- 著者インタビュー
- 算数・数学
それは、「授業」を通して子どもの心を育てているからです。様々な知識やスキルを子どもに身に付けさせることはもちろん大切なことです。しかし、同時に、子どもたちがその学びの過程で「常に自分の思いや考えをもつこと」「それを互いに尊重し合うこと」「他者の考えに耳を傾け、その価値を感じること」が大切だと考えています。自分と他者とのかかわりを大切にして学ぶ「豊かな心」を育む授業、それが「対話」のある授業だと私は考えています。
授業の中で子どもが自ら問題や他者に働きかけたり、思考錯誤したりすることができる「時間」「空間」、それが本書で言う「スキ間」です。この「スキ間」の時間にこそ、子どもが自分の意志で考え、判断し、語り合う本物の「対話」が生まれると考えています。システマティックな授業や、たくさんのルールで固められた授業、教師の期待に応えなければならない無言の圧力がある授業では、子どもの本音は出てきません。子どもの本音を引き出せない授業に、本物の「対話」など生まれないのです。
アイデア1の「解けない問題にして提示する」と、アイデア17の「話を『黙って最後まで』聞かせない」でしょうか。教師も子どもも、「算数とはこういうものだ」「授業とは、こうしなければならない」と思い込んでいることは意外に多いものです。きっと、これらの手立てではそうした概念が大きく覆されるのではないでしょうか。教室の雰囲気が大きく変わり、「考えるプロセス」を大切にした学びの価値が、どの子にも見えてくると思います。
大切なことは、授業を、子どもを「型」にはめないことです。授業が想定していた路線から外れたとしても、それを楽しむ教師の心、子どもに与える時間や場のゆとりをもってほしいと思います。また、教師が絶対的な価値を押し付ける「神様」のような存在では、子どもは自分の思いをなかなか口に出そうとはしません。子どもが「自由に思う、考える」ことを認め、価値付け、「対話」のあふれる授業を創っていきましょう。
この書籍には、私が大切にしている子ども観や授業観がたくさん詰め込まれています。手にとっていただいた全国の先生方にとって、明日からの授業を変えるきっかけとして、少しでも役立つものとなれば幸いです。ぜひ、私たち教師が評価されるための授業ではなく、本当の意味で、子どもの心と力を育む授業を、これからも一緒に創りあげていきましょう。