- 著者インタビュー
- 教師力・仕事術
新採用教員にとって、いまは誠に厳しい時代です。新採用のうち96パーセントの教師がいきなり担任を持っているという調査があります。つまり、即プレイヤーとして現場では期待されているのです。そういう新採用の先生方にとって、「はじめの1年」は、「疾風怒濤の1年」であるはずです。そうした先生方に、勇気と安心を与える書になればと考えています。
まず若い先生方の文章。ここには一人一人の切迫した「物語」があります。8者8様の葛藤が描かれています。しかし、それぞれでありながら、通して読むと通底する若い教師が陥りやすい「穴」が見えてきます。これは、新採用教員のみなさんに共感を持って受け止められるでしょう。
また、中堅教師の文章は、俯瞰して「穴」に落ちることも決して悪いことではなく、いずれ飛躍するための「通過儀礼」であると教えてくれます。
さらに、ベテラン教師の文章は、いま現実に何をしなければならないのかを、明確に示してくれています。
これらの文章を、それぞれ読むことで、どんな新採用の先生方にも何らかのヒントを与えてくれるはずです。
第1に、「夢」を捨てることです。天使のような子ども、教育という仕事のすばらしさ。そうした「夢」を捨てること。教育は、限りなく現実的なものです。現実を現実的に生きる先に、一縷の「夢」や「希望」があるのです。第2に、自分の仕事を客観的に分析し、冷めた頭で省察すること。第3に、一人で戦わないこと。信頼できるメンターを探して、その人に相談し、ヒントをもらうことです。
決して立ち止まらないこと。そして、考える前に行動することです。自己実践を省察する重要性は、強調して強調しすぎることはありません。しかし、頭でっかちになってはいけません。実践もしないで、省みてばかりいてはバランスを失ってしまいます。
もしも、つらいことがあったら、この本を是非何度も読み返して下さい。いまは、立派に見える先輩たちも、みんな苦しんでいたのです。めげそうにもなっていたのです。先輩たちが見せてくれる「いつか来た道」を、あなたはいま這い回りながら、歩いています。あと5年もすれば、山の中腹から、「ああ、あの道で苦しんでいたなあ」と上から眺めることもできるはずです。