教育オピニオン
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冬休み明け!ワクワクの学級開きアイデア
子どもたちの期待があふれる3学期にしよう!
ヒミツキチ森学園 グループリーダー青山 雄太
2021/1/1 掲載

冬休み明けの学級開きはどうしたらいいのか…
夏休み明けと同じ感じでいいかな…
明日が冬休み明けの最初の登校日、先生であるボクにできることはないだろうか…

 様々な理由でこの記事にたどり着いたあなたは、子ども想いの素晴らしい先生だと思います。冬休み明けならではの視点で学級開きを考え、1月のスタートをよりよくするお手伝いができたらと、この記事を書かせていただきました。

 冬休み明けの3ヶ月は、1年の中でも時が経つのが最も早い時期。3学期に子どもたちの笑顔を増やすために…何かの参考になれば嬉しいです。

冬休み明けは「どの子も学校行きたくない」がデフォルト


 教員であるあなたは、冬休み明けの子どもたちにどんなイメージを抱いていますか?もしかしたらそのイメージ自体が、すでに子どもたちとずれている可能性もあるのです。

教員が冬休み明けの小学生に抱いている幻想

 冬休み明け、学校に賑やかな声が戻ってきます。どの子も笑顔に溢れていて、3学期のスタートを楽しみにしている…教員はこのような幻想を抱きがちです。
 でも、よく考えてください。冬休みはイベントだらけです。GoToを使った旅行や帰省、正月の楽しいテレビ番組やYouTube。エンタメだらけの冬休みには、学校での時間はなかなか勝てません。
 「あぁ、学校行きたくないなぁ」
 正直なところ、それこそがデフォルトだと思います。

 でも、そんな憂鬱な気持ちを、
 「学校って、まぁまぁいいもんだなぁ」
 に変えることができる!それこそ、先生の力量でもあり、この仕事の魅力の1つでもあるんです。

学級の成功率を上げることと、失敗率を下げることは同義ではない

 学級経営の視点からお話しします。「学級の成功率」というと語弊があるかもしれませんが、3学期の終わりに「いいクラスだったなぁ」と思ってもらえている、「楽しかった!この1年」と多くの子が感じている… 子どもも先生も満足のいく1年を「学級の成功」だと仮定します。「失敗率」というのは、子どもの心を冷やし合うクラスだったり、もっとわかりやすくいうと「いじめ」が起こっていたり、「学級崩壊」になっていたり…そうなる確率としましょう。
 この「成功率を上げる」ことと「失敗率を下げる」ということは、全く違うんです。成功率を上げれば、失敗率が下がると思い込んでいる人も多いと思うんですが、この2つは同意ではない。学級においては「攻撃は最大の防御」ではないのです。攻めの手立てと守りの手立ては違うわけです。
 夏休み明けと違って、冬休み明けは、守りの手立てをしっかりととり、失敗率を下げながら、攻めの手立てを見極めるということが基本姿勢になります。

3学期の学級開きは、つながりの再構築で守りの手立てを取ろう!


 具体例に行く前に、もう少しだけ理論にお付き合いください。ここをすっ飛ばして「明日やれること」に飛びつくと、「その日限りの手立て」を続けて行かなくてはいけません。ネタを探す日々は教員も疲弊しますよね。

ダニエルキムの成功循環モデルを学級に当てはめて考えてみる

 マサチューセッツ工科大学のダニエルキムさんが「組織の成功循環モデル」を唱えています。

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 関係の質を高くしていくことで、思考の質が変わり、行動や結果に表れてくる。でもボクらはいつもこれと違うことをやってしまって、行動や結果を先に求めがちだと思っています。

詳しくはブログのこのページにまとめたので、ご覧ください。

 学級も1つの組織ですから、同じように「関係の質」から高めていくことが大事になってきます。ボクらは、関係性をもっと深く考え、そこにフォーカスを当てる必要があるのです。

ペアでの活動やレクは「ついうっかり」の関係性の変化が生まれやすい

 さて、では関係の質を高めるために、3学期の今できることは何でしょうか。そのおすすめの1つがペア活動です。

 ボクは4月から毎日ペアになる活動を続けています。座席や仲の良い悪いで固定されがちな関係性を広げていくために、毎日のペアを作るのです。ペアで話したり、読み聞かせの感想を聞きあったり、学習中にお互いの考えを共有したり…同じペアでつくる1日をデザインします。1日では変化はありませんが、続けていくうちに、確実に子どもたちの関係性は深まります。すると「思考の質」に少しずつ変化が生まれてきます。
 3学期からでも遅くはありません。日々、子どもたちの関係性は深まっていくので、ペアを作ること自体が楽しみになってくる日がきます。高学年だって、閉じられた関係性は、息苦しい時があるからです。

 もう1つのおすすめがレクです。
 ボクはプロジェクトアドベンチャーを学級に取り入れていました。今のヒミツキチ森学園でも同様に行っています。レクは、楽しさの中で「関係の質」に変化が生まれることがあるのです。話してみたら楽しかったり、喧嘩していた相手と自然と協力していたり…だからこそ冬休み明け初日に楽しいことを企画するのはおすすめです。初日から関係性に期待が持てれば、子どもたちの心も弾むはず。

おすすめは、オリジナルの「学級すごろく」です。

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※<参考文献>『エンカウンターで学級が変わるショートエクササイズ集』(明治文化社)

 ワイワイグループで楽しんだり、先生に「あけましておめでとう」を恥ずかしながら言いにきたり… ゲームの中で「ついうっかり」笑顔になることが多く、関係が深まるレクです。

 そのほかコロナ禍の今もおすすめできるレクは、こちらです!

