教育オピニオン
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三極化するGIGAスクール構想
あなたはどの役割を担いますか?
岡山県倉敷市立倉敷西小学校的場 功基
2023/9/1 掲載

狩りの時代に狩りができない子供たち


図1

※図1

Society5.0時代に生きる子供たちにとって、PC端末は鉛筆やノートと並ぶマストアイテムです。今や、仕事でも家庭でも、社会のあらゆる場所でICTの活用が日常のものとなっています。社会を生き抜く力を育み、子供たちの可能性を広げる場所である学校が、時代に取り残され、世界からも遅れたままではいられません。
(令和元年 『子供たち一人ひとりに個別最適化され、創造性を育む教育ICT 環境の実現に向けて〜令和時代のスタンダードとしての1人1台端末環境〜』 文部科学大臣 萩生田光一)より引用

 GIGAスクール構想は3年目を迎えました。しかし、残念ながら、すべての子供たちのPC端末が、マストアイテムとして日常的に活用されているわけではありません。この事実が、子供たちのデジタル格差を生んでいるのです。

 『はじめ人間ギャートルズ』という狩りの時代が舞台のギャグ漫画をご存じでしょうか。主人公ゴンが狩りを学びながら成長していく過程が面白おかしく描かれています。もし、狩りができなければゴンは生き抜くことができません。物語はそこで終了です。

 Society5.0時代の今、ICTの活用が日常のものになっていないということは、狩りの時代に狩りができないことと同じです。つまり、生き抜くことができないのです。

 GIGAスクール構想の分岐点に立たされた今、前進か後退か。それとも停滞か。改めて考え直し、最低限の方向性と足並みを揃えていく必要があるのではないでしょうか。それが、子供たちの未来につながるはずです。

GIGAスクール構想の三極化


図2

※図2

 「GIGAスクール構想の二極化」という言葉がよく使われますが、私は図2のような「三極化」と考えています。すべての足並みを揃えることは現実的ではありませんが、教師の格差が子供たちの格差につながっているということも疑いの余地がない事実です。

 だからこそ、それぞれの立場でマインド・アップデートを行い、それぞれが1歩ずつでも前に進むことが必要だと思います。それでは、具体的に考えてみましょう。

パイオニアタイプ
 先陣を切って突き進むことはもちろん、周りが前に進んでいるかどうかというところにもアンテナを張る必要があります。特にスタンダードタイプの1歩を全力でサポートしましょう。「こんな良い実践があります!」、「ICTの活用は必須です!」などと伝えるだけでは前に進みません。スタンダードタイプの実践や考え方がすべて間違っているわけでも、パイオニアタイプの実践や考え方がすべて正しいわけでもありません。一方通行ではなく尊重し合いながら、共に進む。そして、尖らず謙虚に関わりながら、添え物のようにICTの活用を提案する。それができるかどうかです。つまり、最重要ポイントは信頼関係です。スタンダードタイプの一歩を実現できるのは、身近な存在のパイオニアタイプのみということを忘れてはなりません。

ドリーマータイプ

図3

※図3

 図3は、私が考えるGIGA推進のステップです。理想や気持ちがあるのになかなかうまく実践できないのは、ステップを飛ばしていることが原因の1つです。例えば、本やSNS上などで「ステップ❺」の実践を知り、「こんなすごいことができるんだ!」、「面白そう!やってみたい!」などと感じるが、実践力がそこに追いついていないということです。自分が今、どのステップにいるのかを再確認しましょう。特に「ステップ❷」は極めて重要です。ここを徹底することがポイントとなってきます。最初はICTの活用が目的になっても構いません。簡単なことでも構いません。今の自分にできる実践を考え、とにかく「毎日使う」ということを心掛けていきましょう。

スタンダードタイプ
 もしGIGA推進を全面的に否定しているのであれば、再考の余地があります。今まで通りの教育でも、子供たちは進級したり卒業したりすることは可能でしょう。その結果から、何とかなっているようにみえてしまいますが、そうではありません。子供たちが大人になったとき、初めて「何とかなっていなかった。」と気づくのです。狩りの時代に狩りができないのですから、その未来は必然的です。すべて変える必要はありませんが、何も変えないのはNGです。しかし、何が分からないのかも分からないのが現状だと思います。ですので、遠慮なく身近な存在のパイオニアタイプをフル活用しましょう。雑なお願いでも、小さな質問でも構いません。きっと、大喜びしながら共に進んでくれると思います。

