フル・インクルーシブ教育の学校&授業づくり
インクルーシブ教育の最先端の研究を担う,東京大学大学院教育学研究科と大阪市立大空小学校の取り組みを紹介。
フル・インクルーシブ教育の学校&授業づくり(5)
校長室・職員室の再定義
大阪市立大空小学校教頭日野 善文
2018/10/20 掲載

 とかく閉鎖的な場所になりがちな職員室や校長室。それを閉鎖的な場所から開放的な場所にしていくことが大空小学校では重視されています。今回はこの点について、大空小学校教頭の日野先生に語っていただきます。

困ったときにここにきたらどうにかなる場所です。

 大空小学校の6年生(リーダー)が“大空小学校で一緒に学びたい”と全国からきてくださるゲストに、「NAVI隊」(大空小学校のいいところを子どもたちが自分の言葉で案内する学習)で職員室を紹介するときに話す言葉です。
 大空小学校の職員室は、教職員だけでなく、多くの子どもたちが出入りします。子どもたちは友だちとトラブルになりどうしたらいいかわからないときや、自分の思いが伝わらず感情的になってしまいクールダウンしたいときに職員室にきます。話を聞くのはそこにいる教員や養護教諭だけでなく、時には事務職員に話をすることもあります。「自分たちだけでは解決できない困ったことが起きたときや気持ちがもやもやして落ち着かないときには職員室にきたらどうにかなる」という場所が学校にあることが大切であると思います。
 校長室や職員室が子どもたちやサポーター(保護者)・地域の方にとって閉鎖的な場所になっていないでしょうか。少なくとも私が経験してきた学校はそのような場所でした。子ども時代は職員室に入るだけで緊張する場所だったことを覚えています。「入ったら怒られるんじゃないかな?」「話しているから出ていってと言われるのではないか?」と思っていました。また、本校のサポーターも入学最初はそのような考えの方が多く「子どもたちが自由に職員室を出入りしているのが不思議だ」とおっしゃる方もいます。私が今まで勤務してきた小学校でも、子どもたちの出入りは必要最低限しかありませんでしたし、保護者が頻繁に入ってくるような場所ではありませんでした。
 大空小学校は毎日、サポーターやボランティアの方がいます。子どもたちが出入りしている様子を見て、サポーターや地域の方が職員室に立ち寄ってくださる機会も増えます。教職員も「中に入ってください」と声かけをして、職員室に入りやすい環境をつくることにより、子どものことや学校のことをともに考える機会も増えます。このような積み重ねから、大空小学校SEA(PTA)やボランティアの方を中心に職員室はいつでも立ち寄れる場所という考えが定着しています。

 さて、本校にはたった一つの約束

自分がされていやなことは人にしない 言わない

があります。
 大空小学校では、この約束を子どもも大人も守ります。しかし、破ってしまったときには子どもでも大人でもやり直しをします。その場所は校長室です。
 ある子どもが「校長室はやり直しの部屋」といった言葉からその場所になりました。やり直しは誰かに言われていくものではなく自分からいきます。たった一つの約束を守ることができなかったこと、なんで破ってしまったかということを伝えます。校長室に校長先生がいなかったら職員室にいる大人とやり直しをします。やり直しの相手と向き合い、自分自身を振り返り新しい気持ちで教室に戻ります。校長室や職員室は子どもたちが再スタートする場所にもなっています。
 教職員が子どもに何かあったときには職員室で話をしたり、相談にのったりすることで、校長室や職員室は、子どもたちが安心してくることができる場所になっているのではないかと考えます。子どもたちのことをまずは受け入れ、困っていることについて真剣に話を聞き、「子ども同士の通訳」となれるような関わりを教職員は心がけています。困ったときには大人が助けてくれる。大人は職員室にたくさんいるという考えから「職員室にくるとどうにかなる」という考えになっていったものです。
 子どもの話を教室でなく、職員室で聞くことによってそこにいる教職員が子どもの思いを共有できます。また、担当だけでなくすべての教職員が声かけすることができます。すべての子どもを多方面から見つめ、全教職員のチーム力で育てるという学校づくりの根幹が校長室や職員室にはあると考えています。
 子どもたちは困ったときに、職員室で自分の話しやすい大人(教職員)に話をします。子どもが話しやすい環境をつくることで、安心して居られる場所となっているのです。今後も、子どもたちが「困ったときにきたらどうにかなる場所」という職員室をつくっていきます。

まとめ

  • 「困ったときにきたらどうにかなる場所」とは「私のことをわかってくれている大人がいる場所」と子どもたちが感じることができるような場所のことです。そのような校長室や職員室を今後もつくります。

日野 善文ひの よしふみ

徳島県出身
1975年8月30日生
佛教大学教育学部教育学科卒業
平成16年 大阪市立小学校に採用される
平成24年 大空小学校に赴任
平成27年 大空小学校の教頭に就任

(構成:赤木)
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コメントの一覧
3件あります。
    • 1
    • 頑張れ教頭先生
    • 2018/12/18 16:50:40
    いつも笑顔でにこやかな教頭先生。
    子供のことを一番に考えています。
    不満があるなら、一度、大空を見に行くべし。
    • 2
    • 木村泰子スーツケース
    • 2019/3/3 1:16:13
    “やり直しは誰かに言われていくものではなく自分からいきます。”
    教頭もグルになってごまかしですか。
    あの映画では、朝礼の場で、「(校長が)問題(とみなした)」児童について、「あの子はまだ校長室へやり直しにきていない」と「みんな」の前で発表して、「自発的服従」をさせていた。
    校長室に行くと児童は、校長へ謝罪。「やり直し」ではなくて「虚偽自白の誘導」めいた行為ですね。
    「自発的服従へ追い詰めての謝罪」は、校長室以外でもなされていましたね。先生の前でとかクラス全員にとか。「みんな」という言葉でごまかして。
    • 3
    • けやきのけんちゃん
    • 2019/3/28 23:37:39
    日野先生の視点に、とても学びました。

    子どもの「困っている」は、子ども自身が何に困っているのかそもそもわかっていなかったり、わかっていてもそれを他人に充分に伝えられるわけではなかったり、そんな当たり前の感覚が「やり直し」の根底にあるのですね。
    子ども自身が困っていることを自分で伝えられるよう、周りの大人が手助けできること、それが「校長室・職員室の再定義」の根幹なのだなぁと思いました。

    どんな意図があるかわかりませんが、ネットの匿名の書き込みでしかご高説を開陳できない方もいるようですね。異常ですし、卑怯ですね。教育について講釈を垂れている者自身が卑怯者というのは、悲劇というべきか喜劇というべきか。
    たくさん足を引っ張られるでしょうが、これからも負けずに、目の前の一人の子どもの声から始まる学校づくりを期待しています。
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