GIGAスクール構想で変える!1人1台端末の授業づくり
1人1台端末導入で、授業が確実に変わります。そして、仕事術も確実に変わります。具体的な実践のヒント・授業のノウハウを伝授!
1人1台端末の授業づくり(5)
デジタル教具とアナログ教具
香里ヌヴェール学院小学校樋口 万太郎
2021/10/20 掲載
  • 1人1台端末の授業づくり
  • 授業全般

 前回の続きです(前回の記事はこちら)。
前回、デジタル教具の良さとして、アナログ教具と違い、
(1)煩雑さがなくなる
(2)保存しておくことができる
(3)全員に発表ができる
(4)複製することができる
(5)子どもが自由に使用できる
といったことを書いてきました。今回は(4)と(5)について書いていきます。

(4)複製することができる(5)子どもが自由に使用できる

(4)複製することができる

 この授業のときも、1つ目にデータを配付したときに、
「先生、データをコピーしてもいい?」
と質問をしてくれた子がいました。このときは、ねらいがあったので、
「ごめんね。今は1つだけを提出してね」
と言いましたが、他の場合を探すために「もう1度データを送るよ」と言ったときには、
「先生、僕はいらないよ〜」
と自分で複製をしている子もいました。
 というように、1年生でも仕方さえわかれば、自分が複製しようと思ったときに、自分たちで複製することができるということです。
 つまり、複製したいという「必要感」があるときに、その子は自分から複製をするということです。

(5)子どもが自由に使用できる

 みなさんの使用されている学習支援アプリはそれぞれ異なりますが、クラウドを使用していることは共通していることです。
 そのクラウドに、
数図ブロックや筆算や数直線などを入れておき、子どもたちがいつでも使用することができるようにファイルを作成しておくことをオススメしています。
 子どもたちが必要だと思うときに、使用することができます。
 これは、アナログ教具ではあまりできないことです。
 アナログの数図ブロックを子どもたちが使いたいと思ったら、どのような過程を通るでしょうか。

【アナログの場合】

  1. 子どもがブロックを使いたいと思いつく
  2. 机の中からお道具箱を出す
  3. お道具箱から数図ブロックが入っている箱を取り出す
  4. 数図ブロックが入っている箱を開ける

【デジタルの場合】

  1. 子どもがブロックを使いたいと思いつく
  2. クラウドからファイルを探す
  3. クラウドから取り出す

といったように、デジタルの方が使うまでの過程が少なくてすみます。
(少し無理矢理感はあるような気がしますが…。)
 学校に保管している数図ブロックを家庭で使いたいと思っても使用することはできません。一方で、デジタルの数図ブロックの場合は家庭でも使用したいと思えば使用することができます。
 「(4)複製することができる」「(5)子どもが自由に使用できる」で、子どもたちが必要とするときに、自分で行うという経験を積んでいると、例えば、すぐに解くことができない問題に出会ったときに、解決するために様々な方法で動き出す子に育つのではないかと考えています。

 ここまでデジタル教具の良さを説明してきましたが、
「(2)保存しておくことができる」「(3)全員に発表ができる」「(4)複製することができる」「(5)子どもが自由に使用できる」の活動の主語は「子ども」です。つまり、デジタル教具を使うことで、
子どもたちは「自分ごと」として活動に取り組む
ということです。
 だからといって、すべてのアナログ教具をデジタル教具に移行すべきだと主張したいわけではありません。
アナログ教具とデジタル教具の共存
が大切になってきます。
 例えば、低学年の図工領域の活動はこれまでのようにアナログ教具で行った方がよいです。低学年における図形を考察するうえで用いる操作として

(1)折る (2)切る (3)積む (4)転がす
(5)しきつめる (6)組み立てる

という6つがあげられます。
 こういった操作をデジタル教具で取り組むということは、子どもたちが実感しづらいのではないかと考えています。だからそういったときには、アナログ教具を使用すればよいのです。
 ある年、すべてをデジタルに移行しようと決意し、取り組んだ時期がありました。しかし、その年は数多くの失敗をしました(失敗談はまた今後の連載のなかで書く予定です)。
 その数多くの失敗から、アナログ教具とデジタル教具の共存が大切ということに気がつきました。だから、みなさんも失敗を恐れずにタブレット端末を使用した授業を行っていってください。

どのようなデジタル教具を作ればよいのか・作り方は?

 私はこういうデジタル教具を使用しているとき、「ワクワク」します。新しいデジタルのものを使おうとするとき、SNSで「開封の儀」と投稿するぐらいとても「ワクワク」します。
 これを使うと、子どもたちの学びを促進できるのではないかと考えているからでしょう。
でも、デジタルが得意というわけではありません。WordやExcelも人並み程度です。ただ、子ども時代よく妄想をしている子でした。その妄想していたことが関係しているのでしょう。
 デジタル教具を使うときや作るときは、

  1. 「今日は◯◯というデジタル教具を作ろうかな〜」といった作り方
  2. 実際の授業を考えているなかで、「◯◯というデジタル教具を作ろう!」と思いつく

という2つでは、2.のように考えています。
 この2つは何が違うのでしょうか。
 きっと、「授業のねらい」が授業者にあるか、ないかです。授業のねらいを達成するために、どうしたらいいのかという思考をしているなかで、デジタル教具を使う・作るという選択肢が自然と自分のなかで生まれてくるのでしょう。
 これはこれまでのワークシートづくりでも同様のことが言えるのではないでしょうか。国語「海の命」で授業のねらいや展開が決まっていないのに、海の命のワークシートを作成するような状態です。つまり、
「授業のねらい」がないと、効果的なデジタル教具を作ることはできない
ということです。
どれほどすばらしいデジタル教具があっても、授業のねらいがなければ、そのデジタル教具を有効には活用できない
ということも言えることでしょう。

 デジタル教具を作るときは、そのアプリだけで完結することもあれば、複数を使い分けて作成することもあります。とはいっても、タブレット端末内に入っている機能で作成します。今回の実践で紹介した数図ブロックは、Keynoteで作成しました。
 作る手順は簡単です。

(1)正方形の図形を出す
(2)丸の図形を出す
(3)丸の図形の色を変える
(4)(1)の正方形の真ん中に(3)を配置する
(5)完成!

です。正確には計っていませんが、作成時間は2分もかかっていないことでしょう。このデータをロイロノート・スクールに入れて、使用しました。
 アプリに慣れるまでは作成時間はもっとかかったことでしょう。慣れるには少し時間がかかりました。
 アプリに慣れる…。これは子どもも先生にも求められていることです。
 なお、本実践は、ロイロ授業フェス2021のアーカイブ動画にて紹介をしています。よろしければ、こちらよりご覧ください。

樋口 万太郎ひぐち まんたろう

1983年大阪府生まれ。大阪府公立小学校、大阪教育大学附属池田小学校を経て、2016年より京都教育大学附属桃山小学校教諭。「子どもが楽しむ・教師も楽しむ」「子どもに力がつくならなんでもいい!」をモットーに日々の算数授業を行っている。著書に、『子どもたちの学びが深まるシン課題づくり』『GIGAスクール構想で変える!1人1台端末時代の算数授業づくり』『GIGAスクール構想で変える!1人1台端末時代の授業づくり』『GIGAスクール構想で変える!1人1台端末時代の授業づくり2』『GIGAスクール構想で変える!1人1台端末時代の国語授業づくり 物語文編』『GIGAスクール構想で変える!1人1台端末時代の国語授業づくり 説明文編』『GIGAスクール構想で変える!1人1台端末時代の学級づくり』(明治図書出版)などがある。

(構成:及川)

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