著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
人生のスタートは、のびやかな園生活で
白鴎大学名誉教授荒井 洌
2015/7/13 掲載
 今回は荒井 洌先生に、新刊『保育者のための50のキーワード のびのび園生活への提言』について伺いました。

荒井 洌あらい きよし

1939年 福島県郡山市生まれ
現在、白鷗大学名誉教授、NPO法人ほいくゼミナール・21 リーダー
〈著書〉『保育者のための50のキーワード』『シリーズ・保育園生活のデザイン』(全12巻)以上明治図書、『倉橋惣三 保育へのロマン』『園をみどりのオアシスへ』『保育に生きる珠玉のことば』フレーベル館、『スウェーデン 水辺の館への旅』『エレン・ケイ「児童の世紀」より ことばの花びら』以上冨山房インターナショナル ほか

☆白鷗大学在職中に、附属幼稚園の園長、および白鷗大学おもちゃライブラリーの館長を、それぞれ10年あまり勤めました。私の保育の勉強にとって、貴重な体験となりました。
☆スウェーデンなど北欧諸国にしばしば出かけ、北欧の保育から多くのことを学びました。言わば、比較保育論を地で行くことができました。
☆NPOほいくゼミナール・21では、園を運営する全国各地のメンバーとしばしばゼミナールを開き、勉強する喜びを共にしています。

―本書のコンセプトにもなっている「のびのび園生活」ですが、「のびのび」という表現には、どのような意味を込めているのでしょうか。

 これからスタートする人生をのびやかに生きていってほしい子どもたちへの何よりのプレゼントは、のびのびとした園生活ではないか、と私は考えます。
 スケジュールや内容を細かすぎるほどに設定したり、子どもの行為を過剰なまでに指示する姿勢から抜け出していかねば……。
 のびのびとした園の雰囲気は、まずは保育者同士が互いの持ち味を尊重しあい、お仕事をエンジョイすることに尽きると思います。

―本書は、以前刊行された『シリーズ・保育園生活のデザイン』(全12巻)の内容から50のキーワードを選び出したとのことですが、どのような視点でキーワードを選ばれたのでしょうか。

 『シリーズ・保育園生活のデザイン』では、各巻のタイトルに沿って、保育のありようをより魅力的にしていくためのキーワードを盛り込んでいきました。
 そして今回、戦後のスタートから70年ほどに及ぶ保育の時代を経て、これからも押さえていくべきこと、より強調すべきこと、新たに考えるべきことなどを、全12巻で示したキーワードを振り返りながら、より深く考え、新たな気持ちで提示することにしました。

―本書には、北欧の魅力的な園の写真もたくさん収録されていますね。北欧の保育から、ぜひ日本の保育界が学び取ってほしいことを示してください。

 まずは、園庭は自然の地形そのものが生かされています。土地の起伏、木立ち、草原、などなど。子どもたちは自然空間の中で、のびのびと動き回っています。
 園舎は、教室スタイルではなく、日常生活空間としてのデザインが生かされています。
 一斉保育的なニュアンスが薄く、グルーピングも異年齢混合が基本です。
 保護者に対してはとてもオープンで、私は“子育てサロン”として紹介してきました。

―荒井先生がリーダーとなっている団体「NPOほいくゼミナール・21」について、どのような活動をなさっているのか教えてください。

 幼児保育の園を経営している園長やスタッフのみなさん、それに私たちの勉強に関心をお持ちの方々による全国規模での勉強会です。
 「ゼミナール」と称しているのは、講演中心の“研修”ではなく、互いに研鑽しあうという意味からです。テーマもユニークです。
 毎年、各地でゼミナールを行い、加えて改良を重ねた園を見学するのも楽しみです。
 ゼミナールを終えてのお別れの言葉は、いつも“See you again!”です。

―最後に、全国の保育者の方々へ向けてメッセージをお願いします。

 新しい保育の時代になって70年。つまり、日本がヒューマニズムを基軸とする時代になってからと、歴史を共にしています。
 思うのですが、人間が愛しあい、新しい生命に恵まれ、健やかに育っていく。そのための心身の頼もしい支えとなる力が、乳幼児保育の営みです。まさに、文化としての営為です。
 明るい保育において欠かすことのできないポイント、それは園生活がのびやかであること。そのためには固い殻は取り払い、すてきなセンスは大いに吸収しましょう。本書がそのための一助となれば、何よりのことです。

(構成:木村)

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