- 著者インタビュー
- 授業全般
内野先生:当時、本校は生徒指導上の問題が長期にわたり改善できず、困難な状況にありました。
生徒の自尊感情や自己肯定感を高めるため、部活動を活発にすることによって授業が改善できるであろう、という期待をもちました。しかし、一日に6時間ある50分授業に意欲的に取り組む動機の高まりにはつながりませんでした。やはり、わかる授業を行うことに正面から向き合わなければならなかったのです。
そこで、生徒全員の学びを保証する体制をつくらなければ、根本的な解決にはならない、という思いで覚悟を決めました。
土屋先生:「コの字型机配置」はカタカナの「コ」の字のように机を配置し、生徒たちが自然と行う対話や会話を重視する学習形態です。共に学んでいる仲間の顔が見えることで、教室が和やかで落ち着いた雰囲気になります。
メリットはいくつかありますが、その形態ゆえに会話がしやすい、仲間の考えを聞きやすい、自分の意見を言いやすい、といったことがあげられます。
また、教師→生徒の一方向のやりとりではなく、教師→生徒→全体などの拡がりを意図的につくりやすいという点もあげられます。
土屋先生:一番の特徴は、学校全体の合言葉でもある「ねぇ、ここどうするの?」「わからないから、教えて」が常に飛び交うことです。
わかる生徒が「教えてあげる」のではなく、わからない生徒が「聞く」ということをルールとしています。毎時間の授業では必ず4人グループ学習を取り入れ、生徒が学びたくなる題材を提供し、前述の「コの字型机配置」により全体への拡がりをもたせています。
また、「グループで答えや考えを1つにまとめる」ことはさせず、4人グループでの活動を通して自分の考えをどう深めさせていくか、ということに重点を置いています。
内野先生:それまで、授業についていけない生徒は、学習内容がわからないことの辛さや、授業から置いて行かれる疎外感などに苛まれ、自尊感情をないがしろにされていたと言えるかもしれません。
この取り組みを始めて、校則違反などを行っている生徒たちが教室に戻り「わからないから教えろよ」と4人グループ内で語ったことは象徴的な出来事で、生徒のだれもが「わかりたい」という気持ちをもっていることを再認識しました。生徒が授業の中で「わからないから、教えて」と言えることが、どれほど意味のあることかを教師が実感したのです。
内野先生:本校に異動で着任した教員は、前任校まではコの字型ではない机配置で授業を行ってきています。一般的には、縦6列の机配置が多いと思います。各教師はそれぞれ独自の工夫を重ね、授業の展開を工夫してきているので、それを否定的にはとらえません。
しかし、本書に示した授業の展開スタイルには、そのプロセスに教科を超えた普遍性があるため、生徒は反応よくこのスタイルに順応し、教師も自己のもつ指導スタイルとは別に、校内研究等を通じて理解を得ることによって実践に移せるのだと思います。
導入を検討される学校におかれましては、「よし、やってみよう!」と、腹をくくることが第一のステップだと思います。