16.9%が1回と回答しており、ほとんど学習機会を設けていない教員の多いことがわかる。同中学校調査では、1〜3学年とも1度も設けていないという回答が80%前後であった。時間や費用の問題もあるようだが、博物館などの「外部の専門家と連携した活動を行う際に障害となること」としてあげられている中に、「どの様な活動が可能なのか分からない」「どうやって外部と交渉したらいいかわからない」を合わせた回答が小・中で半数以上という結果があり、とりわけ教員の博物館に対する理解を深めるための情報提供が大事であると考えられる。
 また、20年度の国立科学博物館が行った小・中学校と博物館の連携に関するアンケート調査報告書<博物館編>の中で「教員をサポートするために行っている事業や用意している資料の有無」に対する回答で、「特にない」が56.0%を占めるという結果もあり、学校側・博物館の距離が感じられる。

「学校寄り」のプログラム開発―学校・博物館相互に連携を!

 博物館を利用する学校側も、カリキュラムの中でうまく博物館を利用することを組み込めなければ利用しづらいし、子供にとっても、教室でやっていることと何の関連性がなく、断片的な知識や経験を与えても有効に働かない可能性がある。
 こうしたなか、国立科学博物館では、文部科学省委託事業「科学的体験学習プログラムの体系的開発に関する調査研究」の一環として、小学校向け29本、中学校向け18本のプログラムを開発し、それを理科の学習指導要領に沿って体系化している。これらのプログラムは「授業で役立つ博物館」というサイトの中で紹介されているが、たとえば、今年度移行措置で小学校6年から5年に移動してきた「電流のはたらき」という単元について、学校にはない強力な電磁石を体験させるなど、授業内容と博物館でしかできない体験をうまく組み合わせたプログラムがある。このように、博物館が学校に歩み寄る動きが見られるが、学校側も学芸員に丸投げせず、博物館などの外部機関と学校が、互いに何がメリットになるのか焦点を絞って情報交換することが望まれる。

 中学校理科の新学習指導要領には、新たに「博物館や科学学習センターなどと積極的に連携、協力を図るように配慮すること」との文言が加わり、国が各機関に委託して博物館と学校の連携に力を入れてきている。また、小学校では理系の専攻ではなかった理科主任や理科の苦手意識がある教員が多く、この調査報告でも繰り返し博物館等の外部機関での研修の必要性が提言されているが、苦手だからこそ、教員が博物館や専門家などを活用して授業の質を高めることも重要かもしれない。

この記事は、『きょういくじん会議』の記事を移転して掲載しているため、文中に『きょういくじん会議』への掲載を前提とした表現が含まれている場合があります。あらかじめご了承ください。
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