板書王のとっておき算数授業
これまで数々の授業・板書記録を残し続けてきた板書王が教える、子どもたちが授業に食いつく、とっておきの板書・授業ポイントが満載!
板書王のとっておき算数授業(15)
このデータを表したぼうグラフはどれでショー!?
3年「表とグラフ」(5/8時間)
新潟県新潟市立上所小学校二瓶 亮
2021/8/10 掲載

本時のねらい

 同じデータを表した複数のぼうグラフを比較する活動を通して、データの大きさによって適切な一目盛りの大きさがあることに気付くことができる。

板書

図1

板書のとっておきポイント

  • (A)〜(C)のぼうグラフを比較できるよう並べて提示する。
  • (A)のグラフと一目盛りの大きさが同じになる最後のグラフ用紙を隣に並べることで、グラフ用紙の目盛りの数に合った一目盛りの大きさを考えることの必要性に気付かせようと考えた。

授業の流れ

1考えのずれから問いをもつ(10分)

 表と(A)〜(C)のぼうグラフを順に提示する。なお、提示するグラフは全て同じデータを用いている。

(A)一目盛りの大きさが5人
(B)一目盛りの大きさが10人
(C)一目盛りの大きさが1人

この表のデータを表したのは、どれかな?

図2

図3

Cでしょ!それしかないよ。

AとBは絶対にない。

 (A)0人(B)0人(C)28人という結果となった。

どうしてCのぼうグラフだと思ったのかな?

図4

一目盛りが1人と考えると、Cのグラフはサッカーが40人でグラフもやっぱり40人になっている。

そうそう。他のスポーツも同じだよ。その他の5人というのが分かりやすいかも。

なるほど。一目盛りの大きさに着目したんだね。たしかにCのグラフはあってそうだね。

あれ?でも待って!もしかして、一目盛りの大きさを変えればAやBもできるかも。

あっ、そうか!一目盛りの大きさが違うだけなのかな?

えっ!?どういうこと?

実は全て同じデータで、一目盛りの大きさが違うだけだってことだよ。

あー!でもAやBの一目盛りの大きさはいくつなの?

そもそも、どうやって考えればいいのかよく分からないんだけど…。

2一目盛りの大きさに着目して解決する(20分)

Aから考えてみましょう。先ほどみたいにサッカーに着目して考えてみるとどうかな?

図5

何目盛りで40になるかを考えればいいんだよ。

なるほど。8目盛りで40ということは…

そっか。わり算で考えればいいんだよ。

あっ!分かった!そういうことか。

では、Bの方はどうかな?

図6

Bは4目盛りで40だね。

こっちの方が簡単だね。

AもBも「その他」を見ると簡単かも。

わり算で考えるといいってことだけど、AとBの一目盛りの大きさはいくつになるか求めてみましょう。

Aは40÷8=5だから一目盛りは5人だね。

Bは40÷4=10だから一目盛りは10人だね。

全体の人数を目盛りの数で割ると一目盛りの大きさが分かるね。

Aの「その他」を見るとちょうど一目盛りでしょ?「その他」は5人だからAのグラフは一目盛りが5人とすぐに分かるよ。

やっぱり全部が表のデータを表したグラフだったってことだね。

3よりよいグラフについて考える(15分)

今回のデータを表したぼうグラフとして一番ふさわしいのはどれかな?

ふさわしいグラフか。どれだろう。どれも正しいグラフだよね。

でもAとBは上の方が空きすぎているよね。上の部分いらないんじゃないかな。Cはグラフ用紙にちょうどよくおさまっているよ。

Bのグラフは、Cと比べると差が小さすぎて、違いがよく分からないよ。

だったらAも違いがちょっと分かりづらいかな。

そうですね。では、このグラフ用紙ならどうなるかな?

 今度は、何もかかれていないグラフ用紙を提示し、グラフをかく活動を取り入れる。

今度は、一目盛りの大きさをいくつにすればいいんだろう?

一番上まで10目盛りしかないから一目盛り1人では足りないし、10人だと多すぎるね。

一目盛り5人だと…一番上が50か。ちょうどいいね。

あれ?このグラフ、Aのグラフと同じだね。グラフ用紙の目盛りの数が少ないからさっきよりもぴったりになったね。

こっちの方が分かりやすいね。

グラフ用紙の目盛りの数や大きさとデータが合うようにしないとダメだね。

図7

授業のとっておきポイント

 データの大きさによって適切な一目盛りの大きさがあることに気付くことが今回のねらいである。そのために大きく3つの手立てを用意した。
(1)同じデータを表した3つのぼうグラフを提示する。
(2)一目盛りの大きさに着目させ、3つのぼうグラフが同じデータからできていることを理解させる。
(3)不適切な一目盛りの大きさ(一目盛りが5人)のグラフが、適切な大きさになるようなグラフ用紙にグラフを作図させる。
今回提示した3つのグラフは全て同じデータを用いている。違うのは、一目盛りの大きさだけである。一見すると、全く違うものに見えるが、実は全て同じデータからできたグラフということである。つまり答えは一つではなく、全部正解となる。見方を変えることで別のものに見えていたものが同じに見えるというパターンの展開を私はよく用いる。子どもたちにも、ぜひそういう見方をしてほしいと常々考えている。
 今回も子どもたちが活発に議論していたのは、「1つ分の大きさ」についてである。前回は「単位分数の大きさ」についてであり、今回は「一目盛りの大きさ」である。ぼうグラフの学習に限らず、グラフの学習では、「一目盛りの大きさ」に着目してグラフを読みかきすることが大切になる。今回の授業でも多くの子がつまずいたように、一目盛りの大きさに着目することの大切さには気付けども、どのようにして一目盛りの大きさを求めたらよいかが分からないという子は多い。ここでは、わり算の学習と関連させ、全体を何等分しているのかということを見出すことができるように展開した。

二瓶 亮にへい りょう

1989年新潟県生まれ。新潟市立上所小学校教諭。教員10年目。
子どもの思考に寄り添うことを大切にした算数授業を目指して日々研鑽中。
「フォレスタネット」(授業準備のための指導案・実践例共有サイト)に、板書写真を中心に、実践を多数投稿。「フォレスタグランプリ」の2018年11月大会にて「板書王」、2019年2月大会にて「ベストナイン(算数)」、2019年7月大会にて「月間MVP」を受賞。
共著に「フォレスタネットSelection Vol.3・Vol.4・Vol.5」((株)スプリックス)がある。

(構成:中野)
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