著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
臨場感あふれる「主体的・対話的で深い社会科学習」の姿
鳴門教育大学理事・副学長梅津 正美
2023/2/25 掲載
 今回は梅津正美先生に、新刊『板書&展開例でよくわかる 主体的・対話的で深い学びでつくる365日の全授業 中学校社会』シリーズ(地理・歴史・公民)について伺いました。

梅津 正美うめず まさみ

 鳴門教育大学理事・副学長。博士(教育学)[広島大学]。広島大学大学院教育学研究科教科教育学専攻博士課程前期修了。島根県立高等学校教諭、広島大学附属福山中・高等学校教諭、鳴門教育大学大学院学校教育研究科准教授、教授を経て、現職。主な研究領域は、社会科授業構成論、米国の歴史カリキュラム編成論など。
 著書は『歴史教育内容改革研究』(単著、風間書房)、『協働・対話による社会科授業の創造』(単編著、東信堂)、『評価事例&テスト問題例が満載!中学校社会新3観点の学習評価完全ガイドブック』『新3観点の学習評価を位置づけた中学校歴史授業プラン』『中学校社会 指導スキル大全』(単編著、明治図書)など。

―本シリーズは、中学校社会の地理的分野、歴史的分野、公民的分野の授業の全時間について、単元の指導計画と評価規準と評価の手だて、実際の板書写真を添えた授業展開例をまとめて収録しています。本書の、おすすめの読み方があれば教えて下さい。

 本書は、著者である中学校の先生方が日々生徒と向き合い実践を重ねる中でつかまれた「主体的・対話的で深い学び」となる授業づくりの手だてと実践のスキルを紹介したものになっています。読者の皆様には、教師としてのキャリアステージや授業改善に向けてのご自身の課題意識に即して、本書に示された各分野・各単元の授業展開や評価の仕方を参照しつつ、「自分ならどうするのか」と常に問いかけながら授業の構想、実践、改善に取り組んでいただくことを期待したいと思います。

―本書は「主体的・対話的で深い学びをつくる」をキーワードとして、授業展開例でその実現のポイントと、導入→展開→まとめの形で、教師と生徒のやり取りを含めた、授業の流れを解説いただいています。子どもの主体性を引き出すには、教師からの言葉かけや発問も大切になってきますが、ポイントがあれば教えて下さい。

 生徒が主体的に学習を進めていくための支援者としての教師の言葉かけは、生徒との対話を促すものでなければなりません。「なぜその問いを立てたのか」「課題解決のためにあなたはどう考えたのか」「あなたの考えの良さはどこにあると思うか」「つまずきをどうすれば解決できると思うか」など、生徒の考えを引き出したり、生徒につまずきを乗り越える手だてを説明させたりするような言葉かけが大切であると思います。

―本書に収録された授業モデルには、タブレットの画像などを併用した授業も、板書画像とともにご紹介いただいています。1人1台端末の導入もあり、ICTは「当たり前」のものにもなりつつありますが、中学社会の授業の中では、どのように活かしていけばよいでしょうか。

 ICTは、社会科学習における生徒の主体的な問題解決を支援するために活用されねばなりません。例えば、タブレット端末等のICTを活用して、前の単元での学びの履歴をデジタルデータとして蓄積しておき、それらを振り返ることで本単元の目標や学習問題を設定する。問題追究の過程では、考察に必要な資料あるいは考察の方法を共有し、その妥当性を生徒相互で議論する。学習のまとめでは、考察の結果を整理したり、クラスに、あるいは広く社会に分かりやすくプレゼンテーションしたりする学習を展開できるでしょう。

―生徒に力をつけていくには、「指導と評価の一体化」も欠かせない要素です。生徒一人ひとりをしっかりと見取り、フィードバックしていくには、どのような取り組みが大切でしょうか。

 生徒が主体的に学習することを通して、単元の目標をどの程度まで達成したのかを見取るためには、ペーパーテストによる総括的評価に頼るだけではなく、ワークシートへの記述や発言、ノートやレポート、作業的活動とその成果を示した作品、発表等、多様なツールを用いて形成的評価を充実させる必要があります。また、教師による評価活動だけでなく、子どもの自己評価や相互評価を促すツールの開発も求められます。

―最後に読者の先生方へ、メッセージをお願い致します。

 新しい学習指導要領を踏まえて、思考力・判断力・表現力育成の授業への転換やアクティブ・ラーニングの推進等、その理念や理論については各種の研修や書籍等を通じて周知が進んできていると思います。今求められるのは、実践の場にある先生方が主体となり、今ここに在る学校・クラスの、ここに居る生徒たちのために自分なりの手だて(理論)を持って授業をつくり実践し、評価・改善していく継続的な取り組みであると思います。本書が、授業改善に向けた学校現場からの実践の発信を促す契機になることを願っております。

(構成:及川)
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