- はじめに
- 第1章 恩師の幻灯
- 一 教師になる理由
- 二 オレンジ色の教師との出会い
- 三 子どもの心に残るもの
- 四 自分たちの生活は自分たちでつくる
- 五 あたたかさと厳しさの狭間で
- 六 橋本学級で学んだこと
- 第2章 新採用の幻灯
- 一 教壇に立つ
- 二 初めての学級に何ができたのか
- 第3章 道徳教師の幻灯
- 一 道徳の授業への疑いと戸惑い
- 二 取り得る行為を検討する授業へ
- 三 「時計係」の授業
- 四 ノンフィクションとシンプルさと即効性
- 第4章 特活教師の幻灯
- 一 自分らしく理想に向かって歩む
- 二 否定され続けてつかむもの
- 三 まずは教師主役から
- 第5章 勇気づける教師の幻灯
- 一 アドラー心理学との出会い
- 二 勇気づけを学ぶ
- 三 他者の視点で自分の実践を見つめる
- 第6章 出会いの幻灯
- 一 ライバルの力
- 二 本気の仕事を積み重ねる
- 三 同志を持つ
- 四 「ダメ出し」してくれる人がそばにいるか
- おわりに
はじめに
教師修行は順調ですか。
本書を手に取られたということは、日々、ご自身の力を高めるために努力をしている方だと思います。
私も勉強したいと思ったとき、力を付けたいと思ったとき、悩んだとき、迷ったとき、本を手にしました。師匠からは、「気になった本は取り敢えず買う」と教えられたので、本屋さんで気になったタイトルの本を抱きかかえるようにしてレジに持っていきました。
多くの教育書を読みました。しかし、それらがうまくいったかというとそうはいかないことが多かったのも事実です。私が主に求めていたものは、「明日、すぐ教室で使える」技術やネタにかかわるものだったのです。これらがよくないと言っているのではありません。技術やネタは大事です。車を運転するには気合いや思いだけではダメです。技術を学ばねばなりません。しかし、技術やネタにはそれが生み出された背景や文脈があります。私が手にした書籍の著者の多くは、たくさんの勉強や強い思いからその技術やネタを開発したのです。技術やネタに込められた研究の蓄積やこだわりを理解することなくして、その技術やネタを本当に使いこなすことは難しいわけです。
幾多の失敗から、あることに気付きました。それは、優れた技術やネタは氷山に例えれば、海面から出ている部分に過ぎず、その本質は水面下、つまり見えない部分にあるということです。そこを理解しないとそれらを主体的に使うことはできないのではないでしょうか。だから、その著者の書籍を何冊も読んだり、実際にお会いしてその実践が生まれた背景を知ると、その技術やネタに注目した意図が分かり、投げかける言葉に方向性が出てきてうまくいく確率が高まるのです。その実践を本当に理解するためには、開発者の人生史(ライフヒストリー)と言ったら大げさかもしれませんが、実践の生まれた背景や意図を知る必要があるのではないかと考えるようになりました。
そして、もう一つ重要なことに気付くのです。ネタや技術を学ぶことは大事なことだが、そうしたものを開発できる教師がどのように学んでそれらを生み出す力を付けたかを知る必要がある、ということです。ネタや技術をどんなに真似ても、教育活動は膨大で多様です。全てを網羅することはできません。そうやって部分部分のネタを集めて実践しても、子どもにジャンクフードを食べさせているようなもので、栄養として蓄積しないのです。達人たちは、バラバラな断片的な技術をやたらと持っているというよりも、それらが集まって一つの大きな世界観をつくっているのです。ある方向に向かって、多様な技術やネタを使っている。技術やネタを木の枝や葉だとすれば、それらを支える幹や根が必要なのです。幹や根があって、初めて枝や葉は、一つの木になります。つまり、子どもの力量を形成するわけです。
技術論だけでなく、それを支える考え方を学ぶ必要があったわけです。そうは言うものの、考え方をできあがった理論として学ぶとそれは、やはり、技術論を学ぶのと同じように氷山の一角を知るのと何ら変わりありません。考え方が獲得される過程を共有することが大事です。しかし、先人や遠くにいる方のそれらをライブで学ぶことはできません。本シリーズは、そうした新しい教師修行への挑戦の試みだと思っています。本書は、読んだ内容が、「すぐ明日使える」といった性格のものではありません。しかし、
明日の行動や判断に何らかの勇気を与える
ことになるのではないかと期待しています。
次から示されるのは私の拙い体験談です。未熟な教師が悪あがきしている様子に、ご自分を映し出してふり返っていただければ幸いです。若い先生には、これからを歩む一つの目印になればと思います。また、ベテランの先生には、ご自身の姿を写す鏡にしていただければと思います。自分に向き合うことが、明日を歩む力となることでしょう。
本書は、全部で六章から構成されます。「恩師の幻灯」「新採用の幻灯」「道徳教師の幻灯」「特活教師の幻灯」「勇気づける教師の幻灯」「出会いの幻灯」です。学ぶときは常にそばに誰かがいました。その誰かが直接、ほめて叱って励まして導いてくれたときもあれば、あの人には負けたくない、あの人のようになりたい、というようにその人の存在そのものが学ぶ原動力になったこともありました。人は一人では成長できません。出会いのなかで学ぶ様子を六つの場面に分けて描写しました。
それぞれの場面に、幻灯という名を付けました。幻灯とは、昔のスライドです。宮沢賢治の「やまなし」の冒頭に出てくるあれです。フィルムに写した像などを一枚ずつ強い光で照らし、前方に置いた凸レンズで拡大し、スクリーンへ映して見せるものです。子どもの頃は、雑誌の付録で付いてきた紙製の幻灯機でよく遊びました。押し入れのなかで、ぼやけた動かない像を見ながら、想像をふくらませました。ここに映し出した六枚の幻灯は、ハッキリしないものかもしれませんが、曖昧な分、皆さんの想像力を刺激するかもしれません。
それでは幻灯会の始まりです。
/赤坂 真二
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- 明治図書
- とても分かりやすく実践しやすいです。2017/5/27あっつん
- 赤坂先生の現在のご活躍されている姿になるまでの様々な経験や考えてこられたことがよくわかりました。2017/5/3あっつん
- 子供の力をどう伸ばすか、それが教師としてのやりがいであり、難しさでもあると感じた。2017/3/1530代・小学校管理職
- 赤坂先生の本は、実践的で即使えます。2016/3/2930代・小学校教員
- 学級経営の芯を一から学べました。とても参考になりました。2016/3/630代・小学校教員