著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
必要な生きる力をつける協同学習のエッセンスを実力者たちが紹介
上越教育大学教職大学院准教授赤坂 真二
2014/6/18 掲載
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  • 教師力・仕事術
 今回は赤坂真二先生に、「THE 教師力」シリーズの最新刊として発刊された『THE 協同学習』について伺いました。

赤坂 真二あかさか しんじ

1965年、新潟県生まれ。上越教育大学教職大学院准教授。学校心理士。「現場の教師を元気にしたい」と願い教師仲間と全国「学級づくり改革」セミナーを立ち上げ、年間数十回の講演を実施して全国行脚。19年間の小学校勤務では、アドラー心理学的アプローチの学級経営に取り組み、子どものやる気と自信を高める学級づくりについて実証的な研究を進めてきた。そのユニークな取り組みは、NHK新潟「きらっと新潟」(2007年3月)で特集が組まれたほどである。2008年4月から、より多くの子どもたちがやる気と元気を持てるようにと、情熱と意欲あふれる教員を育てるために現職に就任する。主な著書に『スペシャリスト直伝! 学級を最高のチームにする極意』『赤坂真二―エピソードで語る教師力の極意』『スペシャリスト直伝!学級づくり成功の極意』『担任がしなければならない学級づくりの仕事12か月 小学校高学年』 (以上、明治図書)などがある。

―今回の書籍は、『THE 教師力』シリーズの1冊として、テーマは「協同学習」です。まずこの書籍の“ねらい”や、そこに流れる先生の想いについて、教えて下さい。

 実社会は一人でやれる仕事はほとんどないのが現実です。しかし、多くの教室で展開される一斉指導は、教師の意図にかかわらず「人に頼ってはいけない」「人と協力してはいけない」ということを教えてしまうのです。学習した利益は最終的には、個人が受け取るべきです。しかし、その過程では他者と協力しながら学習課題を解決することで一斉指導では学べない学力を身に付けることができるのです。

―まず、「協同学習」には、どのような効果があるのでしょうか。

 よく言われるのが次の2つです。@学業の達成がよくなる。A人間関係がよくなる。一斉指導に比べて学習にかかわっている時間が長くなりますから成績がよくなります。また、協力して学習課題を解きますから協力的な人間関係がつくられます。そして、もう一つあります。B自尊感情が高まります。人は、良好な関係性の中で達成を実現することで自分を認めていけるようになります。

―交流型学習については、「協同的な学び」とするために、前提としての「場づくり」と「価値のインストラクション」が重要と言われます。この点について教えて下さい。

 ただ交流させることが協同になりません。協同する意味、つまり価値を伝え、なぜ協同するのかをしっかり教えます。協同することの大切さを伝えながら、実際に協同する場面が一単位時間に数分だったら、上記で指摘した@〜Bを十分に学ぶことは難しいでしょう。従って協同するための場を設定します。各執筆者がそこのところの具体例を述べています。

―協同学習はその高い効果から多く取り入れられるようになってきましたが、その中で、「かかわりの形骸化」や、持っていた意欲を逆に減退させてしまうケースがあるといったリスクも指摘されるようになってきました。そういったリスクを軽減しうまく効果を引き出すには何が大切でしょうか?

 形骸化のリスクを軽減するには、やはり、集団づくりが必要になってきます。教師と子どもの信頼関係や子ども同士の信頼関係にかかわる部分です。ですから、協同学習を単独でやるのでなく、『THE チームビルディング』に示したような、学級のチーム化を同時進行で行うのです。チームビルディングと協同学習は、ときには相補的にときには相乗作用をもららしながら、学級集団を課題解決集団に育てていくことでしょう。

―最後に、読者の先生方へメッセージをお願い致します。

 協同学習で、協力しながら成果を挙げること、そして、仲間を支援しながら達成することを学んだ子どもたち、すてきだと思いませんか。自分の同僚にそういう人がいてほしいと思いませんか。そんな人たちに増えてほしいと思いませんか。協同学習は単なる学力を上げるための方途ではなく、よりよい市民育成のために実に有効な、考え方と技術なのです。

(構成:及川)

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