著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
「系統的」で「実効性」のある『初任者研修』を提案します!
北海道北広島市立大曲東小学校教諭山田 洋一
2014/5/22 掲載
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  • 教職課程・教員研修
 今回は山田洋一先生に、新刊『小学校初任者研修プログラム 教師力を育てるトレーニング講座30』について伺いました。

山田 洋一やまだ よういち

 1969年、北海道札幌市生まれ。北海道教育大学旭川校卒業。2年間私立幼稚園に勤務した後、公立小学校の教師になる。教育研修サークル・北の教育文化フェスティバル代表。思想・信条にとらわれず、現場で役立つこと、教育人生を深めるものからは何でも学んできた。
 主な著書に、『山田洋一―エピソードで語る教師力の極意』『THE 新採用教員〜小学校教師編〜』『教師力トレーニング・若手編 毎日の仕事を劇的に変える31の力』(明治図書)、『発問・説明・指示を超える対話術』(さくら社)、『子どもとつながる教師・子どもをつなげる教師〜好かれる教師のワザ&コツ53』(黎明書房)、『必ず知っておきたい!若い教師のための職員室ルール』(学陽書房)などがある。

―先生がこれまで初任者指導員をされてきた中で、現在の初任者研修制度について感じている問題を簡単にご紹介ください。

 まず、以前から言われていることですが、初任者を現場から離して研修させるという点が問題です。初任者の96パーセントは入職すぐに学級担任を任せられます。それでなくても、不慣れな担任業務。それなのに勤務校にいない。これではうまく行くわけがありません。あわせて、必要感のある研修内容になっていない。せっかく「現場」を空けてくるのに、多くの場合「あすの学級経営」「あすの授業」に直結しない内容になっているのです。

―本書は、どのような先生方を対象にご執筆されているのでしょうか?

 第一に、初任者に関わる教員すべてに読んでいただきたいです。初任者指導担当はもちろん、同僚に初任者がいるという教員。あわせて、初任者や若手の教員にも、読んでいただきたいです。3章は 、初任者に直接読んでいただくページと、その解説がセットとなっています。「なにを学ぶか」「どう学ぶか」「なぜそれを学ぶか」「どう発展させるか」のすべてが、イッキに手に入る本です。

―2章では、初任者研修への指導を成功させる10の鉄則をご紹介いただきましたが、そのなかでも大事だと感じる指導の鉄則ベスト3をご紹介ください。

 鉄則1「初期指導を手厚くしよう」
 ベテラン教師でも学級を壊す時代です。4月1日から子供と出会うまでの期間の指導は、なににもまして重要です。指導者はこの時期に自分が知っている多くを初任者に指導しましょう。
 鉄則2「実践を省察する癖をつけさせよう」
 「うまくいった」と思う実践にも課題は潜み、「うまくいかなった」と思う実践にも光はあるもの。感情的に落ち込むことを防ぐためにも、自分をメタ認知するための省察の方法と習慣を身につけさせましょう。
 鉄則3「子供との関係を保つポイントを指導しよう」
 「縦糸×教師のタイプ+横糸×教師タイプ→指導の効果」ということを踏まえて自分のタイプにあった指導ができるよう助言しましょう。

―本書では、先生がご指導されてきた初任者が書かれた「論理作文」が多数掲載されていますが、「論理作文」とは何でしょうか?

 野口芳宏先生が提唱された、「発」「材」「析」「束」の4パーツで書く作文書式です。 この論理作文は、堅固なフォーマットですので、当初は書き方を身につけることが難しくはあります。しかし、自己の実践を客観化し、省察するにはたいへん適した書き方です。これを月に2本程度継続して書き続けることによって、初任者は「自分で考え、改善し続ける」力を身につけることができます。

―最後に、読者の先生方にメッセージをお願いします。

 「若手教師の現実」は、けっして甘くはありません。「辞めようかなあ」と思うことも、珍しいことではないかもしれません。実際、初任時に教師を辞めてしまう人もいます。しかし、どんなに苦しくてもあなたはなにか意味があって教師になったはずです。あなたが持っている使命感をもう一度呼び覚まし、子供にとって価値ある教師になるための契機となる本だと自信をもってオススメします。

(構成:松川)
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