英語教育ユニバーサルデザイン 指導に役立つ教材・教具
「がんばっているのに英語が覚えられない…」読み書きが苦手な子どもたちの英語指導に役立つ教材・教具を紹介。 学び方を変えれば、英語はできるようになる!
英語教育ユニバーサルデザイン 指導に役立つ教材・教具(11)
絵本を使った導入期の指導
神戸山手短期大学准教授村上 加代子
2019/4/5 掲載

今回のねらい

絵本は何歳になっても「好き」

 新年度になり、初めて英語に触れることを楽しみにしている子どもたちも大勢いることでしょう。すでに英語教室などに通っている子も多いかもしれません。
 今回は導入期の絵本がトピックですが、絵本というと、子どもっぽいのでは…とか、未就学者対象なのでは…などと思われるかもしれません。しかし、そのようなことはありません。中学生でも絵本を読み聞かせると黙って絵に釘づけになります。特に学習初期では、英語らしい音声をシャワーのように自然に浴びながら、絵を手がかりに物語を楽しめるだけでなく、先生が指さす先の絵の名前(単語)や、英語らしい音声・抑揚といった、新しい世界に触れる楽しみもあります。発展的な活動として、絵本の内容を自分たちの立場に置き換えて考えたり、主人公の考えについて自分はどう思うのかという意見の交換ができることは、絵本を使った教材ならではの学びです。絵本は、すぐれた教材です。今回は、特に英語の導入期の絵本の楽しさや役割について紹介したいと思います。

●挿絵を楽しむ
 素晴らしい挿絵による世界観も、子どもが夢中になる理由の一つでしょう。毎年アメリカ図書館協会が選ぶ最も優れた絵本に与えるコールデコット賞という賞があります(https://enbooks.jp/caldecott-medal/)。これらの絵本の多くが翻訳され世界中で読まれています。『かいじゅうたちのいるところ』(モーリス・センダック著、じんぐう てるお訳、冨山房)などはご存じの方も多いのではないでしょうか。わが家にも同賞受賞の絵本が数冊あります。英語は少し難しいのですが、絵を見ながら、先生がお話をひもとくことで楽しむことができます。「英語を勉強している」と子どもにちっとも感じさせることなく、英語の世界に馴染むきっかけをつくってくれます。

●異文化を体験する
 絵本でも、異文化に気づき、体験することができます。先ほど紹介した海外の絵本は挿絵の美しさだけではなく、色の組み合わせも珍しいものがあり、敏感な子どもにはそうした色使いから違いを感じる子もいます。また、挿絵には見たことがない食べ物や洋服など、たくさんの情報も含まれているため、「なんだろう」と自然な疑問が湧いてきます。

 たとえば『No, David!』という絵本があります。これはやんちゃなDavidくんが裸で外に走り出たり、部屋を片づけなかったり、お風呂の中でバチャバチャやって水を跳ねさせたりと、「No!」と言われるシーンがたくさん出てきます。そのとき、ただ読むだけでなく、「あれ?Davidの部屋にあるこのオモチャはなんだろう?見たことあるかな?」「Davidは、靴を履いて家に入っている。どう?みんなの家でも同じかな」というような問いかけをすると、見る視点が変わります。「どうしてだろう」「なんだろう」と思えるような問いかけから、「知りたいな」と好奇心を募らせたり、「へえ、アメリカでは靴で家に入るんだ!」という発見につながります。そう考えると、絵本は小さな世界旅行への扉だとも言えますね。

●目と耳で語彙に触れる
 絵本では、まず絵が目に飛び込んできます。物語を一度楽しんだあと、もう一度絵本の絵に戻り、絵をじっくり眺めることも楽しいものです。「What do you see?…何があるかな? Oh, what's this?」など、細部に注目させます。子どもがその単語の意味を知っていてもいなくても、ここは耳でのインプットですので「It's a train! Train.」とゆっくり繰り返します。無理に反復させなくても、しっかりと目で絵を捉え、その音を聞かせることが大切です。一緒に動作をやってみたり、「○さんだったら、汽車でどこに行きたい?(Where do you want to go by train?)」など自分の関心に引き寄せても良いでしょう。小学校で学ぶ単語のほとんどは身近な生活に関係する語彙です。動物や食べ物が出てくるお話なども楽しく語彙が増やせます。

●もし発音に自信がなかったら…
 いまは、CDつきの英語の絵本がたくさん出ています。さらにCD絵本の場合は、BGMがあるバージョンがついているものも多く出版されています。ただし、聴覚情報処理の弱い子どもや、いろんな音があると注意しにくい子どもは、BGMなしのほうが集中できて良いでしょう。まずはBGMなしで絵本のお話の内容がわかってから、BGMを歌のように聞いても良いでしょう。

*URLや教材の情報は掲載時点でのものになります。

村上 加代子むらかみ かよこ

米国ウィスコンシン大学マジソン校卒。
神戸山手短期大学准教授。英語教育ユニバーサルデザイン研究会代表。
学習障害のある児童生徒対象の「チャレンジ教室」を主催。英語教科における特別支援やユニバーサルデザインの啓発活動に積極的に取り組んでいる。教員間の情報交換のプラットフォームづくりを目指している。

(構成:佐藤)

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