子供たちの未来


 GIGAスクール構想は、新しい教育の形を創る重要な一石であり、教師一人一人が重要な役割を担っています。パイオニアタイプ、ドリーマータイプ、スタンダードタイプ、それぞれが異なる音を奏でますが、これらが1つになった時、美しいシンフォニーが生まれます。互いに尊重し合い、支え合いながら、全員で一歩、また一歩と前に進んでいきましょう。その一歩が子供たちの未来を大きく変えることでしょう。

的場 功基まとば こうき

1995年岡山県生まれ。倉敷市立倉敷西小学校教諭。
モットーは「授業で勝負」「1人の100歩より100人の1歩」「地上戦で現場を変えていく」
Google for Education 認定トレーナーとして、教育のデジタル変革に尽力。
Google Educator Groups Kurashikiのリーダーとしてコミュニティを運営したり、EDUBASE CREWとして活動したりしながら、全国各地の教育者と学び合い、切磋琢磨する場を広げている。
講師としても各地を回りながら、教育の可能性を拡げている。
SNSでの発信も積極的に行っており、InstagramやXの総フォロワー数は6000人越え。
Instagram:https://www.instagram.com/giga_toytoy/
X:https://twitter.com/giga_toytoy

コメントの一覧
25件あります。
    • 1
    • 小学校教師
    • 2023/9/1 18:13:32
    情報教育界隈では、スタンダードタイプの先生のアップデートに焦点が当たることが多いと思いますが、パイオニアタイプの先生のアップデートも先生に記事を読んで大切だと思いました。それぞれがそれぞれの得意を活かしながらベストミックスで1歩を踏み出していけたらと思います。
    • 2
    • やっちゃん
    • 2023/9/1 18:42:21
    子どもたちが「使いたい」と思うためには、「有用性」を実感することが大切だと考えます。そのためには、成功体験は欠かせません。一方で、ドリーマータイプが持っている「ゴールの姿」をより具体的に共有することもまた、「使いたい」と思う原動力になり得ると感じました。理想の現実のギャップを埋めるために、ステップ2〜を大切にしたいと考えさせられる記事でした。
    • 3
    • さとう
    • 2023/9/1 19:08:39
    パイオニアタイプがドリーマータイプに即実践可能な情報をどんどん流すことで、パイオニアタイプ派閥が増えていき、スタンダードタイプの職員にも広がって行くのかな。パイオニアタイプの親しみ易さや人間性によっても相談しやすさが変わって、ギガの広がりに影響がありそうです。
    • 4
    • みんみん
    • 2023/9/1 19:41:26
    自分自身が子どもだった頃の教育から大きく変わったもののひとつに、ICT教育が挙げられます。
    イメージがわかないものや見通しのもてないことには否定的になってしまいがちです。
    しかし本校では的場先生に2度研修に来ていただき、パイオニアタイプ・ドリーマータイプの教職員が増えました。
    この記事を読んで、パイオニアタイプの方たちから学び、まずは自分の理想をもち、正しくステップを踏んでいきたいと改めて感じました。
    • 5
    • たまーの
    • 2023/9/1 20:00:34
    現場で働いていますが、まさにこの三極化という表し方がふさわしいと思えるような現状です。特にベテラン勢の方はどうしても従来のやり方にこだわってしまう方もおられますし、一方若手で挑戦者タイプの方はどんどん新しいことを取り入れ、他のクラスから「あのクラスだけ...」と言われるような始末です。しかし、そういった現場でこそ、的場先生のおっしゃる三極化を自ら自覚し、各々がマインドアップデートをしていく必要があるなと感じました。大人の意識が変わり、大人同士の協調(共同)が生まれたとき、学校全体として子ども達に還元できるのだと思いました。参考になる記事でした!
    • 6
    • 小学校教員
    • 2023/9/1 20:04:15
    3パターン納得です!それぞれの考えや思いも分かります。教育には不易と流行があるので、教育の根幹を大事にしながらも常にアップデートを意識すべきだと思います。
    • 7
    • がし
    • 2023/9/1 20:13:10
    学校という組織で子供を育てていく以上、学校全体の足並みをある程度揃える必要性を感じていながらも、難しさを感じていました。本記事を読み、必要性を訴えるだけでなく、まずは、ICTで「ちょっと便利に」、「ちょっと楽に」、「ちょっと楽しく」なることから広め、少しずつ実践も広げていけたらなと思いました。
    • 8
    • たなかそ
    • 2023/9/1 20:17:58
    自分自身、ICTの活用をしてみたいと思うもののなかなか実践できないドリーマータイプなのだと思います。使うことが目的になってしまったら意味がないのかもしれないと考えることもありましたが、使うことが目的であることから少しずつステップアップすればよいということを改めて感じました。身近なパイオニアタイプの先生方からたくさんのことを教わり実践にうつしていきたいと思います。
