教育オピニオン
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「合言葉」で2学期の学級経営のブレを防ぐ
公立小学校教諭内田 悠貴
2026/8/1 掲載

 夏休みに入り、心と体をリフレッシュできている頃かと思います。しかし、先生方の頭のどこかには、常に「2学期の学級経営どうしようかな」という思いがあるのではないでしょうか。時間に余裕があるからこそ「あんな取り組みをしよう」「こんなクラスにしたい」とたくさんのアイデアが浮かんできます。
 ただ私の場合、あれもこれもと欲張りすぎて、結局何から手をつければいいのか、わからなくなることがよくありました。長期戦となる2学期は、クラスを安定させるためのブレない軸が必要です。だからこそ私は、学級経営準備の第一歩として、クラスの合言葉を決めることにしています。

課題の洗い出しと「3つの厳選」が生むブレない軸


 合言葉を決める手順は、まず1学期のクラスの課題をとにかく書き出すことから始まります。ノートなどに思いつく限り書き連ねてください。ここは質より量なので、手を動かしていると、マインドマップのように「あんなトラブルもあったな」と次々に広がっていくはずです。課題ばかりで自分の学級経営を否定しているような気分になったときは「こんなクラスになったらいいな」という希望もまぜていくと、方向性が定まりやすくなります。
 ひと通り出し切ったら次のステップです。びっしり書かれた課題の中から、特に解決したい課題を思い切って3つに絞り込みます。挙げた課題をすべて解決できるのが理想ですが、欲張ると軸がブレてしまい、合言葉が決まりません。後で厳選した内容を具体的な行動目標に落とし込むためにも、3つ程度に収めておくのが重要なポイントです。

学級の軸となる「合言葉」を満たす3つの条件


 課題を絞り込んだら、いよいよ合言葉を設定します。クラスの合言葉を決めるときに、私は次の3つの条件を大切にしています。

  1. 単語や熟語、ことわざなど、一言で言える短い言葉…長すぎる言葉や文章では、子どもたちに浸透しにくくなってしまいます。
  2. 1学期に見えた課題を解決できるもの…ゼロから考えるのではなく、これまでの学級経営をベースに考えていきます。
  3. 先生自身が「これだ!」と心から信じられる言葉…最も重要な条件です。先生自身が腑に落ちていない言葉は、いくら熱心に語り掛けても子どもたちには響きません。

5年生の教室に掲げた「克己心」という合言葉


 合言葉を決める工程は一番難しく時間がかかりますが、夏休みの時間の余裕を生かして「これだ!」と思うものを探してください。
 ここで、私がある年に担任した5年生のクラスでの実践をご紹介します。先の手順で課題を洗い出した結果、次の3つの課題に絞り込みました。

  • 他人のミスを指摘する、責めることで自己を保つ節がある
  • 意志が弱く、すぐに易きに流れてしまう
  • 自責思考ではなく、他責思考が強い

 これら3つの課題の根底にある共通点は「自分の心の弱さ」だと考え、そこで掲げた合言葉が「克己心(自分の感情・欲望・邪念に打ち勝つこと)」です。
 さらに、3つの課題それぞれに対応する具体的な行動目標をセットにしました。

  • 比べる・勝つべき相手は、友達ではなく『自分自身』!
  • 弱い自分は必ずいる。大切なのは自分に勝つこと
  • 「でも」「だって」「どうせ」は使わない
図

 これらを一つの掲示物にして、2学期初日に打ち出しました。すると、少しずつ教室の空気が変わり始めました。友達のミスを責める声が上がったとき、私が「今の言葉、克己心を持てているのかな?」と問いかけると、子どもたちはハッとして掲示物に目を向けます。「あ、自分に負けていた」と、トラブルが大きくなる前に自己修正できる場面が増えていきました。

迷ったとき、全員で立ち返る「心の拠り所」として


 合言葉を決めても、教室の壁の景色にしないことが重要です。この合言葉は日常の指導や行事の際に、子どもたちと先生をつなぐ、共通の判断基準です。
 ただ漠然と、2学期も頑張ろうと目標を立てるのではなく、目指すべき姿を共通言語として設定することで、自分たちは今正しい方向へ進めているか、子どもたち自身が振り返る視点が生まれます。
 学級をより良い方向に導くために欠かせないのが、子どもたち一人ひとりの自分事の意識です。教師がその都度、指示や注意を与えるのではなく、教師は意図的に合言葉について振り返る、問い直す時間を作ってあげます。子どもたち自身が合言葉を軸に自分たちの今の姿を見つめ直し、「クラスの課題に対して自分にできることは何か」を問い直し続けます。このプロセスを繰り返すことで、指示待ちではない、自ら考えて動く「クラスの自治力」が育まれていきます。
 そして何より、合言葉が決まると、先生自身の学級経営の方向性がクリアになります。「この言葉を軸に、こんな指導をしよう」と、2学期への迷いがスッと消えていくはずです。
 じっくり考える時間がある夏休み。ぜひご自身のクラスの様子を思い浮かべながら、子どもたちが迷ったときに立ち返る場所となる、素敵な合言葉を探してみませんか。
 お読みいただいた先生方の2学期が、実り多きものになることを心から応援しています。

内田 悠貴うちだ ゆうき

現役公立小学校教諭。関東の小学校に勤務した後、民間企業を経て、現在は東北の小学校に勤務。「先生のいらないクラス」をキーワードに、子どもの自主性を引き出す学級づくりを追究している。「むうすけ先生」名義で、Instagram・X・Voicyなどで、学級経営や授業づくりに関する情報を発信中。
著書に『自治的な学級がどんどんでき上がる! 月イチ「ノー指示デー」』がある。

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