著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
書く力がつく「お話づくり」とは?
広島大学附属小学校教諭三藤 恭弘
2010/6/11 掲載
 今回は三藤恭弘先生に、新刊『書く力がぐんぐん身につく 「物語の創作/お話づくり」のカリキュラム30』について伺いました。

三藤 恭弘みとう やすひろ

広島大学附属小学校教諭
文教大学教育学部初等教育課程卒。広島大学大学院教育学研究科(博士課程前期)修了。尾道市立栗原小学校を経て、平成22年度より広島大学附属小学校勤務。全国大学国語教育学会、日本国語教育学会、広島大学国語教育会会員。

―ズバリ、「お話づくり」の魅力を教えて下さい。

 まず、子どもたちが非常に好む学習活動であるということです。子どもたちはこの学習を大変心待ちにします。それは子どもたちが本来もつ「自己表現したい」という内発的な欲求に応えるこの学習の引力のような魅力だと思います。
 また、この学習は大変高い学力育成の可能性を秘めています。「無」の状態から「内容と構造と美しさをもつもの」を創り出すわけで、これは高度な能力を要することになります。その高度な学習を子どもたち自ら意欲的に行ってくれるのですから、大変有用性の高い学習だと思います。

―新学習指導要領でも、「書くこと」の中で「文学的文章の創作」が登場しましたが、お話づくりの活動で鍛えられる力というのはどのようなものでしょうか。

 いろいろありますが、無から有を創り出す活動ですので、創造力と呼ぶことも可能ではないでしょうか。つまり“(1)テーマの発見 (2)取材・選材 (3)構成・構造化 (4)記述・表現 (5)評価”の力です。これは「書くこと」の5段階の能力であると同時に、他教科・他領域にも汎用性の高い5段階の思考法でもあります。また、ものごとを認識する力「ものの見方・考え方・感じ方」や、言語感覚、想像力、日本語への関心・意欲・態度などが身についてくるのもうれしいことです。

―本書は、色々な視点から取り組む30の実践が収録されておりますが、国語の授業の中で、実際どのように取り上げればよいでしょうか。

 「お話づくり」の学習は教科書を中心とした既存の学習に組み込むことで一層効果を発揮します。例えば指導案の8番は続き話を書く学習ですが、これなど教科書の文学教材の読解の時に、「このお話の続きを書く」という単元構成にすると、子どもたちは大変意欲的に読解を行います。続き話の中には本文中で読み取った内容が伏線として利用されていたりして感心させられることもあります。また、本30の指導案はお話づくりの学習でありながら、読解学習として行うことが効果的なものもたくさんあります(6、14〜22、25番ほか)。これらを「表現者の立場からの読み」と呼んだりしています。

―書くことに苦手意識を持っている子どもには、どんなアドバイスをするとよいでしょうか。書くことが好きになる秘訣がありましたら、ぜひ教えて下さい。

 書くことは「見つけること」から始まります。「見つける楽しさ」を味わわせることはとても大切だと思います。私は日記を大事にしています。長く書かなくてもいいから「はっとしたことを見つけておいで。」と言います。短くても価値ある題材を見つけてきた時、たっぷりの返事でほめると、子どもたちはとても喜びます。また、「俳句」は短いテクストとして「書くこと」が苦手の子どもたちには大変よい学習だと思います。俳句で自信をつけ、授業中積極的になった子もいます。

―最後に、読者の先生方へメッセージをお願いします。

 「創作」という学習は大きな可能性を秘めていると思います。広島大学の吉田裕久先生はこのカリキュラムを「ロングランメソッド」と評してくださいました。一年かけて育てる教育課程という意味です。子どもたちはこの学習に大変意欲的で、この意欲を原動力にすると国語授業がスムーズに回ります。みなさんと創作の有用性について考えていきたいと思っていますので、ご意見ご批正をいただければ幸いです。なお、広島大学附属小学校では、2月の研究会に先立ち7月26日(月)に「授業づくりフォーラム’10」を開催します。ワークショップのほか公開授業も行いますので、是非お越し下さい。

(構成:木村)

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