    • 9
    • ぴすけ
    • 2023/9/1 20:56:06
    私はパイオニアタイプではありませんが、校長が授業を見に来た際に、「ここのクラスが一番よくICTを活用している。」と話をいただいたことがあります。あまり使いこなせていない自分が一番使っているとなると、他のクラスではほぼ活用できていないのが現状なのかなと感じます。この記事を読んで、パイオニアタイプでなくても、どんな取り組みでも「自分が良かった!」と感じるものを周りに共有し、少しでも全体の力を上げていくことが大切なのかなと感じました。また、的場先生のSNSの投稿を活用し、実践できるネタなどをたくさん得ていこうと思います。
    • 10
    • まーさん
    • 2023/9/1 20:56:46
    私は、ドリーマータイプなのだと感じました。今までは「使ってみたい!」「使ったほうが楽しくなる!」との思いありましたが、自分が得意ではないのもあり「使わないといけない」とプレッシャーも感じていました。しかし、ICT研修を受けてたくさんの活用方法を学び、「明日にでもやってみたい!」の思いがとても強くなりました。実際に授業で取り入れてみて、子供たちの反応も良くなりました。まずは、しっかり学び、使い続けて自分自身もレベルアップしていきたいと思います。
    • 11
    • ハト
    • 2023/9/1 20:58:27
    私の職場では、スタンダードタイプとドリーマータイプの中間くらいの方が多い印象です。使いたいんだけど…現状のままでも上手くいっているからなぁ…という感覚の方が多いです。そういう先生方を少しでも図3のように上げていくことが大切なのかなと思いました。また、そういった先生方を動かす秘策をぜひまた教えていただけたらと思います。
    • 12
    • すえっち
    • 2023/9/1 21:04:36
    さまざまな考え方の人たちと共に働いているからこそ、1人の1歩より100人の1歩が大切になってくるのだと思います。私自身も的場先生に感化され少しでも学校の中のパイオニアになれるようになりたいと考えています。学ぶ先に子どもたちの未来があると思っているので、これからも一緒に学ばせてもらえたらと思います。
    • 13
    • i
    • 2023/9/1 23:05:16
    私自身、ICT活用能力があればこんなことに使ってみたい!と理想が膨らむばかりのドリーマータイプです。的場先生のようなパイオニアタイプの方に教えていただきながら、能力向上ができるとありがたいなと思いました。子どもたちの可能性や創造性がひろがるよう、レベルアップしていきたいです!
    • 14
    • むーさん
    • 2023/9/2 6:10:41
    三極化、教師の格差が子ども達の格差。本当にその通りだと思います。何でも吸収できる時期に、こちらから少しの情報も与えられなければ、子どものICTスキルはクラスによって差が出てしまいます。そして、そのまま学年が上がったときには、次の担任の先生が困ることになるのではないでしょうか。だから、教員の得意・不得意があったとしても、少しずつ学んでいくべきではないかと思います。学べる環境は探せばいくらでも出てくるので、あとは本人の意思と時間の確保だけですかね。。私はドリーマータイプだと思いました。
    • 15
    • N.
    • 2023/9/2 9:01:18
    「1人の一歩より100人の一歩」まさにその通りだと常に感じています。パイオニアの方が常に前向きで、教員の意識改革を行ってくださっているから、自分自身一歩を踏み出せることができています。毎日使うことはまだできていませんが、実践を重ねる中で、新しいアイデアが浮かんできます。自分のICTスキルはまだまだですが、誰かの役に立てるように日々研究を重ねていきたいと思いました。
    • 16
    • みほ
    • 2023/9/2 13:43:56
    ict活用の必然性を感じながら読ませて頂きました。さらに、それぞれのタイプが何をすべきなのかを記載して下さっているため、自分ごととして考えることができました。失敗=恥というイメージが強いのは大人であって、挑戦への一歩が出にくいのでは、と自身の学校の活用状況を見て感じています。まだまだ私自身、活用が未熟なドリーマータイプですが、挑戦へのきっかけを提供できる存在になれればと思います。いつも学びをありがとうございましす。
    • 17
    • k
    • 2023/9/3 10:28:40
     GIGAスクール構想が掲げられた初年度に教員となり、3年目を迎えました。
     当初、ベテランや管理職の先生方からは、GIGAスクール構想について、否定的な意見が出ていたことから、自分自身としても、あまり肯定的な考えや意見をもつことはできず、ICT活用についての研修も、ただ受講しているだけの状態でした。
     しかし、的場先生を含めた先生方のSNSを通して、ICT活用についての実践を目にしていくうちに、興味をもつことができました。
     そして、的場先生の実践やお話を聞いて、自分もICTを使いこなせるようになり、子どもに還元していきたいと思えるようになりました。
