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授業には、うまい下手があります。
では、授業がうまくなるには時間がかかるのでしょうか。
そんなことはありません。
授業にうまい下手があるのは、授業のやり方に、技術・方法があるからです。
その技術・方法を知り、明日の授業に取り入れることで、授業はうまくなります。
逆にいうと、技術・方法を知らなければ、5年経とうが10年経とうが、授業は下手なままです。
本書では、そのような技術・方法を、「50の技」として詳しく紹介しています。
「心理的な盲点」とは、見えているけれど認識できない物事を意味します。
これは、植物の観察を例に考えるとよくわかります。
時間をかけて継続的に植物を観察させても、漠然と眺めているだけでは何も気づきは生まれません。
そこで、「葉のつき方はどうかな?」と尋ねます。
すると、日光が当たりやすいように葉が互い違いについていることに気がつきます。
言われてやっと、その情報に気づき、頭が認識してくれるわけです。
子どもが自然には気づけないようなことに気づかせる授業。
それこそが、知的な楽しさがある授業です。
できるだけ質の高い体験を通すことが、実感を伴った理解を促すうえで大切になります。
では、質の高い体験をさせるにはどうすればよいのでしょうか。
実は、ほんのちょっとした工夫でかまわないのです。
例えば、「繰り返し体験させること」でもかまいません。
普段1回しか実験しないことを、複数回させてみるのです。
あるいは、1回は教師が指定した方法でさせて、残り時間は子どもが考えた方法でさせてもよいでしょう。
たったこれだけの工夫で、子どもたちは実に様々な気づきを得ます。
1回の体験では得られなかった気づきが出てくるというわけです。
臨機応変に授業を展開するとは、子どもの反応に合わせてその場で授業展開を変えることを意味します。
ただし、臨機応変に授業をすることはとても難しいものです。
臨機応変に授業をするには、多くの授業技術・方法を身につけ、それを使いこなせるまで磨かなくてはならないからです。
ですから、まずは技術・方法を知り、それを強く意識して日々の授業で使うという「意図的な研鑽」が必要になります。
そのうえで、子どもの反応を見ながら、子どもにとって最も深い学びになる授業を展開することが必要になります。
文書で記録を残す場合、後で役に立つ記録にしなくては意味がありません。
そのためのポイントが、以下の3点です。
1 発問・指示・説明を明記する。
2 発問・指示の後の子どもの反応を書く。
3 子どもの実物資料をつけ加える。
平たく言えば、後から読み返して、映像が浮かぶようにすればよいのです。
この記録は、次に同じ単元を指導するときの参考になります。
記録を確認し、その記録よりもっとよい授業を新しく考えるようにするのです。
若い頃、授業がうまい先生と下手な先生がいることに不思議さを覚えていました。
ある程度経験を積めば、誰だって授業はうまくなるのではないかと思っていたからです。
しかし、これは大きな間違いでした。
授業は、意図的な研鑽なしには絶対にうまくなりません。
それがなければ、何年経とうと下手なままです。
反対に、20代前半でも授業がうまい人がいます。
それは、意図的な研鑽を積んできた人たちです。
授業がうまくなるための第一歩は、「知ること」です。
本書の役割は、まさにそこにあります。