スッキリ解決☆学びにくい子への学習つまずきサポート
どのクラスにもいる、学ぶのがちょっと苦手な子。そのつまずきの原因を探り、サポートの道筋をさぐろう!つまずきサポートの達人になろう!
スッキリ解決☆学びにくい子への学習つまずきサポート(10)
作文を2〜3行しか書けない子
大阪府堺市立日置荘小学校 通級指導教室山田 充
2016/3/20 掲載
  • 学習つまずきサポート
  • 特別支援教育

本コーナーでは、一生懸命頑張っているのになぜか学習がうまく進まない…そんな学びにくい子のつまずきの原因を探り、そのサポート法を解説していきます。

山田先生、私のクラスの子(3年生)について相談させてください!

学びのつまずき相談

作文を2〜3行しか書けないんです
3年生の男の子です。作文で困っています。
遠足の作文とか、行った次の日に書かせているのに、なかなか書き進められず、2〜3行で止まってしまいます。つきっきりで、出来事を順番に思い出させて書かせますが、それでもたくさん書くことができません。どのように指導したら、作文をたくさん書けるようになるでしょうか。

挿絵

「作文を書けない」と一言で言ってもその状態は、さまざまです。
順序よく書けないとか、順番でしか書けないとか、気持ちを書き表せないとか、さまざまで、それぞれ実は要因が違います。そして要因が違うと、指導方法が変わってきます。
今回の相談は、なかなか書き進められないということでいいですね。

はい、そうです。
作文が書けない、と一言で片づけられないですね!

山田先生の分析

作文が書けない原因を分析してみよう
作文を書けない子の分析は難しいです。書かないので、書いたものから困難の要因を分析できないからです。ですから、こういった場合、作文以外でのその子の状態をしっかり見ていくことが必要になってきます。
例えば、日常会話の状態はどうでしょうか。どちらかといえば口べたで、単語で話すような印象があるでしょうか。日常的にしたことなどで「理由の説明」ができるでしょうか。昨日の出来事などを記憶する力は、十分あるでしょうか。昨日の出来事をたずねてみて、思い出すことができているでしょうか。
「話すこと」も「書くこと」も、どちらも表出言語です。しっかり話せない子は当然、書くことも苦手になります。単語で話すなどの状況が多いと、主語述語などがよくわかっていない可能性が高いのです。主語述語がわかっていないと文章を長く続けていくことの基本部分から困難があるということになります。
また、頭の中に「ちょっとメモを書く記憶」とも言われるワーキングメモリーの機能が弱く、覚える・覚えておく・思い出す力が弱ければ、作文に書く内容そのものを思い出すことが難しくなります。
こういった要因の有無を検討し、支援の方針をたてていくことが大切です。

なるほど、です。2〜3行だけしか書かないという状態でも、考えられる要因はそんなにたくさんあるんですね。そういえば、会話も苦手で、ぼそぼそっと単語で返事していることが多いです。主語述語もあやしいです。

学び支援のアイデア

しっかり会話させることから始めましょう
作文を書く指導と並行して、しっかり話せるようになるように支援していくとよいでしょう。たとえば、クラスでの1分間スピーチの取り組みで、話すネタを一緒に考えて、話し方を教えていきます。
また、「お話サイコロ」といって、6つの面にそれぞれお話のテーマを書いたサイコロを用いて、テーマに沿った会話のやりとりを練習する方法も有効です。
作文指導をする際にも、まず会話でやりとりして、書きたい内容を具体的にイメージできるようになってから、その会話の内容通りに書く指導をしてい方法が有効です。伝えたい内容がないままでは、決して書けるようにはなりません。
作文を書く前に会話でやりとりすると、会話をしながらその時のことを思い起こせ、その時どう感じたかなどの気持ちなども引き出しやすいため、作文の内容も深まります。

なるほど。

表出言語の問題として考えていく場合は言語発達の遅れや、コミュニケーションの課題もあるので、総合的に考えた支援が必要になってきます。

学びづらさ、それ自体への支援

言語の発達に遅れがあれば、言語発達の支援も必要
言語発達の遅れがある場合は、言語発達の遅れに手立てをしない限り、様々な学習の困難が発生します。語彙を豊かにする、名詞だけでなく、動詞や形容詞などもたくさん知っていくことも必要です。語彙を使った短い文をたくさん書く練習するなども必要です。言語の支援は、成果が現れるまでに、時間がかかります。根気強い支援が必要です。

山田 充やまだ みつる

小学校首席教諭 S.E.N.S-SV(特別支援教育士スーパーバイザー)
自閉症スペクトラム支援士アドバンス
日本LD学会代議員

(構成:佐藤)
好評シリーズ
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