     苦手だったICTも、今では使えるようになり、毎日、子どもも課題解決に向け、手段の一つとして活用できるようになりました。また、子どもたちは、自己調整しながら、できることも増やしていき、反対に学ぶことも多くなっています。
     個別最適の学びや協働的な学び、ICT活用能力など、様々な変化に対応できる力を身に付けさせていけるよう、今後も、的場先生からの学びを実践していき、自分自身の力も向上させていきたいと思っています。
    • 18
    • ikeda
    • 2023/9/3 20:00:32
    約2年前、コロナによる臨時休校が相次いだとき、その必要性からICT端末を活用するようになったのが始まりだと思います。しかし、コロナも5類になり、リモートで授業をしたり授業の中でICT端末を活用したりすることに格差が生まれてきているように思います。うまくいかないこともあると思うけど、まずはやってみること、毎日使うことを心がけ、校内でも声をかけていこうと思います。わたしの役割は「ICTについて知るきっかけ」となる校内研修やOJT研修を計画することだと思います。
    • 19
    • かわ
    • 2023/9/3 23:31:59
    的場先生は完全なるパイオニアだ!と思いながら読みました。パイオニアが、身近にいてくれるのはとても心強いです。なのでどんどんパイオニア先生に頼っていきたいです!!相談したときに、「まずは使うことが目的でオッケー」って話されてたのが目から鱗で、ドリーマータイプからすると、ハードルが下がりました。頑張ってトライしてみます!
    • 20
    • 2023/9/4 18:06:51
    勤務している学校が小規模校ということもあり、今までよりもさらにICT教育の重要性を感じながら日々勤めています。「教師の格差が子供たちの格差につながっているということも疑いの余地がない事実」と本文にもあったように、教員が使いこなせないとが原因で、子どもの未来に影を落とさないようにしていかなければならず、そのためにはとにかく使うことが大切だと改めて気付かされました。自分も日々挑戦し、実践を積み重ねていこうと思います。
    • 21
    • Y
    • 2023/9/4 18:50:04
    記事を拝見させていただきました。
    GIGAスクール構想の三極化について見させてもらい、身近なパイオニアタイプの先生から積極的に技術を学ぶことが、教育のICT化を進めて行くと私も思います。
    私自身教員経験が短く、まだまだ学ぶことも多いですが、ICTを毎日使い、的場先生のようなパイオニアの先生として、学校教育に貢献できるよう努力したいと思います。
    • 22
    • Y
    • 2023/9/4 18:51:16
    記事を拝見させていただきました。
    GIGAスクール構想の三極化について見させてもらい、身近なパイオニアタイプの先生から積極的に技術を学ぶことが、教育のICT化を進めて行くと私も思います。
    私自身教員経験が短く、まだまだ学ぶことも多いですが、ICTを毎日使い、的場先生のようなパイオニアの先生として、学校教育に貢献できるよう努力したいと思います。
    • 23
    • K.N
    • 2023/9/4 20:36:58
    教員になって2年目になりました。GIGAスクール構想の三極化はとてもわかりやすかったです。ドリーマータイプにあたる私にとって、パイオニアタイプの先生から技術を学ぶことが、教育のICT化のために大切なのだと思います。ただ、スタンダードタイプの先生がもたれているこだわりを知ることで、新たな活用も生まれてくるのだと感じました。三極による、「異なる音を奏でますが、これらが1つになった時、美しいシンフォニーが生まれる」。これがとても難しいことだけど、実現させないといけないのだと深く考えさせられました。
    • 24
    • M
    • 2023/9/13 22:21:50
    教員の三極化がすごくわかりやすいです。
    私の職場でもドリーマータイプの方が多いように思います。そして、その1人が私です。
    的場先生の言われるように、ドリーマータイプの方が少しでも「できた、もっとやってみよう」と思えるように少しずつ段階を踏んでいく必要があると思いました。
    私も簡単なところからやってみようと思います!
    最後に質問ですが、ドリーマータイプの方にはどんなアプリがおすすめでしょうか。よろしければ教えていただけるとありがたいです。
    • 25
    • 鳥ちゃん 
    • 2023/12/24 20:46:33
    今年新しい学校へ転勤し、以前の学校とのICT機器の違いや低学年を担任しているということ、本校でのICTに関する研究があまり進められていないということから、ICT教育を知らず知らずのうちに遠ざけて逃げてしまってるなぁと思い、反省しました。まずは、使い方を知り、いろいろやってみようと思います。失敗もつきものだと思いますが、続けていくことが大事だなと思いました。
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