著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
「どうして算数を勉強するの?」と尋ねられた時は
十文字中・高講師中山 理
2005/5/13 掲載
 「クイズの達人」ともいえる、その関連書籍を多数執筆されている中山先生に、子どもが喜ぶ題材を豊富に取り入れた新刊『おもしろイラスト入り 頭のトレーニング算数クイズ 高学年』についてお聞きしました。

中山 理なかやま ただし

十文字中・高講師、大妻女子大講師、慶応幼稚舎元教諭、東京都足立区立第四中元教諭、日本数学教育学会元幹事、東京私立初等学校協会算数部会元委員長、日本私立初等学校連合会算数部会元全国委員長、学校図書算数教科書著者
【著書】『4・5・6歳のさんすう』数学研究社/『ミッキーマウスのかずとけいさん』学習研究社
【共著】『小学算数事典』旺文社/『子どもの喜ぶ算数クイズ&パズル&ゲーム』『コピーして使える楽しい算数クイズ&パズル&ゲーム』黎明書房 その他、明治図書の雑誌に執筆。

─「これで算数の勉強?」というようなおもしろい問題集でした。その魅力の一つに、オリンピックや大リーグなどに関わる、子どもの興味をひきそうな問題がたくさん盛り込まれていることがあると思います。身近な話題を問題にした技や苦労をお聞かせ下さい。

 私達の生活の周りには、算数で考えるものがたくさんあります。予想は確率ですし、どちらが上手かという比較は、差で比べる場合と、割合で比べる場合があります。広さも高さも日常生活にはたくさんあります。
 しかし、算数の問題として取り上げても良いものと、そうでないものがあると思います。事故などの悲しいものも、再発防止のためには考えなければならないとは思いますが、子ども達の算数の勉強には、事件などの悪いものは取り上げたくありません。みんなが喜び、興味を引くものだけを取り上げ、算数を喜びの中で考え、算数の力をつけていく方が良いと考えています。
 そこで、みんなのよく知っているものから題材を取り上げたかったので、去年のオリンピックやパラリンピック、イチロー選手の新記録、高橋尚子選手や野口みずき選手のマラソンなど、みんなの喜びがあるだろうと思うものを意識して取り上げました。日本のプロ野球のチームなどは、人によって好き嫌いがありますので、特定のチームにはしないように配慮しました。

─一筆書きのルールや、円の面積の公式の求め方など、普通の算数問題集にはあまりのっていないような解法がいくつか紹介されています。その中で、おそらく本邦初公開というような解法はありますか?

 数学の歴史は古く、一筆書きも、円の面積の公式の求め方も、台形の面積のいろいろな求め方も、特別に新しいものというわけではありませんが、7の倍数の見つけ方は、今まで他の本では見たことがありません。本を全部調べたわけではありませんから、本邦初公開と言えるかどうかはわかりませんが、私の知る限りにおいては、この本が初めてと言っても良いのではないかと思います。

─算数嫌い、理数離れが危惧されています。「どうして算数を勉強するの?」と子どもに聞かれた時の先生のお答えを、是非ここで教えて頂けますか?

 子どもの質問には、その子が納得するように答えるように心掛けています。ですから、子どもの質問にはその時々で、その子が何を求めているかを知らなければなりません。以前私は4年生の子どもに「先生、三角形は四角形だね。」と言われたことがありました。「えっ?」と思ったのですが、その時に、「三角形が四角形のわけがないでしょう。」などと言ったら、その子はもう、自分の考えを話してくれないと思いましたので、何とか答えたいとは思いました。でも、少し考えたのですが、その子が何を言おうとしているのか咄嗟にはわかりませんでした。子どもの質問には、すぐに答えないわけにはいきません。その子は多少ニヤニヤしていました。そこで、ひょっとすると、と思って、「じゃあ、三角形は五角形でもあるかい?」と尋ねてみました。するとその子は、「うん。」とニコニコしながら答えてくれました。
 わかりました、その子の考えていることが。
図
 その子は、1つの辺の途中に180°の頂点を考えたのです。1つの頂点の角が180°なら、三角形ABCは四角形ABCDと見られるではないかと言おうとしていることがわかりました。
 そこで私は「君、凄いじゃない、素晴らしいことを考えたね。でもそうすると、何角形か言えなくなるから、180°の頂点は無しにしようね。」と言うと、「うん、いいよ。」と言ってくれました。その子はその後、数学が得意になりました。
 子どもの質問には子どもの質問の意図と子どもの数学的知識の程度や個性を考えずには適切な解答は与えられません。
 「どうして算数を勉強するの?」と尋ねられた時には、一般的には、「君が生活を便利にするのに役立つためなのですよ。」というようなことを言うのですが、その言い方は、質問した子どもの疑問の程度や、どの程度の数学的な知識を持っているか、その子の性格によっても異なり、その子に合わせた答え方をしています。
 何故算数の勉強をするか、勉強とは何かについては、本書3ページからの「はじめに」に私の考えを書きました。

─本書は小学校高学年版ですが、低・中学年の発刊が待たれます。最後に、今後の発刊予定をお聞かせ下さい。

 中学年版は今年の秋ぐらいではないかと思っています。

(構成:木村)

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