 

メッセージで1人ひとりへのケアも大切

 ただ楽しいだけではなく、先生と子どもたちとの「関係の質」も深めておきたいところ。年賀状は出す出さないを学年で揃えたり迷うところだと思うので、ボクは学級通信にメッセージを一人ひとり書いて渡していました。

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 これなら喪中などの配慮が不要ですし、直接手渡すこともできます。また、先生にとって忙しい12月中に書く必要がなく、お正月にじっくりと書けるのでおすすめです。

 先生との関係性は高学年だと難しい子もいるでしょう。だからこそ全員に書くのが大切。手渡す時に1人ずつちゃんと心を込めて話しながら渡します。その場では何のリアクションがなくても、日々の中で同じように、アプローチを続けていくことで少しずつ変化が見えてきます。関係性に近道なんてありません。地道に続けていくことが変化を生みます。

冬休み明けの学級経営は、+αで攻めの手立てを考える


 関係性を高めることは守りの手立てでした。次は攻めの手立てについてです。
ただ学年の3分の2が終わっているこの時期に、新しい手立てをとり、学級の良さを崩してしまうことがあります。今までクラスで高めてきたことの中から、ちょっとだけ+αを加えてあげること…このくらいの感覚で良いのではないでしょうか。

冬休み明け初日のことを考えるにしても、その先をイメージしておかないと、その日暮らしの活動になってしまいます。

 短期的な視点で言うと、3月の学級終わりまで。長期的な視点で言うと、これからも学校生活は続いていくので、今後一人ひとりがどう育っていくかという視点が大切です。

 あなたのクラスの攻めどころはどこですか?

サークルタイムを自主運営に踏み切ったこと

 ボクの場合をお話しします。昨年度、2年生の担任をしていました。その中でサークルベンチを使ってのサークルタイムを、毎朝と5時間目の始まりに大事に積み上げてきました。

 サークルは、感情を分かち合う場。今日のペアと横に座りながらトークをしたり、みんなでトーキングスティック(この人が話すことを可視化した人形など)を回したり…毎日の積み重ねで、お互いの声を聞き合い、心に向き合い続けてきました。

 それを3学期は子どもたちに自主運営してもらうことにしたのです。プロジェクト(係)にお任せしたら、進め方は先生顔負けです。友達が話すことも大事な意見として聞き合う文化が育まれていきました。

 その中で、ドッジボール大会の作戦会議が生まれ、みんなで作戦を共有。練習時間が少ないながらも、見事、学校で1位になることができました。転校してしまう友達の心に寄り添い計画したお別れ会も大成功。
 自主運営を攻めどころとして、ボクも力を入れてサポートし、無理なく子どもたちも「結果の質」を高めることができたのです。

 もう一度問います。あなたのクラスの攻めどころはどこですか?

短期的な視野:学級終わりに向けてできることは何だろうか

 さて学級は3月に終わり、新しいクラスになるでしょう。関係性のための手立てを取りながらも、新しい先生にクラスを手渡すこともイメージしておく必要があります。

 次の学年の学習に向けて、ちょっと背伸びしたノートの取り方を教えたり、自分たちでできるようになったことを用いてまとめの学習単元に取り組んだり、いろんなアイディアが浮かぶでしょう。明確に3月終わりの姿をイメージして、1月の学習・生活を考えていきましょう。

 また少し自分の学級経営が特別なことをやっていた場合は、クロージングに向けて一般的な形に戻す配慮も必要です。

 終わりをイメージするから、冬休み明けの初日の一歩目の方向性が決まるのです。

長期的な視野:今後の子どもの成長を見据えて

 ボクは大抵、この時期は「子どもの気づきの感度」を上げていくことを大事にしていました。

オピニオン内のこちらの記事を参照!

 田中さんがおっしゃっている通り、先生の気づきの感度を高めていくことは非常に重要です。子どものSOSを見逃さないように努めることが、教師の役目です。

 さらに言うと、子ども同士の気づきの感度も高めておきたいのです。

  • あれ、〇〇さん、体調悪いのかな?
  • 最近、様子が変だ、声かけてみようかな?
  • 今、こんな気持ちなのかもしれないな、もうちょっと様子を見ておこう

 普段からトラブルは先生が解決するものではなく、自分たちで気づき、友達のためにできることをしようという「気づき合う風土」を育てることは、非常に大切です。先生は変わりますが、多くの友達は同じクラス、気づける距離に来年度もいるのです。

 攻めどころや守りどころを見極める視点として、「友達同士の気づきの感度を上げる」を加えてみてください。

学級の集大成となる3学期に向けて


 いかがだったでしょうか。冬休み明けの学級開きは3月までではなく、翌年の4月以降の子どもたちにも関わってきます。3月で終わりではなく、その先もイメージした時に、今必要なことはなんだろうか、そんな風に考えてもらえたらと思います。

 子どもたちの成長は続きます。だからこそ、先生自身も成長が必要です。守りの手立ては何か、そして残りの期間でできる攻めの手立ては何か…考えていくことは先生の引き出しを増やすことにもつながります。
 一人では思いつかないときは、ぜひ学年の先生と一緒に考えていきましょう。問題を解決するのではなく、3月の望む姿を考えたいと本気で話せば、きっと同意して喜んで話してくれると思いますよ!

青山 雄太あおやま ゆうた

一般社団法人PLAYFUL 
ヒミツキチ森学園グループリーダー
公立小学校に15年勤務。2020年4月から、仲間と葉山に立ち上げたオルタナティブスクールヒミツキチ森学園で、グループリーダー(先生)を務める。自分のどまんなかで生きるをビジョンに、オランダやデンマークの教育と日本の学習指導要領をミックスさせた授業を展開している。2018年から発信している月10万回読まれているブログ「SENSEI×DESIGN-LABO」を運営中。「みんなのオンライン職員室」という先生向けの講座でスタッフを務めるなど、複業中。

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