- 著者インタビュー
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教師が教科書に記載されている知識や概念などを相互の関連なしにバラバラに説明したとします。生徒は一つひとつの知識を用語として最低限理解できるかもしれませんが、いくつかの知識を総合的に理解することはできません。
ここでいう「構造化」とは、学習指導要領にある単元ごとの目標やねらいを達成するために必要となる知識や概念を、教師がひとまとまりのものとして、知識の相互関連を明確にしながら整理することです。この「構造化」は、一単元内だけではなく、大単元における単元間のつながりについても言えることです。「構造化」された内容を学習することにより、生徒は学習課題を追究し、課題を解決していく中で、個々の知識をつなげ、意味あるものとして総合的に理解できるようになっていきます。
「対立と合意」「効率と公正」の考え方を言葉通りに説明するならば、次のようになります。
個人のもつ利害や価値観、考え方などが異なる人々からなる集団や社会には、多くの場面で「対立」がみられる。一方、集団や社会における対立を一定の「合意」に至らしめる必要が生じた場合、話し合いや採決がなされる。合意がどのようになされたのか、合意内容は適切であったのかなど、その妥当性について判断しなければならない。その際、合意内容が「効率」(社会全体で無駄を省くこと)や「公正」(合意の手続き・機会・結果の公正さ)の視点から妥当であったかが問われることになる。
この説明を聞いたとき、大人であればこれまでに経験してきた具体的事象と結び付けながら何とか理解しようとするでしょう。しかし、生徒にとってはそう簡単なことではありません。そこで、本書で紹介しているような身近で具体的な事例を基に、シミュレーション的な手法なども取り入れながら考えさせることが必要になります。
生徒に自らの考えを述べさせる場面は、大きく2通りあります。1つは授業の始まり部分で、生徒の経験や第一次的な感想や意見を言わせる場面。もう1つは、授業の終盤部分で、これまで学習してきた内容を踏まえて、自分の考えや判断を述べさせる場面です。
どちらの場面においても、学級に、そしてもちろん教師にも、他人の意見を受容し認め合う雰囲気が必要です。これは、学級内での日常的なコミュニケーションづくり、学校生活や授業での教師と生徒との関係づくりにしっかりと取り組まなくてはならないということです。そして、後者の場面では、生徒に考えさせたり、判断させたりする「材料」がそこまでの授業展開の中で提示されていなくてはなりません。またその土台には、教師が問いを投げかけ生徒が応える、生徒が疑問をぶつけ教師が応えるといった、日ごろの授業形式があることを忘れてはいけません。
社会科授業の成否は、教材の良し悪しにかかっているといっても過言ではありません。生徒の興味を引き出し、関心を高める教材、具体的でわかりやすい教材であれば、自然と授業に活気が出ます。また、じっと考えさせ、判断に迷うような教材であれば、授業に深みが出ます。
生徒の「食欲」をそそり、“食べやすい”“おいしい”と感じさせ、それでいて噛みごたえのある「料理」を生徒の前に並べたい。そのためには、よい「食材」を探し、どのような「スパイス」を入れるか、「火加減」をどうするか…など、様々なことに気を配る必要があります。本書に収録された100の「レシピ」が、料理=社会科授業の質の向上に寄与することを願っています。