著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
明日、始められる「情報モラル教育」
東京都北区立赤羽台西小学校主幹野間 俊彦
2005/8/5 掲載
 前回のEduアンケートでも取り上げましたが、今話題の情報モラル教育。
 今回は、その分野の第一人者とも言える野間先生に新刊『Q&Aで語る情報モラル教育の基礎基本』について伺いました。

野間 俊彦のま としひこ

鹿児島県生まれ。武蔵野美術大学視覚伝達デザイン学科卒。
東京都北区立赤羽台西小学校主幹。文部科学省『初等中等教育における教育の情報化に関する検討会』委員。文化庁『著作権学ぼうプロジェクト』委員。
【著書】 『情報モラルを鍛える』(共著 ぎょうせい)/『親と子のインターネット&ケータイ安心教室』(共著 日経BP社)/『インターネット教授法ガイドブック』(工学社) 他多数。

―最近、「情報モラル教育」という言葉がメディアによく出てくるようになりましたが、5年前にいち早く実践を始めたきっかけはどんなことだったのでしょうか。

 私はちょうど10年前にインターネットを始めたのですが、自分自身がいやな思いや怖い思いをずいぶんしてきました。そして、これからの子どもたちにこんな思いをさせてはいけないと思い、学校として情報モラル教育に取り組もうと考えたのです。

―今回、本書をご執筆されるに至った経緯をお教えください。

 他の学校に先駆けて情報モラル教育に取り組んでいたことで、講演や講師をよく頼まれるようになりました。そこで必ず言われるのが、「どう教えたらいいのかわからない」「教材がない」の2つなのです。だったら、その2つを盛り込んだ本をつくれば、先生方の役に立つのではないかと考えたのです。

―講演等で現場の先生方と接する機会も多いと存じますが、「情報モラル教育」に関して感じる現状最大の問題点とは何でしょうか。

 情報モラル教育が必要だと思っている先生は多いのですが、小学校では学習指導要領で扱われていないので、どうしても優先順位が低くなってしまいます。そうしているうちに時間がなくなって、やらずに終わってしまうことでしょうね。

―文科省の審議会「初等中等教育における教育の情報化に関する検討会」の委員をされているそうですが、「情報モラル教育」に関して、行政として取り組むべきこと、各学校・各教室で取り組むべきことについて、今後の展望をお聞かせください。

 検討会では情報教育全般について検討しているのですが、小学校でも情報モラル教育を行うべきだという意見は出ています。ただ、学習指導要領を一部改訂してまで入るのは難しいようで、次期改訂待ちになると思います。でも国も動いていまして、情報モラル教育に関する施策もいくつか始まっています。東京都も今年度情報モラル実践モデル校を小中合わせて50校指定して実践を集めようとしています。この成果が公開されれば、大きなステップアップになると期待しています。
 各学校や教室では、とにかく情報モラル教育を始めてもらいたいです。時間がないと言わず、学年でひとつの題材でもかまわないので、やってみることです。

―仮に「情報モラル教育」が徹底されたとして、その先、どのようなことが問題として出てくると考えられますか。難しい問題だとは思いますが、お考えをお聞かせください。

 交通事故がなくならないのと同じで、インターネットに匿名性と非対面性がある限り、ワナや落とし穴がなくなることはないでしょう。むしろ新しい手口がでてくるはずです。ネットモラルは未来も変わりませんが、セキュリティに関しては、いつまでも新しい題材をつくり続けることになると思います。

―「本書の目的は、ズバリ『明日、情報モラルの授業ができること』です」というキャッチフレーズに先生の意気込みと使命感を感じました。最後に、本書の具体的な活用方法について簡単にご紹介ください。

 15の題材で指導教材と指導略案が用意されていますので、できそうだと思ったところから、教材をダウンロードして、まずやってみてください。その際、1時間もたせようと考える必要はありません。大切なのは時間ではなく内容ですから、30分で終わってもかまわないのです。とにかくはじめの一歩を踏み出すことです。

(構成:佐保)

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