著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
自閉スペクトラム症を理解するために…
新潟大学教育学部教授有川 宏幸
2022/5/13 掲載
今回は有川宏幸先生に、新刊『あなたの隣で困ってはいないか? 教室の中の自閉スペクトラム症』について伺いました。

有川 宏幸ありかわ ひろゆき

新潟大学教育学部教授
1969年、千葉県生まれ。筑波大学大学院教育研究科障害児教育専攻修了。1995年、岸和田市児童福祉課で発達相談員として勤務。2004年より岸和田市立保健センターを経て、2006年10月から新潟大学教育学部助教授、2007年4月同准教授。2016年4月より現職。公認心理師。臨床発達心理士。

―「自閉スペクトラム症」について本書をまとめてくださっていますが、この障害はいったいどのような困難さがあるのでしょうか?

 診断の基準を見れば、対人コミュニケーションの困難や、様々な変化への柔軟な対応が難しいことがあげられるかと思います。ただ、これらの困難さは、まったく一人で生活していく上では、当事者にとってはあまり困難とは認識されていないのではないかと思います。社会との接点が増える中で、それが生きていく上で大きな困難へと繋がっていく。そういう意味で、障害のない人達との間の相違(ズレ)が引き起こす障害ともいえます。

―「自閉スペクトラム症」…スペクトラム、というだけに濃度差があるのかと思いますが…どのくらいの割合で生じて、私たちの近く、教室の中にあるものでしょうか。

 人口の1%といわれていますし、それ以上という報告もあり、増加しているといわれています。教員生活を続けていれば、いずれ出会う可能性がある障害といってよいかと思います。この障害は、重い知的障害を伴う人たちもいれば、非常に高い知的能力を示す人たちもいます。また、ある時期までは目立たなかったものが、周囲の子どもたちの発達的変化や、社会の変化の影響を受け、より顕在化していくこともあります。中には大人になるまで、自身の障害に気づかずにいたという話もあります。

―本書はサブタイトルに「その「相違(ズレ)」を読み解く」とありますが、相違とは?それを読み解くことで見えてくることは…?先生の本書で述べたかった要所かと思いますが…さわりだけでも?教えていただけないでしょうか。

 成人の自閉スペクトラム症の方と話していると、本人は困っていなくても、周囲から様々なことを指摘され、障害への気づきを促されてきたというケースが少なからずあります。ただ当の本人たちに話を聞くと、周囲にとっては困ることでも、彼らには「それ」をする理由がちゃんとある。つまり双方で、相違(ズレ)ている。この相違(ズレ)について、伝えられないかと思い、今回書かせてもらいました。相違(ズレ)がわかれば、相手にだけ変わることを求めるのではなく、まず私たち自身で変われることもあるのではないかと思っています。

―自閉スペクトラム症に関わる読者の先生方にメッセージをお願いします。

 本書は、私が出会った自閉スペクトラム症の人たちの話をもとに創作した、私の中の自閉スペクトラム症の「子どもたち」の語りです。そして、私の仲間でもある「先生」たちの話をもとに創作した、私の中の「先生」たちの語りです。
 でも「どこの教室の中にもある話」として感じてもらえるのではないかと思います。
 なぜなら、「自閉スペクトラム症の子どもたち」と、「先生たち」の相違(ズレ)を読み解くために、連日連夜、試行錯誤を繰り返した私自身の語りは、創作ではないからです。私の目に映った「教室の中の自閉スペクトラム症」が、皆さんに届くことを願っております。

(構成:佐藤)
好評シリーズ
コメントを投稿する

※コメント内ではHTMLのタグ等は使用できません。