著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
指導力に不安のある先生へ――国語科教育学の歴史から具体的な授業づくりまで、これ一冊でしっかりサポート!
青山学院大学准教授長谷川 祥子
2018/6/19 掲載
 今回は長谷川祥子先生に、新刊『はじめて学ぶ人のための国語科教育学概説 小学校』について伺いました。

長谷川 祥子はせがわ さちこ

1987年埼玉大学教育学部卒業,2006年早稲田大学大学院教育学研究科博士後期課程満期修了。1987年都立足立ろう学校教諭,1991年北区立堀船中学校教諭,1999年新宿区立牛込第二中学校教諭,2006年東京都教育委員会指導主事,2011年豊島区立豊成小学校副校長,2013年北海道教育大学,2017年より青山学院大学勤務。主な著書に、『小学校国語科 論理的文章を書く力を育てる書き方指導』『中学校新国語科 系統的指導で論理的思考力&表現力を鍛える授業アイデア24』『論理的思考力を育てる授業の開発 中学校編』(以上単著)、『検定外・力がつく日本言語技術教科書』全12巻(以上共著、いずれも明治図書)などがある。

―書名には、「はじめて学ぶ人のための」という言葉がついています。本書のねらいを教えてください。

 新任から5年目くらいまでの若手の小学校の先生方、特に国語を専門としていない先生方にお読みいただき、日々の実践に生かしていただきたいと思っています。研究会などで若手の先生に会うと、国語の授業をどうしたらいいのか分からない、苦手だという話をよく聞きます。この本には、クラスで一斉に授業をする場面を想定して、その方法をできるだけ具体的に書きました。国語の授業が上手にできるとともに、児童に学力が確実につきます。

―「はじめて学ぶ人」にも分かりやすいよう、本書には実際の指導案やプリント教材などが多数収録されています。活用の際に気をつけることはなんでしょうか。

 学習指導案やプリント教材は、まず、どんどん、使ってみてください。プリント教材は拡大コピーをして、児童に配布し、本書に書いてある通りに行ってみてください。学習指導案を活用いただく際に気をつけてほしいことは、「セリフを自分で変えたり、付け加えたりしないで、そのまま言うこと」です。セリフ(発問・指示)一つ一つに理論的な背景がありますが、小難しい話より、実践してみてください。そして、授業後の子どもの変化をぜひ教えてください。

―最終章には、「学校教師の腕の磨き方」と題して、授業づくりのみならず教師としての心構えが記されています。特に若い先生が実践すべきことがあれば教えてください。

 「教師5年目」が大きな節目といわれています。5年間の取り組みが、今後の教員生活そのものを決めます。この期間に、教育に関する書籍をできるだけ多く、自分で購入して読み、教材研究を日々行い、長期休業のときには研究会に自腹で行き、自らの指導に磨きをかけてください。優れた先生になるか、ダメ教師になるか、この5年が決め手となります。授業力を鍛える最善の方法は、研究授業を見せ合うことです。

―少し本書の内容からは離れますが、国語科の新しい学習指導要領において先生がもっとも注目されていることはなんですか。また、指導はどのように変わるとお考えですか。

 もっとも注目しているのは、論理的思考力の育成と、「情報の扱い方」です。論理的文章(説明文、説明的な文章)を読んだり、書いたりする授業が一層重視されるでしょう。
 話が変わりますが、新しい高等学校学習指導要領では「現代の国語」(2単位)と「言語文化」(2単位)の2科目が必修です(これまでの必修は「国語総合」4単位でした)。「現代の国語」の「読むこと」の教材は「……論理的な文章及び実用的な文章とすること」とはっきり記されました。文学の授業は「言語文化」で教えます。文学作品を詳しく解釈していた高校の国語科の授業が変容します。そうすると、高校入試問題も変わり、その結果、小学校・中学校の国語の授業がガラッと変わるでしょう。大いに期待しています。

―最後に、読者の先生方に向けてメッセージをお願いします!

 小学校の若い先生方へ、国語の授業のおもしろさは、発問をつくることです。算数や社会、理科などの教科で、発問をつくる機会はそう多くありません。発問をつくるには、確かな教え方に基づく、国語の教材研究が必要です。自分がつくった発問で、子どもが「わかった!先生、できたよ」と言い、成長が実感できたときほど、うれしいことはありません。ぜひ、本書を読み、国語の授業づくりを楽しんでください。授業が変われば、子どもも変わります。

(構成:林)
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