著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
社会科の指導場面で生きて働くスキルを学び磨く
鳴門教育大学理事・副学長梅津 正美
2022/4/18 掲載
 今回は梅津正美先生に、新刊『中学校社会 指導スキル大全』について伺いました。

梅津 正美うめづ まさみ

鳴門教育大学理事・副学長。博士(教育学)[広島大学]。広島大学大学院教育学研究科教科教育学専攻博士課程前期修了。島根県立高等学校教諭、広島大学附属福山中・高等学校教諭、鳴門教育大学大学院学校教育研究科准教授、教授を経て、現職。主な研究領域は、社会科授業構成論、米国の歴史カリキュラム編成論など。
著書は『歴史教育内容改革研究』(単著、風間書房)、『協働・対話による社会科授業の創造』(単編著、東信堂)、『評価事例&テスト問題例が満載!中学校社会新3観点の学習評価完全ガイドブック』『新3観点の学習評価を位置づけた中学校歴史授業プラン』(単編著、明治図書)など。

―本書の読み方・使い方について教えてください。

 本書で示す70の指導スキルは、単に指導のノウハウを示しているのではなく、社会科教師としての力量形成のための課題群を示していると捉えてください。読者の先生方が、それぞれのキャリアステージに応じて「今、自分に必要だと考えられる指導スキル」を引き出し課題化して、「自分ならばどうする」という問いをもって本書執筆者の提案を読み吟味していく中で、社会科の指導場面で生きて働く自分なりの指導スキルを培っていただきたいと思います。

―子どもの学びの主体化・多様化・個別化に応じるために、指導スキルをブラッシュアップしていくには、どのようなことが大切でしょうか。

 今あらためて「指導」の意味とスタイルを問い直す必要があるでしょう。すなわち、教師が主導し効率的に子どもに知識を教授し理解を促すことが「指導」であるとの捉え方の問い直しです。教師が個々の子どもの背景や学びの状況を踏まえ、相互の対話を通じて子どもにとっての個別最適な学びをデザインしていくような「指導」のスタイルへの転換が求められていると思います。

―中学校社会科の指導において、小学校の社会科学習と円滑に接続するために、どのようなアプローチが有効でしょうか。

 特に中1生について、社会科に対する興味・関心の傾向や小学校における学習の内容や方法に関する情報を、アンケート調査等を活用して適切につかんでおくことが大切です。教師の視点からすると、社会科の指導は、小学校では学級担任制で、中学校では教科担任制で行われます。自ずと小・中学校教師間で教科観や目標観、指導観に違いが生まれます。違いがあることを前提に、小中相互の授業研究を実施するなど連携体制を構築し、社会科指導のあり方について対話を重ねることも有効ではないでしょうか。

―「見方・考え方」を働かせた授業づくりにおいて、大切な指導スキルは何でしょうか。

 子どもが社会的事象の意味・意義・特色や相互の関連を考察したり、社会に見られる課題の解決を構想したりする授業づくりのために、教師には、「見方・考え方」を、
(1)単元の学習問題の設定に活かす
(2)学習内容の構造化に活かす
(3)子どもの思考・判断過程として学習過程を組むために活かす
スキルが求められます。また、学習の主体は子どもですから、
(4)子どもに自らが用いている「見方・考え方」を常に意識させ言葉で表現させることを促す
指導スキルも大切になるでしょう。

―ICTの効果的な活用は、中学校社会科の授業づくりではどのような可能性があるでしょうか。

 タブレット端末と学習支援アプリの活用は、子どもと教師による協働的・対話的な学習の展開を通じて、子どもの深い学びを実現する有力な手段になると考えます。例えば、資料・教材の提示と活用が一層豊かになると期待できます。写真や音声・動画などの貼り付け、資料の拡大縮小が容易にできますし、資料への書き込み機能や付箋機能を活用すれば、同期・双方向での意見交換が可能になります。また、教師は、モニタリング機能を通じて子どもの思考のプロセスや学習の進捗をリアルタイムで把握しやすくなります。

―最後に読者の先生方へ、メッセージをお願いいたします。

 今日、学校現場が抱える課題、例えば教師が授業の準備や研修等の職能開発に割く時間を十分に取れないことや、教員構成において研修推進の柱となるべき40代を中心とするミドルリーダー層の比率が少ないことなどについては、編者が身近でよく見聞きするところです。こうした現状なればこそ、本書が授業改善と指導スキルの向上を目指す先生方にとってのひとつの支え手になれますことを願っております。

(構成:及川)

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