- 著者インタビュー
- 学級経営
「笑い」です。いつもふざけたことを考えています。生産性がなくたっていいんです。とにかく、みんなが楽しくなるようなことを考えます。
「笑い」というのは、とても大切なことだと思っています。実は、真面目なことや真剣なことをしても、意外と人を結びつけません。学生のころの友だちと会って話す思い出話は、一生懸命やったことではなく、くだらないことの話ばかりです。でも、それが大事なのです。くだらないことをして、みんなで笑うことで、人と人はつながっているのです。
また、「笑い」というのは、相手意識をもたなければ生まれません。同じことをしても、おもしろいときとおもしろくないときがあります。そこにいる人、その場の雰囲気、そういうことを感じなければ、おもしろいことはできません。だから、「笑い」を大切にするということは、実は、相手を思いやることにつながっていくのだと考えています。
子どもには、「おもしろいことを考えることが一番大切で、一番難しいことだ」と言っています。「一生懸命、くだらないことを考える」ということが、私の学級経営の核になると思っています。
自分では、自分のことを豪快だとは思ってはいませんが、「もしかすると、他の先生とは違う方法を取っていることもあるかな」とは思います。また、「踏み込んだ指導」に見えるかもしれませんが、これも自分としては踏み込んだ指導だとは思っていません(本当に踏み込んだ指導は、本には書けません(笑))。
ある指導が「踏み込んでいる」のか「踏み込んでいない」のかは、時と場合によると思います。よく「敬語を使いましょう」とか「〇〇さんと呼びましょう」とか、指導方法が形式として決まっている場合があります。しかし、その形式に則っていれば問題が起きないかというと、そうではありません。
そして、子どもとの関係も重要です。どんなに敬語を指導したとしても、子どもとの関係が悪ければ、子どもは指導を聞き入れようとはしないでしょう。私が子どもからどれくらい信用されているかはわかりませんが、「子どもに何か指導するのであれば、『この人の言うことは聞いてもいいかな』と思わせる努力はしよう」とは思っています。そのためには、「自分だったら、こんな人の意見は聞くかな」と思える人になろうと努力することです。
そうなんです。本当に私は繊細なのです(だれも言ってくれないので、自分で言うようにしています)。
子どもに対しては、ちょっとした仕草とか、言葉づかいとか、そういうことに気を配るようにしています。変化があったときはよく見るようにしていますし、声をかけるようにはします(わざとらしくならないように)。
具体的に「こうなったら、こうだ」とは言いきれないのですが、やっぱり毎日見ていたら少し気になることってあります。でも、すぐに問い質したり、指導したりはしません。少し間を置きます。もちろん、子どもから相談されたら話は聞きますが、そのときも、指導するかどうかは子どもの意見を尊重します。
問題の多くは人間関係です。教師は、どうしても子ども同士の関係をよくしたいと考えるあまり、すぐに介入してしまいます。でも、子どもからすれば、迷惑なことも多いと思います。クラスに35人もいれば、仲のいい人もいれば、そうでない人もいて当たり前です。それなのに、教師がすべての子どもを仲良しにしようとすれば、正直「ウザい」のです。人間関係は時が解決をすることもあります。だから、あまり焦らずに見守ってあげる忍耐力が必要だと思います。要するに、距離感を大切にすることなのだと思うのです。ただし、放っておくのではなく、ちゃんと話は聞いたうえで「じゃあ、どうする?」と子どもと一緒に解決方法を決めていくのがよいと思います。
保護者に対しては、あまり気を配っていることはありません。まだまだ私の方が若輩者であることの方が多いですから。ただ、「保護者は一緒に子どもの成長を応援する協力者だ」と意識はしています。だから、こちらからお願い事をすることもありますし、保護者からお願いされたことは、できるだけ応えようとします。「保護者に言われたことをやるのは、ナメられる」みたいな威厳の保ち方なんて必要ありません。
また、子どもとの関係を築くうえで大切にしている「笑い」というのは、保護者に対しても大切だと思います。保護者とのかかわりも、なるべく楽しいものにしたいと考えています。
教師生活に限ったことではありませんが、若いころと今とでどちらが楽しいか、と言われたら、絶対に「今」と答えます。できることは増えていくし、自由度も増えます。小銭も持っています。また、だんだん失うものがなくなってきます。「毎日楽しく過ごせたら、それで十分」と思えるようになっていきます。失敗しても気になりません。むしろ「今度、この失敗を話したら、笑いになるな」とか思えるようになります。
ですから、今30代の先生、これから30代を迎える先生には、これぐらいの気持ちで、とにかく教師生活を楽しんでいただきたいと思います。
ちなみに、40代になると、さらにいい加減さが増してきて、人生が笑顔であふれます。つまらないことを言ってみんなが笑わなくても、なぜか自分一人だけ笑えるようになります(笑)