著者インタビュー
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漢字の難しさをはねとばす!アイデア支援ワーク
奈良県平群町立平群東小学校(ことばの教室)教諭村井 敏宏
2011/8/4 掲載

村井 敏宏むらい としひろ

奈良県平群町立平群東小学校(ことばの教室)教諭。S.E.N.S(特別支援教育士)スーパーバイザー。言語聴覚士。日本LD学会会員。日本INREAL研究会事務局。著書に、『通常の学級でやさしい学び支援1 読み書きが苦手な子どもへの<基礎>トレーニングワーク』『通常の学級でやさしい学び支援2 読み書きが苦手な子どもへの<つまずき>支援ワーク』などがある。

―『通常の学級でやさしい学び支援』3・4巻は、漢字学習につまずきのある子どもたちに焦点をあてたワーク集とのことですが、読み書きが苦手な子どもたちは漢字学習のどのようなところにつまずきやすいのでしょうか?

 漢字は小学校で1006文字とたくさんの文字を覚えなければいけないため、どの子にとっても困難な学習と言えます。読みの苦手な子どもにとっては、音読み・訓読みと複数の読み方を覚えていくことが難しくなります。形の苦手な子どもにとっては、画数の多い部首が組み合わさった複雑な漢字を覚えたり書くことにつまずきます。注意の集中しにくい子どもにとっては、読みや形に気を付けながら何回も練習することが困難になります。

―Q1のようなつまずきを示す子どもにはどのような支援をすることで読み書きの力を伸ばすことができますか?

 漢字を覚えていくには「音(読み)」「形」「意味」の三つの要素が必要です。三要素のうちのどの部分が弱いのかを意識しながら練習する必要があります。例えば、読みが苦手な場合には、「新」を覚える時に「あたらしい」「新聞のシン」「新幹線のシン」と、読み方を言いながら書く練習をする必要があります。また、形が苦手な場合には、同じ「新」でも『「立つ」の下に「木」その横に「おの」』のように、部首の意味や形を考えながら書くことが大切になります。

―解説には詳しく、子どものつまずきへの手立てが記載されていますが、本ワークを使いながらどのように子どもを読み取っていくのがよいとお考えですか?

 ワークは、ただ先へ先へと進めていくのではなく、子どもの小さなつまずきを発見し、その部分に丁寧に対応していくための手立てとして活用していくことが可能です。うまくいかないのには、必ず何らかの理由があります。できない部分に直接アプローチするのではなく、また訓練的に繰り返すだけではなく、まずは子どものつまずきをよく知り、その周辺のさまざまな力にアプローチしていくことで、解決することはたくさんあるのです。

―本ワークでは、どのようなアイデア教材で子どものつまずきを支援しているのでしょうか? 例でもかまいませんので教えてください。

 本ワークでは、漢字を覚えやすくするために考えた「漢字パーツ」を使っています。そのために、各学年の新出漢字に使われている部首を一覧表にした「漢字パーツ表」を用意しています(2年生用−1巻、3年生用−2巻、4〜6年生用−4巻)。部首の形・部首名・部首の意味などを、漢字を覚えていく手がかりとして活用していきます。少し難しい部首も含めていますが、子どもたちは楽しみながら漢字を覚えていけるようです。

―読み書きが苦手な子どもに、先生は本ワークをどのように使用していただきたい(使用方法)とお考えでしょうか?

 漢字学習ではそれまでに習った既習漢字を覚えておき、さらに該当学年の新出漢字を覚えていかなければいけません。本ワークの効率的な使い方として次のようなやり方はどうでしょう。1学期は前の学年の既習漢字の復習を行いながら、「漢字パーツ」を使って新出漢字の練習をする。2学期以降、該当学年のワークで練習する…。また、ワークプリントはコピーフリーになっていますので、子どもに合った効果的な使い方を考えていってもらえればと思います。

―お使いになる先生、保護者等読者へのメッセージをお願いします。

 漢字には数の多さ、読みの難しさ、形の複雑さなど「漢字の難しさ」がたくさんあります。この難しさに押しつぶされて漢字嫌いにならないよう、できるだけ効果的・効率的な漢字学習が大切になります。この「〈漢字〉支援ワーク」が読み書きが苦手な子どもの支援につながることを願っています。

(構成:佐藤)

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