あなたの隣で困ってはいないか? 教室の中の自閉スペクトラム症
その「相違(ズレ)」を読み解く

あなたの隣で困ってはいないか? 教室の中の自閉スペクトラム症その「相違(ズレ)」を読み解く

インタビュー掲載中

自閉スペクトラム症の謎が大きいのは、ただ、あなたと違うからだ

生活の中で繰り返される独特の「こだわり」、限定された反復的な行動様式、欠ける臨機応変さ、何だかしっくりこないコミュニケーション・・・濃度差があるものの、教室の中に必ず存在するこのような子どもを理解し、支え、インクルーシブな教室をつくるための作戦書。


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ISBN:
978-4-18-352925-1
ジャンル:
特別支援教育
刊行:
対象:
幼・小・中・高
仕様:
四六判 208頁
状態:
在庫あり
出荷:
2024年4月26日

CONTENTS

もくじの詳細表示

はじめに
第1章 「自閉スペクトラム症」とは
自閉スペクトラム症は謎多き障害だ
「自閉スペクトラム症」の診断基準
「自閉スペクトラム症」のコミュニケーションは何かしっくりこない
「自閉スペクトラム症」は臨機応変が難しい
スペクトラムと重篤度
第2章 教室の中の「自閉スペクトラム症」
教室の中の多様性とは?
…「教室の中の一人一人はみんな違う」と知ることだ。
特別支援教育が目指していることは?
…児童生徒の可能性を、最大限まで伸ばすことだ。
学びの場を考える時に大事なことは?
…家族一人一人が安心し、笑顔で子どもの就学を祝えることだ。
みんなと仲良く遊べることは必要か?
…難しい子どもにとって、学校はなかなか大変だ。
話を続けてよいか、どう判断する?
…その手がかりがわからなくて子どもは、困っている。
「表と裏」のある世界や、曖昧な世界とどう付き合う?
…境界線が見えない。だから難しい。
「時と場合」をどう使い分ける?
…その都度、教えてあげる方がよいだろう。
「こだわり」にはどう付き合ったらいい?
…我々の方こそ、「こだわらない」ことだ。
急な予定変更をどう受け入れたらいい?
…可能な限り減らし、できる範囲の「想定」を。
柔軟で変化のある遊びについていけないのだが?
…年齢と共に、段々と減っていくだろう。
定型発達の人とは異なることが気になってしまうが?
…どうしても、目に飛び込んでくるようだ。
教室の中は、違いで溢れているが?
…それを認めよう。そうしなければ時代の針は進まない。
感覚過敏で「うるさすぎる」と訴えるが?
…その声を遮音しているのは、我々かもしれない。
原因不明の困った行動が増えたら?
…環境・季節・体調の変化が影響しているやも。
第3章 「自閉スペクトラム症」への支援
「交流及び共同学習」で大切にしたいことは何か?
…教員同士の「交流及び共同学習」が必要だ。
学んだ「社会的スキル」が機能するためには?
…教員が、常に連携していることが必要となる。
わかりやすい教室環境はどうしたら作れる?
…構造化の考え方を学ぶことをお勧めする。
自分でできるように、支援は減らしていくべき?
…やめてはいけない。次へと引き継いでいかなければならない。
必ず使えるようにしてほしい「ことば」は?
…「ありがとう」
参考文献

はじめに

 「サボテンと、チューリップの育て方の違いもわからず、同じ肥料に、同じ水の量を与えれば、サボテンは枯れます」

 ある自閉スペクトラム症の男性と話をした時に、彼の口から出た言葉だ。確かに、そうだ。サボテンにジャンジャンと水を与えれば枯れる。一方、サボテンと同じように水をあまり与えなければ、チューリップが枯れる。どちらも花を咲かせたいのなら、それに合った育て方をするしかない。植物を育てる時の常識だ。

 多様な植物が、さりげなく育っている庭の方が好きだ。変に整った庭よりは、荒れない程度に雑然とした庭の方が落ち着く。きっと、それが自然だからだ。

 「そんな庭、手入れが大変ですよ。庭師を雇えばお金がかかりますし。だから育てやすい花だけを一角に植えます」

 確かに、そうだ。手間をかけずに済むのなら、その方がよいだろう。いつの間にか、店先には、そんな都合のよい花が並ぶようになった。こうして、どこもかしこも、似たような景色になっていった。そこに趣などない。

 「それが、私たちの過ごしてきた教室の中です」

 ドキッとした。否定のしようもない。「違い」はあっても、同じように育てれば、子どもたちはいずれ花開くと思い込んでいた。仮に違っていても、教育の力で「同じ」にできると誤解していた。それでも「違ったまま」ならば…彼らに合った庭を探してきた。そうこうしているうちに、教室の中の景色は変わった。みんなと、うまくやっていくことが苦手な子どもが、そこでどんな花を咲かせていくのか、それすら想像できなくなってしまった。

 「どんな教室だったら、よかったのですかね…?」

 恐る恐る聞いてみた。

 「人も植物と同じ。みんな違う。そのことに気づくことができる教室にしてほしかった」

 想像してみた。自閉スペクトラム症の人たちと、私たちの相ズ違レはどこにあるのか。そして、書いてみた。それを埋めるためにではなく、それに気づくために。


   著者 /有川 宏幸

著者紹介

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新潟大学教育学部教授

1969年,千葉県生まれ。筑波大学大学院教育研究科障害児教育専攻修了。1995年,岸和田市児童福祉課で発達相談員として勤務。2004年より岸和田市立保健センターを経て,2006年10月から新潟大学教育学部助教授,2007年4月同准教授。2016年4月より現職。公認心理師。臨床発達心理士。

※この情報は、本書が刊行された当時の奥付の記載内容に基づいて作成されています。
    • この商品は皆様からのご感想・ご意見を募集中です

      明治図書
    • 相違を読み解くという項目が、支援の新たなヒントを与えてくれました。
      2024/1/260代・教委
    • 教室の中のというタイトルに惹かれた。シリーズで購入したが、仕事に生かしやすかった。
      2023/3/2720代・小学校教員
    • 1つの事例をそれぞれの立場の見方で書かれており、読みやすかったです。
      2022/6/1630代・小学校教員
    • 自閉スペクトラム症について学べる一章と教室で実際にありうることに対してそれぞれの視点で書かれていたので読みやすいです。
      2022/6/1130代・小学校教員
    • 特別支援教育が教育現場で広く浸透している。だから、自閉スペクトラム症等の障害についての理解も進んでいる。
      しかし、だからと言って自閉スペクトラム症のあの子たちが暮らしやすい学校や社会になっているわけではない。それがタイトルにもあるようにズレがポイントのように思う。このズレをまずは意識しないといけないのだろうか。
      教員にとって必読の一冊であることは間違いないだろう。
      2022/6/1U-Tchallenge
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