著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
保護者を味方にするポイントは教師の日常にあり
上越教育大学教職大学院教授赤坂 真二
2017/4/18 掲載
 今回は赤坂真二先生に、新刊『保護者を味方にする教師の心得』について伺いました。

赤坂 真二あかさか しんじ

1965年新潟県生まれ。上越教育大学教職大学院教授。学校心理士。19年間の小学校勤務では、アドラー心理学的アプローチの学級経営に取り組み、子どものやる気と自信を高める学級づくりについて実証的な研究を進めてきた。2008年4月から、即戦力となる若手教師の育成、主に小中学校現職教師の再教育にかかわりながら、講演や執筆を行う。
主な著書・編著書に、
『職員室の関係づくりサバイバル うまくやるコツ20選』『授業をアクティブにする! 365日の工夫』シリーズ(小学1〜6年)、『スペシャリスト直伝! 主体性とやる気を引き出す学級づくりの極意』『クラスがまとまる! 協働力を高める活動づくり』『教室がアクティブになる学級システム』『学級を最高のチームにする! 365日の集団づくり』シリーズ(小学校・中学校・高等学校)、『アクティブ・ラーニングで学び合う授業づくり』『スペシャリスト直伝! 学級づくり成功の極意』『スペシャリスト直伝! 学級を最高のチームにする極意』『一人残らず笑顔にする学級開き 小学校〜中学校の完全シナリオ』『最高のチームを育てる学級目標 作成マニュアル&活用アイデア』『自ら向上する子どもを育てる学級づくり 成功する自治的集団へのアプローチ』『クラス会議入門』『いじめに強いクラスづくり 予防と治療マニュアル』『思春期の子どもとつながる学級集団づくり』『気になる子を伸ばす指導 成功する教師の考え方とワザ』『スペシャリスト直伝! 成功する自治的集団を育てる学級づくりの極意』『信頼感で子どもとつながる学級づくり 協働を引き出す教師のリーダーシップ』『集団をつくるルールと指導 失敗しない定着のための心得』『やる気を引き出す全員参加の授業づくり』(以上、明治図書)などがある。

―本書はベストセラー「学級を最高のチームにする極意」シリーズの最新刊として、テーマは「保護者を味方にする教師の心得」です。本書のねらいと読み方について教えてください。

 若い先生方を中心に、子どもとはうまくやっているのに、保護者とうまくいかないという話をうかがいます。また、教師を目指す学生の中にも保護者とうまく関係をつくることができるかについて不安を感じる人は多くいます。近年は、保護者との関係がうまくいかなくなって学級が機能しなくなる保護者発信型の崩壊も少なくはありません。多様化する保護者のニーズに応え、信頼関係を構築するにはどうしたらよいのでしょうか。
 本書の第1章では、保護者と向き合うことの意味やその構えについて示しました。また、第2章は、全国の実践家から具体的な実践を挙げてもらっています。その内容は大きく分けて「@各執筆者の基本的な考え方、A保護者と信頼関係をつくることができた事例、B保護者と味方にするための教師の心得」の3つです。

―まえがきにある「教師にとっては仕事でも、保護者にとっては人生だから」という言葉が、教師と保護者との関係性をとてもよく表しているように思いますが、この点について教えてください。

 近年、保護者の要求は多様になり、また、少し度が過ぎているような事例も見られています。場合によってはそれを「クレーマー」とか「モンスタ−」などと呼びたくなるのは心情としてはわかります。しかし、保護者がそうなってしまうのは、先生方も重々ご承知の通り、ほとんどの場合、子どもを愛すればこそです。
 教師にとっては何十分の一かの教え子の1人かもしれませんが、保護者にとっては一分の一、なのです。要求をのむかのまないかは別としてまず、コミュニケーションをとろうとすることが大事でしょう。コミュニケーション不足が、愛情深い保護者を「クレーマー」や「モンスター」にしてしまうことがあるのではないでしょうか。

―保護者と教師をつなぐものの一つとして、学級通信や学年だよりなどがあります。本書でも実物例も入れながら紹介されていますが、作成にあたってのポイントがあれば教えてください。

 通信に対する考え方は、各執筆者によって異なっています。共通していることは、通信を出す側の教師の意図です。「どういうつもりで書いているか」という教師の構えはすぐに保護者に伝わります。その根底に、「保護者とつながろう」という思いと「子どもへの愛」がないものは、多くの保護者は見なくなるでしょう。「年間○○号」と自分にノルマを課したり、自分の記録のために出したりするという教師もかつていました。しかし、保護者の貴重な時間を自分の自己実現のために付き合わせるのはいかがなものでしょうか。相手意識をもって、保護者が読みたくなるような通信を出すことが最大のポイントだと思います。

―学級崩壊や不登校など、保護者との関係性が難しいスタートになることもありますが、その際に立て直していく、関係づくりを始めていくにはどのようなことが大切でしょうか。

 学級崩壊をしているクラスの中にも学校や教師に協力的な保護者はいるし、不登校の子の保護者すべてが学校に不信感をもっているわけではないと思います。しかし、学級を担任すると学校に対して不信感をもっている保護者が一定数いることは間違いないですね。そういう方々には、誠意を見せるしかないと思っています。本書の第1章にも書きましたが、学級経営や授業づくりをしっかりやることです。そして、子どもたちが「今度の先生、好き」って言うようになれば、保護者の態度は変わることでしょう。また、同時進行で、保護者は学校のことを知りたいと思っていますから、そのニーズを満たすことです。具体的な方法は本書で。

―本書には、様々な事例での教師と保護者の具体的な対話場面も豊富に収録されていますが、そこから感じられるのは「計算」ではなく「本音」でのやりとりです。教師にはどのような心構えが大切なのでしょうか。

 通信を出す構えと同じですが、保護者と「つながろうとする」意志が教師側にあるかどうかです。しかし、本音を伝えるには、やはり多少の技術的なものもあることでしょう。いくつか挙げると、@コミュケーション量を増やすこと、A笑顔で安定していること、B子どものよさを伝えること、などです。保護者を見かけたら必ず声をかけることです。いつも笑顔で談笑し、好意を伝えることです。人は自分を嫌っている人とはつながろうとしません。また、子どものことも好きであることが伝わるようにします。人として認めてほしい、そして、自分の大切にしているものを大切にしてほしいと思っていることは、教師も保護者も同じです。

―最後に、読者の先生方へメッセージをお願いいたします。

 保護者と向き合うことを「保護者対応」などと言っているうちは、保護者と良好な関係にはなれません。保護者同士が「今年の教師対応どうする?」と話し合っていたら、よい感情はもてませんよね。教師の方からつながろうとしないとつながれないのが今の教師と保護者の関係ではないでしょうか。しかし、保護者を味方にしたら、教師である皆さんにとっては学級経営や授業が相当にやりやすくなりますし、皆さんの自信になることは間違いないです。「保護者との関係が悪くなったらどうしよう」と受け身で心配をするのでなく、「保護者とのよい関係をつくるためには何をしよう」と積極的な態度で臨んだらきっと光が見えるはずです。
 本書には保護者と信頼関係をつくるためのアイディアが満載です。皆さんの教育活動に強い追い風を吹かせてくれることでしょう。

(構成:及川)
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